サッカー日本代表は1日、カタールワールドカップのグループステージ最終戦でスペイン代表と対戦する。
決勝トーナメント進出をかけた大一番だ。1勝1敗の勝ち点3でグループステージ最後の試合を迎える日本代表は、自力で次のラウンドに進める可能性を残している。勝てば文句なしでグループステージを突破することができる。
11月30日に行われた公式記者会見にはGK権田修一が出席し、「1、2戦目同様、たくさんの方が僕ら日本代表をサポートしてくれることを望んでいますし、そのサポートに応えられるように、僕ら選手は精一杯頑張ろうと思います」と意気込みを語った。
2014年のブラジル大会でも日本代表メンバーに選ばれていた権田は、今回が2大会ぶりのワールドカップになる。ピッチに立つのは今大会が初めてで、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。
記者会見のの中で「森保監督からかけられて印象に残っている言葉はあるか?」と問われた33歳の守護神は、次のように答えた。
「僕はGKなので、失点には常に絡んでしまうポジションなんですが、監督からは(先月17日の)カナダ代表戦の後も(先月27日の)コスタリカ代表戦の後も『過去はもう変えられない』と言われました。起きてしまったこと、過ぎてしまったことは変えられないけど、未来を変えることは自分たちの力でできるんだと。
結果が出なかった時、その都度監督から言われています。GKというポジションなので、(失点すると)当然悔しさもあるし、『もう少し何かできたんじゃないか』という思いは常にあるんですけど、自分が変えられるのは過去じゃなくて未来なので、その監督の言葉は自分の中ですごく大事にしていますし、今までそれで何度も救われてきたなと思います」
グループステージの2試合だけを切り取っても、様々なことがあった。初戦のドイツ代表戦で権田は相手にPKを献上し、敗戦の危機を作り出してしまった。後半の4連続ビッグセーブで試合の流れを一変させたが、もしチームメイトたちが2つのゴールを奪って逆転勝利に導いてくれなければ、マン・オブ・ザ・マッチの受賞はなかっただろう。
0-1で敗れた第2戦のコスタリカ代表戦では、終盤に「あのシュートは準備の段階でしっかりポジション修正ができていたら止められた」と悔いの残る失点を喫してしまった。たった1週間という短い期間であったとしても、ちょっとしたことで天国と地獄の両方を行ったり来たりしてしまうのがGKというポジションの宿命なのである。
権田は「自分のミスで失点して批判を浴びるというのは当然。ずっと手のひらが表になったり裏になったりを、サッカー人生を通じて繰り返しているような感覚がある」と、GKという役割の難しさを嫌というほど実感してきた。
日本代表に限らず、所属クラブでも浮き沈みがあるのは同じ。そうした中で、権田にとって「救い」になっていたのが森保監督の「過去はもう変えられない」という言葉だった。その一言によって、落ち込みそうな時でも気持ちを切り替え、前を向いて次の一歩を踏み出すことができたのである。
「僕がいつも自分の中で思っているのでは、何があっても結局プレーするのは自分だということ。自分やチームが称賛されたからといって自信過剰になっては良くないですし、批判されたから自信を失ってしまっても良くない。僕たちが森保監督のもとでずっとやってきたことを、今一度信じてやる。これから勝ち上がった後も、どの相手に対しても信じ続けてやること。それが一番大事なのかなと思っています」
もしコスタリカ代表に勝っていれば、もっと余裕のある状態でスペイン代表戦を迎えられたはずだ。だが「過去はもう変えられない」。現実を受け入れ、スペイン代表に勝って、自分たちの力で未来を切り拓くしかない。
「これから先も、日本サッカーはいい時は当然称賛されて、よくない時は…というのは仕方ないこと。これは天気と一緒で、ストレスに感じても仕方ないとずっと思っているので、自信を持っていきたいなと思っています」
対戦相手がどれだけ強かろうと、試合になれば自分たちの持てる全ての力を尽くして立ち向かっていくだけ。今大会の初戦で大量7得点を挙げたスペイン代表にも恐れを抱くことなく、国を背負う責任感を胸に、権田は今日も日本代表のゴールマウスに立つ。
(取材・文:舩木渉)
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