痺れるような展開で優勝候補のスペインを撃破。ドイツ戦に続き、グループリーグ3戦目で2−1と逆転勝利を収めた日本は、戦前の予想を覆して首位通過を果たした。
正直、前半の戦いぶりは褒められた内容ではなかった。スペインにボールを明らかに支配され、早い時間帯(11分)に失点。その後も押し込まれ、自陣に張り付け状態の時間帯が続いた。ボールの取りどころが定まらず、攻撃の形も見えない。そんな絶望感が漂う45分間だった。
しかし、後半、久保と長友に代えて堂安と三笘を投入すると、流れが変わる。前線からのプレスが前半よりも明確になり、48分に堂安の強烈な一撃で1−1に追いつく。そして51分には三笘の執念の折り返しから田中が逆転弾(VARの判定で認められた)と、途中出場のふたりが大仕事をやってのける形で、日本が一気に試合をひっくり返したのだ。
前半あれだけ劣勢だったチームが堂安の一発で活力を取り戻し、その勢いのままスペインを混乱の渦に放り込む。ようやく巡ってきた“流れ”をしっかりと掴み、そこで2ゴールを奪った後半の戦いぶりは見事というほかない。
ドイツ戦と同じく前半を0−1で終えられたからこその逆転劇であり、日本の粘り勝ちだろう。どうやら、前半はどうにか耐え凌いで、後半に勝負をかけるスタンスが、今大会の日本の必勝パターンらしい。
ドイツ戦での経験が活きたのか、スペイン戦で2−1とリードした後の日本は慌てることなく、相手の大半の攻撃を跳ね返した。もちろんピンチになる場面もあったが、GK権田の好守もあり後半はほとんど崩されなかった。攻撃の工夫に課題はあるものの、守備の強度は今大会屈指と言ってもいいのかもしれない。
ゴールに絡んだ選手や身体を張った吉田や板倉はもちろん、後半途中から出場した冨安(右ウイングバックを担当)も良い仕事をしたし、今大会初出場の谷口もイエローカードをもらったとはいえ奮闘。この日ピッチに立った選手全員が歴史的な勝利の立役者となった。
どん底の前半から立ち直る精神力、驚異的な粘りと勝負強さ。確かにコスタリカには敗れたものの、ドイツとスペインを粉砕した実力は本物だ。
番狂せは二度も起きない。グループEを首位通過した日本は、今大会の主役候補に躍り出たと言っても過言ではない。
構成●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)
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