[カタール・ワールドカップ・グループステージ第3戦]日本2-1スペイン/12月1日/ハリファ・インターナショナル・スタジアム

 現役時代は“炎のSB”としてヴェルディ川崎や日本代表で活躍し、現在はブリオベッカ浦安の監督を務める都並敏史氏に、ドイツとの初戦に続き、2-1で劇的な逆転勝利を収めたスペイン戦を採点していただいた。

 都並氏は開口一番、「世紀の大金星なので一生に一度くらいの大甘。ここで厳しくしても意味ないから。結果が全て」と語ったように、選手・監督・チームを通じて高評価となった。

【日本代表・総評】

「本当に劇的快挙で素晴らしかった。ドイツ戦と同じように、後半のメンバー変更によって力を見せつけたのが1番のポイント。コンパクトなラインでバイタルエリアを消すことはしっかりできていたので、それも大きかったと思う。総じて言えば、分析の勝利なのではと思っている。前半でハラハラさせた分、点数は2点引いた」

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【個人採点・寸評】
GK
12 権田修一 6.5
「キック、セーブ、ダニ・オルモのシュートを防いだ場面など、よくやれていた。安定感ある戦いぶりだった。ドイツ戦は前半のPK献上もあったから、それより全然良かった」

DF
3 谷口彰悟 6.5
4 板倉 滉 6.5
22 吉田麻也 6.5

「前半の最初は、3人ともやや後ろで余りすぎていた。それを試合の途中から改善して、中盤に浮いているガビ、ペドリに対して谷口が一番最初に行った。途中から吉田、板倉もしっかりと行けていた。最後、引いた時のディフェンス、シュートブロックやコースに入る動きも素晴らしかった。

 プラスで吉田は、このゲームのポイントは『バイタルエリアを空けない』ことなので、そこのラインコントロールや、ボランチとの距離感をすごく意識していた点は特筆したい」
 
MF
5 長友佑都 6(HT OUT)
14 伊東純也 6

「なかなか攻撃参加できるような状況ではなく、かといってワイドに張るウイングを捨てて前に出ていくのもなかなかできなかったと思うが……。それでもシャドーの人間とコミュニケーションを取って、前半からも少しメリハリのある守備がしたかった。それが3バックと比べて、0.5マイナスの理由。どういうふうになったとしても、3バックのワイドはもっと攻撃に出ていきたい」

13 守田英正 6.5
17 田中 碧 7(87分OUT)

「この2人は非常に重要なポイントだった。前半、1トップの前田が一生懸命追いかけている時に、一緒に出ていくタイミングもあったが、それを我慢して、とにかくセンターバックと自分たちの距離を空けずにキープした。ガビたちのプレーエリアを潰すことが、一番のポイントだったと思うので、それを忠実にやった。

 ハーフウェーラインを越えて前から追うとなった時には、『前前前』という形で球際に行けていた。それから自分たちがリードして、相手が前から来るような状態の時は、1タッチでシャドーに流していく、このプレーも良かったと思う。田中はもっともっと攻撃してほしいんだけど、あそこで出ていって値千金の点を奪ったのはプラス点をあげたい」
 
15 鎌田大地 6(68分OUT)
11 久保建英 6(HT OUT)

「久保に関しては、本人は非常に悔しい思いがあるんじゃないかと。時間を与えてれば、もっと自分のプレーができたと思う。ただ、身体のキレはあり、時に逆サイドまで良さを出したりと、そういう意味では我慢の交代だったなと思う。

 鎌田はあんまり良くなかったけど、同じ6点だな。プレー自体はドイツ戦よりもボールは落ち着いて持てていたと思う。鎌田自身で採点したら、5とか4.5なんだろうけど、チームで勝ってるから。そういう点で甘くした」

FW
25 前田大然 6(62分OUT)
「彼のスピードを守備で活かすためには、もっともっと自由に走らせたかった。やっぱり引かされて我慢をしている時に、たった1人で追うのは本当に苦痛だったと思うし、精神的に我慢しながら追ったと思う。後半にもっともっと前から行くプランに変わって、花火がいきなり輝くみたいな形になった」
 
交代出場
MF
8 堂安 律 7(HT IN)
「『さあ行きましょう』と意識が変わった後半に入って、最初に来たチャンスを自分の形であるシュートに持ち込む力。本来であればもっと良いコースに飛ばせると思うが、タイミングが非常に良かった。ウナイ・シモンからすれば、0.5くらいタイミングが早い。

 それによって細かいステップを踏んでから飛べず、その場で飛ばなくてはいけなくなり、力に負けたという感じ。それをその場でいきなり出せたのは本当に大きい。そうじゃなければ入らなかったシュートだと思う。気持ちとシュート技術が乗った素晴らしい得点だった」

MAN OF THE MATCH
9 三笘 薫 7.5(HT IN)
「三笘はもうやばかったね。左サイドを攻守で完全制圧した。カルバハルが子どもに見えた感じだったから。攻撃ではカルバハルをぶち抜き、守備ではフェラン・トーレスをしっかり抑えた。ドイツ戦から思っているが、ディフェンスが急激に上手くなっている感じがする。攻守で非常に効いていた。最後のシュートブロックも、あれができるようになっているんだったら、本当に凄い」

FW
18 浅野拓磨 6(62分IN)
「我慢するというより、解き放たれた状況で入ってきたので、やることははっきりしていたと思う。右サイドに流れてヒールで落として、良い形を作っていた。三笘からクロスを受けた場面で枠に入れていれば6.5になっただろうし、それをもしぶち込んでいたら7.5になっていた」
 
DF
16 冨安健洋 6(68分 IN)
「右ウイングバックでのプレーは初めて見たけど、本当に守備の達人という感じで、どこでもできるんだなと感じた素晴らしい出来だった。特にジョルディ・アルバの上がりに対し、伊東や堂安がつけない時、そこに自分がつく時、中の選手を見る時、アンス・ファティみたいな裏に出てくる選手を見る時と、きっちり対応していた。基本、右サイドバックの守り方で守った時間帯なので、5バックのワイドだったが、より守備が強固になったという意味では、森保さんの采配も素晴らしかった」

MF
6 遠藤 航 6(82分IN)
「やっぱり守備のポイントを分かっている人。蓋をするプレーに終始していたなか、それでもやっぱり揺さぶられた時に、身体を張ってブロックに入るとか、そういう仕事が瞬時にできる。本当に力があるなと感じた」

監督
森保 一 8
「今のスペインを潰すための最善の方策を取ったのかなと思う。前半は前から行かない時間のほうが多かったので、当然回されるが、失点のところは結局深く入られすぎて、クロスがペナルティエリアの角から入ってしまったので、ああなるともうどうしようもない。あそこの対応に関してはマイナス点がある。

 後半は選手を変えて、『前に行くぞ』というメッセージをしっかり見せて、相手に驚きを与えた。その落差、温度差があるほうが驚くわけだから、それが上手くハマった感じがした。それが最初から仕組まれたものなのか。もう少しやられていたら2失点目を喫していた可能性もあるわけで、ちょっとここは分からない」

構成●サッカーダイジェストWeb編集部