スペインとドイツが悩まされている
FIFAワールドカップ・カタール大会グループEは分かりやすい2強2弱の構図であり、前者がスペインとドイツ、後者が日本とコスタリカである。戦前予想も2強を決勝トーナメント進出に推す声が多かった。ただ最終的にラウンド16に進んだのはスペインと2弱の日本だった。
日本はアジアではボールを持つチームだが、世界ではその姿を変える。正確にいえばドイツやスペインといった強豪相手には日本は守備的なチームになる。スペイン戦での日本のボール支配率は17%としかなかった。
この割り切った考え方が今回の奇跡を呼び込んだ。勝てるはずがないとされていたドイツとスペインを破り、16強入りを果たしたのだ。
2010年のW杯・南アフリカ大会で結果を残した当時のスペイン代表は今の日本とは真逆のボール保持を中心とするスタイルだった。アンドレス・イニエスタ、シャビ・エルナンデスと魅力的な中盤を携え、ゴールを目指す。その魅力的なサッカーはティキ・タカと呼ばれ愛された。スペインはティキ・タカを武器に4年間でEURO2008、W杯・南アフリカ大会、EURO2012の3タイトルを手にした。
2014年のW杯・ブラジル大会で優勝したドイツもスペイン同様にボールを持つことを重視したサッカーを展開している。
ただその2年後のEURO2016から風向きが変わり始める。大会を制したのはポルトガルで、これまでのスペインやドイツと同じくポゼッションスタイルではなく堅守速攻型のチームだった。
続くW杯・ロシア大会を制したフランスもそうだ。ボール保持を放棄しても強いチームが好成績を残している。共通点は堅守と速攻の鋭さであり、相手を崩す上手さというよりもスピードと強度で相手を圧倒する。
チームのスタイルは大きな括りで見るとポゼッションか堅守速攻の2つに分かれる。日本に敗れた2チームは前者であり、今大会で好成績を残すフランスやイングランドは後者だ。
近年は守備技術の向上により、ポゼッション型のチームが相手を崩せないことが増えてきた。アジア最終予選で苦戦する日本が分かりやすい例であり、5バックで自陣に引かれてしまえば、ゴールを奪うのは難しい。それこそアーリング・ハーランドのような高さと決定力のあるストライカーがいればまた話は別だが、スペインも日本も絶対的な点取り屋がいない。ドイツはニクラス・フュルクルクを見つけたが、初戦の黒星が大きく響いた。
今、日本は守る側に回っているためW杯では気にならないが、より選手が成長しスペインやドイツのサッカーを目指すなら日本もぶつかる問題となる。ボールを持つことがリスクになるとまではいかないが、守備技術が向上し日本のような中堅国が組織されたプレッシングを仕掛けてくる。日本はドイツやスペイン、イングランドと5大リーグでプレイしている選手が多く、各クラブで守備を仕込まれている。スペインでも日本のプレッシングを完全にかわすことができておらず、今後はある程度ボール保持を放棄しても安定感を失わないチームが結果を残すことになるだろう。