カタールW杯のグループリーグ最初の2試合が1勝1敗という結果だった日本代表。決勝トーナメント進出を懸けた3試合目のスペイン戦は12月1日だ。
 
 その運命の試合に向けて、スペイン代表がドイツ代表と1―1で引き分けた第2戦を現地取材。その中で見えてきたスペイン代表の“弱点”を全3回に分けてレポートする。
 
 第1回はポゼッションだ。スペイン代表は良く知られる通りボール支配に対するこだわりが世界最高クラス。例えばCBは守備力よりもむしろビルドアップ力を優先して選んでいるフシがあり、今大会は本来アンカーのロドリをその一角に起用しているほどだ。過去2試合のパス1708本、パス成功1568本はいずれも今大会最多で、ポゼッション率もコスタリカ戦が実に75%だった。
 
 ただ、ドイツ戦はポゼッション率が56%まで低下。最後尾からとにかく丁寧なビルドアップを狙うスペイン代表は、序盤こそ上手く前進したものの、徐々にドイツ代表のプレスにハマり、最終ラインで何度も引っかかるようになる。とくにGKのウナイ・シモン、CBのロドリ、右SBのダニエル・カルバハルが苦しい対応を強いられてボールロストし、ピンチを迎える場面が多かった。83分の失点シーンも、ポゼッションのミスから逆襲速攻を食らって奪われたものだった。
 
 日本戦のスタメンはまだ不透明だが、どんなメンバーでもビルドアップは「最後尾からの丁寧なポゼッション」がいわば絶対的な思想。ロングボールは左CBのエメリック・ラポルトのサイドチェンジを除いてほとんど蹴らないし、相手のプレッシャーが強くても構わずショートおよびミドルのパスを出してくる。クリアの概念はほとんど皆無で、「それも繋ぐか!」と思わせられるシーンも少なくない。
 
 そんな大きなリスクを取るスペイン代表に対して、ドイツ代表はミドルプレスを基本にしながらも、ここぞの場面では全体を押し上げた猛烈なハイプレスで対抗。とくにネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)時のゲーゲンプレスで引っ掛け、ショートカウンターで決定機に繋げるシーンが何度かあった。
 
 このスペイン代表のビルドアップ時に注意したいのが、両ウイングだ。ボールの位置にかかわらず、右ウイングも左ウイングも高めの位置でアウトサイドレーンいっぱいまで開く。ここ数年は組み立ての際はボールサイドに人を密集させるチームが多いが、今のスペイン代表は違う。相手のファーストプレスを外した後は彼らに素早く展開して一気に局面を変えてくるだけに、森保ジャパンもそのリスク管理を怠らないようにしたい。
 
 ミドルプレスとハイプレスを組み合わせたアグレッシブな守備戦術は、当然ながら高い走力と持久力が求められる。しかし、これを避けて引いてしまえばスペイン代表にボールもゲームも完全に支配され、日本代表はサンドバック状態になりかねない。第1戦で大量7失点を喫したコスタリカのようにだ。前線のアタッカー陣は交代枠を上手く使いながら、インテンシティーを保てるようにしておきたい。
 
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

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