マリオ・パシャリッチが蹴ったボールがネットを揺らし、クロアチアの選手が歓喜にまみれる。その傍らで崩れる、サッカー日本代表。日本時間12月6日に行われたFIFAワールドカップカタール(カタールW杯)決勝トーナメント、クロアチアとの対戦は1-1の末、PK戦(1-3)に敗れた。2002年の日韓W杯、2010年の南アフリカW杯、2018年のロシアW杯、そして今大会。4度目のベスト8へのチャレンジだったが、またしても達成できなかった。
それでも日本は、ドイツ、スペインというサッカー界の巨人たちを倒し、これまでにないほど世界中を驚かせた。確かな足跡を刻んだ大会にもなったはずだ。ここではカタールW杯日本代表全メンバーの評価に触れていきたい。
日本代表カタールW杯試合結果:第1戦グループEドイツ戦2-1(勝)、第2戦グループEコスタリカ戦0-1(負)、第3戦グループEスペイン戦2-1(勝)、第4戦ラウンド16クロアチア戦1-1PK1-3(負)
GK
川島永嗣(ストラスブール/フランス)39歳
出場機会は得られなかったが、チーム最年長らしい振る舞いや盛り上げ方で貢献したGK川島永嗣。DF長友佑都と並ぶ経験値を持ち、精神的支柱の1つだった。
権田修一(清水エスパルス)33歳
文句のない、日本代表の守護神GK権田修一。グループリーグ初戦のドイツ戦で相手にPKを与えた場面もあったが、試合を重ねるにつれて安定感は増す一方。最終クロアチア戦でも土俵際で踏ん張り続けたが、PK戦で力尽きた。
シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/ベルギー)30歳
事実上のセカンドGKであるGKシュミット・ダニエル。権田にポジションを譲った悔しさは大きかっただろう。それでもチームの勝利を第一に、最後まで準備を続けた。
DF
長友佑都(FC東京)36歳
誰よりも気持ちを表に出し、すべてをこのカタール大会にぶつけたDF長友佑都。プレー面でも、全試合でスタメン出場。勝利のあとに叫ぶ「ブラボー」こそ、真の流行語大賞だろう。あと1回、歓喜のブラボーを聞きたかった。
吉田麻也(シャルケ04/ドイツ)34歳
日本のキャプテンDF吉田麻也は、システムが変わってもメンバーが変わっても出場を続け、期待通りの全試合フルタイム出場を達成。集中力が高く、スペイン戦では紙一重の神クリアをみせた。
酒井宏樹(浦和レッズ)32歳
日本屈指の強度を持つ右サイドバックのDF酒井宏樹は、初戦ドイツ戦のスタメンに名を連ね勝利に貢献。ところがこの試合で負傷を負い、その後の2戦は欠場に。クロアチア戦には間に合わせ、後半30分から出場。逆転を許さなかった。
谷口彰悟(川崎フロンターレ)31歳
初戦ドイツ戦、第2戦コスタリカ戦と出場機会は訪れなかったが、準備を怠らなかったことが第3戦で報われたDF谷口彰悟。W杯初出場がスペイン戦。緊張してもおかしくない場面だったが、カットから積極的に縦パスを狙うなどJリーグで見せるままの姿を披露。クロアチア戦を含めて、安定感抜群だった。
山根視来(川崎フロンターレ)28歳
川崎フロンターレが誇る攻撃的サイドバックのDF山根視来は、第2戦のコスタリカ戦に途中出場。ただ、サイドの選手に守備力が求められる展開が続いたことで、出場はこの1試合に留まった。
板倉滉(ボルシアMG/ドイツ)25歳
ドイツで評価を上げ続けてきたセンターバック、DF板倉滉。グループリーグ3試合にフルタイム出場し、そのドイツをほぼ封じるなどした。イエローカードの累積で出場停止となり、クロアチア戦のピッチに上がれなかったことが悔やまれる。
冨安健洋(アーセナル/イングランド)23歳
プレミアリーグ首位を走るアーセナルで「スーパー・トミ」と呼ばれる世界レベルのDF冨安健洋は、負傷を抱えながらも出場すれば力を示した。途中出場したスペイン戦では、右ウイングバックとしてアンス・ファティ(バルセロナ)らを完全に封じた。
伊藤洋輝(シュツットガルト/ドイツ)23歳
急成長をみせる新鋭のDF伊藤洋輝は、コスタリカ戦で後半開始から出場。守備の問題はなかったが、前方へのパスを躊躇したように見えて国内から批判を浴びることに。経験値の少なさは露呈したが、守備者としての能力に疑いの余地はない。4年後が楽しみだ。
MF/FW
柴崎岳(レガネス/スペイン)30歳
