●サッカー日本代表の攻撃はこの3分間がほぼすべて

サッカー日本代表は現地時間1日、FIFAワールドカップカタール2022グループE第3節でスペイン代表と対戦し、2-1で勝利を収めた。先制される苦しい展開から、どのようにして逆転勝利を収めることができたのか。ハーフタイムで施した修正が、後半開始直後の反撃へとつながった。(文:西部謙司)
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 後半始まって3分だった。三笘薫の猛烈な寄せでダニ・カルバハルがボールを下げた。そこへ三笘が二度追い、スペイン代表はGKウナイ・シモンを経由して逆サイドへ展開するが、伊東純也が競りかける。そして、こぼれ球を拾った堂安律が得意の角度からの左足の一撃。GKシモンの手を弾いてゴールした。

 同点にした2分後、伊東→田中碧とつないでボックス内の堂安へ。堂安のDFとGKの間を通すクロスボールはゴールラインを割る寸前で追いついた三笘が折り返し、田中が押し込んだ。VARチェックの結果、判定はゴール。ボールの端がわずかにラインにかかっていた。球の皮1枚がベスト16を決めた。

 日本代表の攻撃はこの3分間がほぼすべて。70分に三笘の突破からのアーリークロスを浅野拓磨がシュートしたのも決定機に近かったが、あとはほとんど守っていた。スペイン代表のボールポゼッションは83%という見たこともない数字になっている。

 ただ、ドイツ代表戦もそうだったが、こういう試合展開に日本代表は強い。前半にモラタにヘディングで先制され、それなりにピンチもあったが決定的だったのは3回ほどだ。膠着状態にして短時間の最大出力で得点して勝つのは、ある意味プランどおりだったと思う。

●後半に施した微修正

 勝利を前提にプレーしなければならない日本代表だったが、前半は膠着させることを目的としているような試合運びだった。

 はっきりと5-4-1システムでの守備重視。ただし、ディフェンスラインは高く設定していて、押し込まれたときもコンパクトネスを保った。7分には前田大然がセルヒオ・ブスケツからボールを奪い、伊東のシュートまでつなげた。これは理想的な形だったが、これ以降はスペイン代表からボールを奪うのは困難になっていく。

 12分、ガビのロークロスは弾き返したが、セカンドボールを拾われてアスピリクエタから斜めのハイクロス。板倉滉と伊東の間でフリーになったモラタがヘディングでねじ込む。

 日本代表は高いラインを維持しているので押し込まれっぱなしにはならず、反撃のチャンスもあったがそのたびに微妙なミスで失ってしまう。双方ほとんどミスがないだけに、前田、長友佑都、吉田麻也の小さなミスが目立ってしまう。ハンドボール的な試合になったが、一方的にスペイン代表がボールを保持していて、日本代表はボールを失うのが早く、攻撃ターンが来ない状況になっていた。

 後半あたまから久保建英に代えて堂安、長友に代えて三笘が左ウイングバックにそのまま入る。そして守備を微修正していた。

 前半、プレッシャーがかからない場所が2つあった。CBのどちらか、とくに左CBのパウ・トーレスのところと、右SBと右ウイングの間に下りてくるガビのところだ。左サイドハーフの鎌田大地がガビやCBを牽制するように前へ出ることで、後半からミドルプレスの圧力がかかりはじめ、その流れからの猛攻で逆転に成功する。

●万能だった三笘薫がすべてを変えた

 三笘がすべてを変えたといっていいかもしれない。1点目のハイプレス、2点目のアシスト、さらに守備面でもそこからの持ち出しも含めて、前半に足りなかったことをすべて補っていた。2点目のアシストは三笘のスピードと遠くのボールに触れる能力がなければ不可能だった。

 リードした日本代表は前田に代えて浅野、さらに調子が出てきた鎌田を引っ込めて冨安健洋を送り出す。冨安は右ウイングバックに入り、そこにいた伊東が左サイドハーフへ移動した。スペイン代表がアンス・ファティとジョルディ・アルバの投入で左からの攻め込みを強化したタイミングでの冨安の投入は相手の出鼻を挫くことになった。

 リードしてからの日本代表は高かったディフェンスラインも徐々に後退し、ペナルティエリアの外に“バスを置く”守り方になる。浅野も引いて5-5-0のようなシステムになっていた。こうなるとカウンターにはならない。少なくとも20分以上もこの状態でしのぐのは厳しいとしか思われなかった。スペイン代表のCBが日本陣内の半分まで進出している形になっていた。

 しかし、GK権田修一の安定したセービングもあって2点目を許さず。難関だったグループを1位通過することができた。相手のラストパスを弾き返し続けた吉田、谷口彰悟。ハイクロスをことごとく無効化した板倉。対人で勝ってゴールの起点となった伊東など、総力戦での勝利だった。

(文:西部謙司)

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