最先端の欧州サッカーは、スピード化&アグレッシブ化が極めて進んでいる。とりわけプレミアリーグやチャンピオンズリーグは今や「トランジション&プレス合戦」の様相で、攻守が激しく入れ替わる。
カタールW杯でも例えばグループリーグのスペイン対ドイツ、ラウンド・オブ16のフランス対ポーランドなどは、非常にインテンシティーの高いアグレッシブな展開となった。
そんな中、今大会の日本代表はそうした最新トレンドと真逆。多くの時間帯でリスクの高いハイプレスやカウンタープレスを控え、コンパクトなリトリート戦術で守備を固める。この戦い方だと必然的に粘り強く耐える展開になるため、ボール支配率はドイツ戦が27%、スペイン戦が17%(勝利チームではW杯史上最低)だった。まるで一昔前のセリエA下位チームのような「弱者の戦術」であり、いわばクラシカルなスタイルだ。
実際に選手たちは「前半はとにかく耐えて0-0でオッケー、0-1も悪くないと思っている」と語り、鎌田大地や田中碧は「今の自分たちのクオリティーを認めたうえで、勝つための確率を上げるための作戦。割り切っている」と説明している。
しかし、日本代表は後半の時間限定で、いきなりモダンに切り替わる。交代カードも有効活用しながらリスク承知で積極的にハイプレスおよびカウンタープレスを仕掛け、ボールを奪うと一気呵成に攻め立てるのだ。こちらはまるで近年のリバプールを見ている気分になる。
ドイツ戦で言えば三笘薫、浅野拓磨、堂安律、南野拓実など次々に投入した57分から83分の26分間。スペイン戦で言えば同じく堂安と三笘をピッチに送り込んだ後半頭から51分までの6分間だ。両試合とも前半とは打って変わってアグレッシブな姿勢を見せたこの時間帯に2ゴールを挙げると、その後は再びクラシカルな守備重視のスタイルに回帰し、逃げ切っている。
ここまで大きく戦術的な振る舞いを変えられ、しかもいずれのスタイルも十二分に機能させられるチームは極めて珍しい。クラシカル戦術を基盤にしながらも、展開次第でモダン戦術も時間限定で使う今大会の森保ジャパンは、いわば“ハイブリット”なチームと言ってもいいだろう。
日本サッカーの悲願であるW杯ベスト8進出が懸かった12月5日のクロアチア戦(ラウンド・オブ16)でも、基本的な戦略はおそらく変わらない。受動的なクラシカル戦術から能動的なモダン戦術に切り替わって勝負を仕掛けるそのタイミングに、要注目だ。
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)
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