【試合展望】政治的な因縁が深いアメリカとイランのゲームも…ここからは同組の試合は同時刻キックオフ

 カタール・ワールドカップ(W杯)の大会10日目は、グループAとグループBの最終戦が行われる。ここからは同組の試合は同時刻キックオフとなり、他会場の結果を受けて戦略を決めることができなくなるが、各チームはリアルタイムで情報を仕入れながら戦うことになる。特にグループBでは“英国対決”となるイングランド代表とウェールズ代表のゲーム、政治的な因縁が深いアメリカ代表とイラン代表のゲームが、全チームに決勝トーナメント進出の可能性がある中で行われる。

■オランダ×カタール
グループA第3戦
キックオフ:現地時間11月29日19時(日本時間30日0時)
放送・配信:NHK、ABEMA
注目選手:コーディ・ガクポ(オランダ)、アクラム・アフィフ(カタール)

 引き分け以上で突破が決まる状況とは言え、開催国カタール代表を相手に最終戦を戦うのはオランダ代表にとって多少の不気味さがあるだろう。できれば早い時間帯に先制点を奪い、試合を勝勢に持ち込みたいところだ。本来ならエースのFWメンフィス・デパイが負傷明けで時間限定の起用が続く中では、2試合連続ゴール中のFWコーディ・ガクポが前半のうちにゴールすることが期待される。同点のまま後半の半ば過ぎまで試合が進むのは避けたい。

 開催国として初出場となったW杯のピッチだが、すでに敗退が決まっているためにこれがラストゲーム。とはいえ、モチベーションを落とす理由はなく強豪オランダを相手に自分たちが出場にふさわしいと印象付けるパフォーマンスを見せたいところだ。ブレークが期待された“黄金世代”の中心選手であるFWアクラム・アフィフにも好プレーが期待される。

■エクアドル×セネガル
グループA第3戦
キックオフ:現地時間11月29日19時(日本時間30日0時)
放送・配信 ABEMA
注目選手:ミカエル・エストラーダ(エクアドル)、カリドゥ・クリバリ(セネガル)

 エクアドルは引き分け以上でグループの突破が決まるが、2試合連続ゴールのFWエネル・バレンシアの状態が懸念される。2試合連続で負傷する姿が見られているだけに、最高の状態で臨むのは難しいだろう。FWミカエル・エストラーダや、ブライトンで日本代表MF三笘薫と同僚のMFモイセス・カイセド、MFジェレミー・サルミエントといった実力者たちがサポートしたいところだ。2006年ドイツW杯に続くベスト16進出に向け、大きなチャンスがやってきている。

 セネガルは勝利した場合は無条件で突破だが、引き分けの場合は別会場でカタールがオランダに3点差以上で勝利することを願うしかない。そのため、勝利以外は難しいと言っていいだろう。そうした姿勢を逆に利用するのが、しぶとさを武器に南米予選を突破してきたエクアドルのしたたかさだけに、DFカリドゥ・クリバリらはカウンターへの警戒を常に切らさない必要がある。また、世界最高峰のセンターバックの1人に数えられる彼には、セットプレーでの攻撃参加からゴールも期待される。

■イングランド×ウェールズ
グループB第3戦
キックオフ:現地時間11月29日22時(日本時間30日4時)
放送・配信:ABEMA
注目選手:デクラン・ライス(イングランド)、ガレス・ベイル(ウェールズ)

 イングランドは4点差で敗れなければ突破が可能だが、ターンオーバーに踏み切るかはガレス・サウスゲート監督が難しい判断を迫られるだろう。前回のアメリカ戦と比較すれば伝統的なスタイルの相手だけに、MFデクラン・ライスら中盤がボールを引き出しながら組み立てることの難易度は下がりそうだ。一方で、エースFWハリー・ケインはここまで期待されたほどのパフォーマンスを見せられていないだけに、ここで別の選手にスタメンのチャンスを与える可能性もありそうだ。

 ウェールズは勝利が突破への絶対条件になる。4点差をつけられれば自力突破だが、そこに至らない場合は別会場が引き分けに終わる必要がある。その結果を祈りつつ、まずは目の前の試合の勝利へ向け全力を傾けることになるだろう。こうした因縁のある試合や注目される舞台は、往々にしてスターがスコアを動かすもの。ウェールズでもっともそれが期待できるのはベイルだけに、もう1試合の引き分けを願いつつエースの一撃に期待だ。

■アメリカ×イラン
グループB第3戦
キックオフ:現地時間11月29日22時(日本時間30日4時)
放送・配信:NHK、ABEMA
注目選手:クリスティアン・プリシッチ(アメリカ)、サルダル・アズムン(イラン)

 アメリカは勝利すれば突破できるが、引き分け以下では敗退が決まる。現代的なポジショナルプレーと整理されたプレスは好感度の高いサッカーを展開しているものの、最後の一押しが必要なのも事実。ここまで惜しいシュートこそあるもののゴールネットを揺らすことができていないFWクリスチャン・プリシッチに期待が集まるのは自然だろう。MFタイラー・アダムスのゲームメークも注目ポイントだ。政治的な因縁の強い対戦で、襲い掛かるイランの勢いに負けないことも必要になるだろう。

 イランは勝利は突破、敗戦は敗退となるが、引き分けた場合は別会場でイングランドの引き分け以上を願うことになる。下馬評でイングランド有利だとしても、政治的な因縁のある対戦は読めないだけに、まずは自分たちが勝利を狙うのが本線だ。FWメフディ・タレミが前線で存在感を放つ中、負傷明けで徐々にコンディションを上げてきているFWサルダル・アズムンのプレーはイランの突破に向けてキーポイントになるはずだ。

【グループ展望】グループAはオランダが有利、混戦のグループBは全チームに突破可能性あり

■グループA
1位 オランダ 勝ち点4(得失点差+2)
1位 エクアドル 勝ち点4(得失点差+2)
3位 セネガル 勝ち点3(得失点差0)
4位 カタール 勝ち点0(得失点差-4)

■グループB
1位 イングランド 勝ち点4(得失点差+4)
2位 イラン 勝ち点3(得失点差-2)
3位 アメリカ 勝ち点2(得失点差0)
4位 ウェールズ 勝ち点1(得失点差-2)

 この両グループは1位と2位が決勝トーナメントの初戦で対戦することもあり、お互いの結果も気になるところ。最終戦まで1位通過と2位通過がどうなるか読めないことも興味深さを大きくしている。

 グループAは基本的にオランダが有利で、エクアドルとセネガルが決戦という見方が自然だ。オランダの立場では、勝利した場合でも得失点差で2位になる可能性があることから開催国カタールを相手にリードしていたとしても最後の1分までゴールを狙い続けるだろう。一方のエクアドルは引き分けでも突破できることから、多少の慎重さを見せることになるかもしれない。セネガルは前回のロシアW杯では日本と突破を争い、フェアプレーポイントの差で逃した悔しさをここで晴らしたいところだ。

 グループBは両会場、それぞれのチームで思惑が絡み合う難しい展開になる。もし、ウェールズがリードしていてイランとアメリカの試合が同点なら、そのままの状態ならイングランドとウェールズが突破できる状態になり、両チームの利害が一致する瞬間が訪れる可能性がある。階段状に勝ち点が分布していることから、どちらの会場も勝利が絶対条件のチームがハッキリしている。それが試合の流れにどのような影響を与えるか注目だ。(FOOTBALL ZONE編集部)