FIFAワールドカップ・カタール2022の決勝トーナメント1回戦が12月5日(日本時間)に行われ、イングランド代表とセネガル代表が対戦した。

前半38分にイングランド代表が自陣後方からのパスワークでセネガル代表のプレッシングを搔い潜ると、左サイドに立っていたハリー・ケインがジュード・ベリンガムへスルーパスを送る。ベリンガムのグラウンダークロスにジョーダン・ヘンダーソンが左足で合わせ、先制ゴールを挙げた。

前半アディショナルタイムに、ベリンガムの自陣でのボール奪取から始まったロングカウンターでケインが今大会初ゴールを挙げると、後半12分にもブカヨ・サカがフィル・フォーデンの左サイドからのクロスを物にして加点。セネガル代表に付け入る隙を与えなかったイングランド代表が、最終スコア3-0で準々決勝への切符を手にした。

イングランド代表がセネガル代表を封殺できた要因は何か。今回はこの点について解説する。


多彩なイングランドがセネガルに完勝。巧みな追い込み漁で隙を与えず【W杯試合分析】
イングランド代表vsセネガル代表、スターティングメンバー

ケインを起点とする守備が機能

基本布陣[4-1-2-3]のイングランド代表は、センターFWのケインを起点にセネガル代表の最終ラインにプレッシング。セネガル代表の[4-4-2]の2センターバック、カリドゥ・クリバリとアブドゥ・ディアロの間にケインが立ち、相手のパスワークを片方のサイドに誘導すると、ボールサイドに逆サイドのフィールドプレイヤーも寄り、セネガル代表のパスワークを封じにかかった。

この傾向はキックオフから50秒後の場面で早速見られ、ここではケインがディアロにプレスをかけながら、セネガル代表のパスワークをイングランド代表の左サイドへ誘導している。クリバリから右サイドバックのユスフ・サバリへのパスコースを、イングランド代表の左ウイングFWフォーデンが塞いだほか、ベリンガムとヘンダーソンの2セントラルMFも相手の2ボランチ(ナンパリス・メンディとパテ・シス)を捕捉。右ウイングFWのサカや右サイドバックのカイル・ウォーカーもボールサイドに寄ることで、セネガル代表の選手たちを追い込んだ。

多彩なイングランドがセネガルに完勝。巧みな追い込み漁で隙を与えず【W杯試合分析】
イングランド代表 FWハリー・ケイン 写真:Getty Images

このイングランド代表の“追い込み漁”に手を焼いたセネガル代表は、最終ラインからのアバウトなロングボールを連発。遅攻がままならず、前半8分にはクリバリへのパスコースをケインに塞がれたディアロが、自陣ペナルティエリア内でサカにボールを奪われかけている。この後も追い込み漁の手を緩めなかったイングランド代表によって、試合の主導権を握られた。

多彩なイングランドがセネガルに完勝。巧みな追い込み漁で隙を与えず【W杯試合分析】
イングランド代表のプレッシングの一例

セネガル代表のプレスも難なく回避

緻密なプレッシングで試合をコントロールしたイングランド代表は、自陣後方からの攻撃の際に左サイドバックのルーク・ショーが敵陣へ上がり、ウォーカー、ハリー・マグワイア、ジョン・ストーンズで3バックを形成。相手の2トップとの3対2の数的優位を作ったうえでのビルドアップを試みた。

これに対しセネガル代表は左サイドハーフのイスマイラ・サールを前に出し、3対3の数的同数を確保。この両軍によるにらみ合いや駆け引きが、キックオフ直後より繰り広げられていた。

多彩なイングランドがセネガルに完勝。巧みな追い込み漁で隙を与えず【W杯試合分析】
セネガル代表 FWイスマイラ・サール 写真:Getty Images

ヘンダーソンが自陣のハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)へ降り、セネガル代表の2トップにマークされていたデクラン・ライスの負担を軽減したほか、ベリンガムも時折左サイドバックの位置へ降り、センターバックやGKジョーダン・ピックフォードからのパスルート作りに尽力。イングランド代表が隊形変化を駆使し、セネガル代表を撹乱した。

先制ゴールの場面では、ウォーカー、マグワイア、ストーンズの3バックでビルドアップを行うと見せかけ、ショーが自陣左サイドで待機。このショーの巧みなポジショニングによりセネガル代表の右サイドハーフ、クレパン・ディアッタが釣り出されると、同選手の背後でフォーデンがパスレシーブ。その後ケイン、ベリンガム、ヘンダーソンの順でパスを繋いだイングランド代表が、セネガル代表の守備を完璧に崩してみせた。

一糸乱れぬプレッシングと、多彩なビルドアップでセネガル代表を圧倒したイングランド代表。今後もカタールW杯を盛り上げるだろう。