FIFAワールドカップカタール2022・グループB最終節が29日に行われ、イラン代表とアメリカ代表が対戦した。

 1勝1敗の勝ち点「3」・得失点差「-2」で現在グループBの2位に付けているイラン代表。最終節に勝利すれば、同国代表史上初となる決勝トーナメント進出が決定する。さらに引き分けた場合でも、他会場の結果次第ではグループステージを突破する可能性もある。一方のアメリカ代表はここまでの2試合をいずれも引き分けており、勝ち点「2」で現在グループBの3位に付けている。決勝トーナメント進出のためには勝利が必須の状況だ。

 イラン代表は勝利を収めた前節のウェールズ代表戦からスタメンを1人変更。GKのホセイン・ホセイニに代わり、第1節のイングランド代表戦で負傷交代した守護神アリレザ・ベイランヴァンドが先発復帰を果たした。対するアメリカ代表はスコアレスドローに終わった前節のイングランド代表戦から2人の選手を入れ替え。ウォーカー・ジマーマンとハジ・ライトに代わり、キャメロン・カーター・ヴィッカースとジョシュ・サージェントが先発に名を連ねた。

 序盤はアメリカ代表がやや優勢に試合を進める。後方からのビルドアップで攻撃の糸口を探りつつ、左右両サイドからゴール前に積極的にクロスを入れシュートチャンスをうかがっていく。11分には右からの斜めのクロスにクリスティアン・プリシッチが頭で合わせたが、シュートはGKの正面に飛んだ。対するイラン代表は粘り強い守備で対抗しつつ、最前線のサルダール・アズムンをターゲットに反撃を狙う。

 決勝トーナメント進出のために勝利が必要なアメリカ代表は、中盤にかけて攻勢を強めていく。28分にはプリシッチからの縦パスを受けたサージェントがボックス手前で右足を振り抜くとシュートは相手DFに当たってゴール前にこぼれる。これに反応したティモシー・ウェアがボックス内でヘディングシュートを放ったが、ボールはGKの正面に。33分にもウェアがボックス内のこぼれ球に反応し右足を振り抜いたが、強烈なシュートは枠の上に外れた。

 38分、試合の均衡が破れる。敵陣中央付近でボールをキープしたウェストン・マッケニーがボックス内右に正確なロングフィードを供給。走り込んだセルジーニョ・デストがヘディングで中央に折り返すと、ゴール前のプリシッチが押し込みゴールネットを揺らした。アメリカ代表が”エース”の一撃で先制に成功した。
 
 攻め続けるアメリカ代表は前半アディショナルタイム、マッケニーのスルーパスに斜めのランニングで抜け出したウェアがGKとの一対一を制しゴールネットを揺らしたが、オフサイドの判定でゴールは取り消しとなった。アメリカ代表が終始主導権を握ったまま、前半は0-1で終了した。

 リードを奪ったアメリカ代表はハーフタイムに選手交代。得点シーン時に相手GKと激しく接触したプリシッチに代わり、ブレンデン・アーロンソンを投入。また、イラン代表も最前線のアズムンを下げ、サマン・ゴドスがピッチに入った。

 後半の立ち上がりは両チームが攻め合う展開に。アメリカ代表はサージェントに、イラン代表は途中出場のゴドスにシュートチャンスが訪れたが、互いに精度を欠きゴールネットを揺らすことはできない。アメリカ代表は前半と同様に後方から丁寧にパスを繋ぎ敵陣内への侵入を試みていく。対するイラン代表も前半と比較してボールを保持できるようになり、相手ゴール前に迫るシーンを作る。

 65分にはイラン代表に決定機。ボックス内右に侵入したアリ・ゴリザデがゴール前に折り返すと、中央でメフディ・タレミが潰れ、ボールはファーサイドで待ち構えていたゴドスの元へ。フリーのゴドスはダイレクトで右足を振り抜いたが、強烈なシュートは惜しくも枠の右に外れた。70分にはボックス左外でボールをキープしたサイード・エザトラヒが思い切ったミドルシュートを放つも、こちらも枠を捉えることはできなかった。

 なんとか同点に追いつきたいイラン代表は、次々と攻撃的な選手を投入し攻勢を強めていく。前線のタレミや途中出場のトラビを中心に相手ゴールに迫るシーンを多く作るが、アメリカ代表の粘り強い守備に阻まれ、なかなかシュートまで持ち込むことができない。一方のアメリカ代表は81分に前線のウェアを下げてDFのジマーマンを投入。5バックを形成しイラン代表の攻撃に対して守備を固める。

 イラン代表は長短のパスを駆使してシュートチャンスをうかがうも、アメリカ代表の集中した守備を崩し切ることができない。後半アディショナルタイムにはFKからモルテザ・プーラリガンジがボックス内でヘディングシュートを放つも、ボールは惜しくも枠の左へ。アメリカ代表はチャンスと見るや前線から積極的なプレスを仕掛け、イラン代表の攻撃を未然に防ぐ。

 試合はこのまま0-1で終了。勝ち点を「5」に伸ばしたアメリカ代表がグループBの2位に浮上し、決勝トーナメント進出を決めた。アメリカ代表は現地時間12月3日に行われる決勝トーナメント1回戦でグループA首位のオランダ代表と対戦する。

【スコア】
イラン代表 0-1 アメリカ代表

【得点者】
0-1 38分 クリスティアン・プリシッチ(アメリカ代表)

【スタメン】
イラン代表(4-4-2)
GK:ベイランヴァンド
DF:レザイーアン、ホセイニ、プーラリガンジ、モハマディー(45+3分 カリミ)
MF:エザトラヒ、ヌーロラヒ(71分 トラビ)、ハジサフィ(71分 ジャラリ)、ゴリザデ(77分 アンサリファルド)
FW:タレミ、アズムン(HT ゴドス)

アメリカ代表(4-3-3)
GK:ターナー
DF:デスト(81分 ムーア)、ヴィッカース、リーム、ロビンソン
MF:アダムス、マッケニー(65分 アコスタ)、ムサ
FW:ウェア(81分 ジマーマン)、プリシッチ(HT アーロンソン)、サージェント(77分 ライト)

【ゴール動画】アメリカの”エース”プリシッチが先制ゴール!