フィールドプレーヤーとしてはFW町野修斗と並んで出場機会を得られなかったMF柴崎岳。ベンチから声を送ることしかできなかった。稀代のパスセンスの持ち主は、この経験をバネにできるか。
遠藤航(シュツットガルト/ドイツ)29歳
日本の中盤の要として期待された「デュエルキング」ことMF遠藤航は、ドイツ戦、コスタリカ戦とフル稼働。負傷明けのスペイン戦こそ終了間際での登場となったが、クロアチア戦でもフル出場するなど期待通りに中盤を支えた。
伊東純也(スタッド・ランス/フランス)29歳
おもに、普段より守備の負担が大きくなるウイングバックでプレーしたFW伊東純也。低い位置にいる時間が多くなったが、スピードと運動量をハイレベルで両立。スペイン戦ではマークを捨てて競り合い、FW堂安律の同点ゴールへとつなげた。
浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)27歳
なんといっても、FW浅野拓磨のドイツ戦の2点目だろう。オフサイドぎりぎりのタイミングで飛び出すと、角度のないところからGKマヌエル・ノイアーの牙城を崩したのだから。初戦金星に多大な貢献をみせた。クロアチア戦では苦戦したが、今後の成長につながるはず。
南野拓実(モナコ/フランス)27歳
日本の10番、MF南野拓実は、試合終盤からの途中出場が続きやや消化不良かもしれない。それでもドイツ戦では同点ゴールを生み出し、クロアチア戦では失敗したもののPK時に自ら1人のキッカーに名乗りを挙げて勇気を示した。
守田英正(スポルティングCP/ポルトガル)27歳
左ふくらはぎの違和感の影響でドイツ戦には間に合わなかったMF守田英正だが、コスタリカ戦から3試合にスタメン出場。徐々にコンディションを上げ、クロアチア戦で遠藤につないだヒールパスは完璧なものだった。
鎌田大地(フランクフルト/ドイツ)26歳
日本の攻撃陣でもっとも実績を積み今カタール大会に臨んだMF鎌田大地は、全4試合にスタメン出場。クラブでのような圧倒的な存在感は見せられなかったが、チームのために労を惜しまない姿は中心選手にふさわしかった。
相馬勇紀(名古屋グランパス)25歳
Jリーグが誇るドリブラーFW相馬勇紀は、第2戦コスタリカ戦でスタメン出場。カットインからシュートを打つなど見せ場は作ったが、勝ち点を得るには至らなかった。
三笘薫(ブライトン/イングランド)25歳
日本の「スーパーサブ」として、全4試合に登場したMF三笘薫。ドイツ戦では同点ゴールの起点となり、スペイン戦では諦めずに足を伸ばし決勝ゴールをアシスト。後半に投入され試合をガラッと変えるプレーぶりは、今後のさらなる躍進を期待させる。
前田大然(セルティック/スコットランド)25歳
コスタリカ戦を除く3試合にスタメン出場したFW前田大然。1トップのため数的不利ながら、最前線で走り回り圧倒的なスプリント回数を記録した。クロアチア戦では、その努力が報われたかのように先制点を記録。
堂安律(フライブルク/ドイツ)24歳
ドイツ戦・スペイン戦で得点を奪い、チームで唯一の複数得点を記録したFW堂安律。今大会まではビッグマウスと呼ばれることもあったが、それに伴う実力があることをはっきりと証明した。
上田綺世(サークル・ブルッヘ/ベルギー)24歳
スピードに優れた選手が揃うFW陣のなかで、動き出しと得点力に特徴を持つことで期待を集めたFW上田綺世。しかし出場はコスタリカ戦のみ。4年後は日本のエースとなることが期待される。
田中碧(デュッセルドルフ/ドイツ)24歳
遠藤、守田のコンディションが整わないなかで、その穴を補って余りある働きをしたMF田中碧。スペイン戦では積極的な攻め上がりから決勝ゴールを決め、一気に知名度を高めた。
町野修斗(湘南ベルマーレ)23歳
追加招集でW杯行きを決めたものの、出場はならなかったFW町野修斗。それでもこの経験が、今後のキャリアの選択に影響を及ぼすのは間違いない。
久保建英(レアル・ソシエダ/スペイン)21歳
ドイツ戦・スペイン戦ではスタメン出場し、劣勢のなか懸命に攻撃の糸口を探したFW久保建英。一方で、コスタリカ戦は高熱のため出場ならず。この悔しさは、今後の代表活動で晴らすことだろう。
森保一監督
ドイツ、スペインと同組という厳しい組み合わせとなったグループリーグを見事に1位で突破。選手の意見を汲み、1つにまとめ上げた手腕は高い評価を得て然るべきだ。一方で、4年間に渡って育てた4バックは機能せず、戦い方の幅がなかったことは悔やまれる。