ブラジルのジル記者がスペイン戦を総括「この結果を喜んでいるよ」
カタール・ワールドカップ(W杯)は、現地時間12月1日にグループE第3節を行い、日本代表はスペイン代表と対戦した。日本は前半に先制されたものの、後半の立ち上がりに2点を返して逆転。そのまま2-1で勝利して、初戦のドイツ戦(2-1)に続く白星を挙げ、グループEの首位になった。
ブラジルメディア「グローボ・エスポルチ」のカルロス・ジル記者は、東京オリンピックまでの3年半、家族とともに日本で生活をしていたという。日本がスペインに勝利した後、「特別な日になったよ。僕の子供は日本の学校に通っていた。家では家族が日本を応援していたし、この結果を喜んでいるよ」と、笑顔を見せた。
試合を振り返り、「日本が自分たちを信じて戦う姿は印象的だったね」と分析する。
「初戦でドイツを破り、2戦目ではコスタリカに敗れてしまった。もっとも、僕はあの試合も負ける内容じゃなかったと思っているけれど。それでも最終的には勝ち上がった。この数年間でのメンタル的な成長は、とても衝撃的だ。日本にとって、すでに過去最高のW杯と言えるだろう。ドイツとスペインという2つの世界王者を破ったんだからね。僕はブラジル出身だから、準々決勝でブラジルが日本と対戦することを期待しているよ。」
日本は前半、スペインに押し込まれ続けた。それでも失点を1に抑えると、後半の立ち上がりに2点を挙げて勝利している。ジル記者は「前半の日本を見ていて、アルゼンチンとサウジアラビアの試合を思い出した。本当によく似ていた」と話す。
「アルゼンチンも最初にメッシがペナルティーキック(PK)でゴールを決めた。後半のスタート、アルゼンチンは余裕があった。ところが10分で2点を取られてひっくり返されたんだ。同じような戦いを日本が狙ったわけではないと思うけれど、ストーリーはそっくりだった。スペインは早い時間に1点を取り、リラックスして戦っていた。このままで1次ラウンドを突破できることは分かっていたからね。でも、日本は勝たなければいけなかった。後半の5分間で猛攻を仕掛けて、2度のゴールを挙げた。素晴らしかった」
スペインが有利な立場のメンタル面に見解、日本のベスト8の可能性は?
もう1つのポイントとなったのは、グループの順位だったという。すでに勝点4を確保していたスペインは、初戦でコスタリカに7-0と大勝していたことで、得失点差でも優位にいた。日本にリードをされた後も、スペインは2位でグループを通過できる状態だった。
「スペインは無理をする必要がなかったことだ。彼らはもう1つの試合の経過を知っていたはず。ドイツが得点を重ねても、自分たちの順位が覆されないことは分かっていた。このままであれば、彼らは2位でグループを通過でき、決勝トーナメント1回戦ではモロッコ代表との試合になる。さらに準々決勝でブラジルと対戦することも避けられる」
「リードした日本が、『このままいくぞ』と思ったのと同時に、スペインも『このままでいい』という意識が働いていたはずだ。試合の終盤、私は『もうスコアは動かないな』と思いながら見ていた。もちろん、仕組まれた試合だったわけではない。でも、心理的には、選手たちは状況を分かっているから影響はあった。特にスペインは、リスクを冒す必要はなかった。もっとも、コスタリカがリードしていた3分間だけは、彼らはW杯から敗退していたけれどね(笑)」
初めて2大会連続で16強に進んだ日本は、まだ見ぬ景色、ベスト8進出を目指す。そこに立ちはだかるのは、クロアチアだ。ジル記者は「今の日本のメンタリティであれば、達成できるだろう」と見解を語った。
「クロアチアはもちろん経験もあり、良いチームだ。だが、カナダとの試合を見たけれど、2018年のチームの方が今よりも強かった。モドリッチは4歳、若かったしね。若くて良い選手もいるけれど、日本は乗り越えられるはずだよ。組織的だし、規律がある日本は、自信を持って臨むべきだ。日本の戦いぶりは、感情的にも、戦術的にも、ちょっとジェットコースターみたいなところがある。フィジカル、メンタルが安定してくれば、よりしっかり90分間を戦えるようになるだろう」と、日本のベスト8進出とさらなる成長に期待を寄せた。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)