カタール・ワールドカップ(W杯)準々決勝のイングランド代表vsフランス代表が10日に行われ、1-2で勝利したフランスが準決勝進出を決めた。
前回大会でベスト4、ユーロ2020で準優勝と着実に頂きへ近づきつつあるイングランド。ラウンド16のセネガル代表戦ではエースのケインに待望の初ゴールが生まれるなど3-0で完勝。中5日で迎えた前大会王者との一戦ではこちらもスタメンに変更はなし。ムバッペとのマッチアップに注目のウォーカー、ベリンガムやケイン、サカ、フォーデンが起用された。
一方、史上3カ国目の大会連覇を目指すフランスは決勝トーナメント初戦となったポーランド代表とのラウンド16をムバッペの2ゴール1アシストの活躍によって3-1の勝利。危なげなくベスト8進出を決めた。そして、連覇に向けた最初の試練となる準々決勝では優勝候補に挙がる難敵と対戦。デシャン監督はこの重要な一戦に向けポーランド戦と全く同じスタメンを採用。歴代最多143試合出場達成の守護神ロリスに前線にはジルー、グリーズマン、デンベレ、ムバッペとお馴染みのメンバーが並んだ。
互いに前からアグレッシブにプレスを仕掛けることなく慎重な試合への入りを見せる。バックラインでは比較的ストレスなくボールを動かせるが、相手陣内に入るとフィジカル自慢の選手たちが早くも強度の高い攻防を繰り広げる。
主導権争いが続く中、11分には右サイド深くでデンベレが上げたクロスをゴール前のジルーが低い体勢ながらうまく頭で合わせて最初の枠内シュートとする。
その後は互いに得意のカウンターでチャンスを窺うと、王者フランスがスーペルゴラッソで早くもゴールをこじ開ける。
17分、自陣でサカからボールを奪ったウパメカノの持ち上がりを起点に左サイドで粘ったムバッペが味方とのパス交換で右へ展開。デンベレ、グリーズマンと細かく繋いでペナルティアーク手前でフリーのチュアメニにボールが渡ると、ここでレアル・マドリーの22歳MFが右足を一閃。低い弾道の強烈なシュートがベリンガムの股間を抜けてゴール左下隅の完璧なコースに突き刺さった。
今大会で初めて先制を許したイングランドはすぐさま反撃を開始。22分にはボックス右でうまくDFと入れ替わったケインにビッグチャンスも、左足のシュートはトッテナムの同僚GKロリスにうまく間合いを詰められて阻止される。さらに、29分にもボックス右角から再びケインが強烈なミドルシュートを枠に飛ばすが、これもフランス守護神がビッグセーブで阻む。
頼れる守護神のビッグプレーでピンチを逃れたフランスは徐々にゲームのテンポを落ち着かせることに成功。回数は少ないものの、ムバッペとデンベレの両翼の仕掛けでひっくり返す状況を作り出し、前に出たい相手をしっかりと牽制。前半終盤は危なげなく時計を進めて1点リードでハーフタイムに入った。
互いに選手交代なしで後半の戦いに突入。ビハインドを追うイングランドがリスクを冒して前に出る中、開始直後に得た左CKの二次攻撃ではショーの短い落としに反応したベリンガムが強烈なシュートを枠に飛ばすが、これはGKロリスにはじき出される。
それでも、52分には前半から果敢に仕掛けを見せていたサカがボックス内でチュアメニのファウルを誘ってPKを獲得。ここでトッテナムの同僚であり両チームのキャプテンが対峙したPKをキッカーのケインが強烈なシュートで制し、54分の同点ゴールにすると共にウェイン・ルーニーが持つイングランド代表の歴代最多ゴール記録の53ゴールに並んだ。
1-1の振り出しに戻った試合はここからよりオープンな展開に。フランスが失点直後にラビオのミドルシュートでGKピックフォードにセーブを強いると、イングランドもサカの突破を起点にケインが2点目を狙う。
セットプレーからマグワイアが左ポスト直撃の際どいヘディングシュートを放つなど、イングランドがより優勢に試合を進めていたが、ここまで見せ場を欠いていたフランスの歴代最多得点者が決定的な仕事を果たした。
78分、直前の決定機で左足ダイレクトシュートをGKピックフォードにビッグセーブで防がれたジルーだったが、そのプレーで得たCKの二次攻撃から左サイドのグリーズマンが入れた高精度のクロスを見事なヘディングシュートで合わせた。
再び追う展開となったイングランドは直後にサカとヘンダーソンを下げてスターリングとマウントを同時投入。すると、この交代策が即絶好機に繋がる。80分、後方からのフィードに反応したマウントがボックス内でDFテオと交錯。一度はプレーが流されたが、オンフィールド・レビューの結果、この試合2つ目のPKが与えられる。
ここでキッカーはルーニー超えのかかるケインとなったが、ロリスとの2度目の対峙では相手の動きが気になったか、左上を狙ったシュートは力が入りすぎてクロスバーを大きく越えて痛恨の失敗に。
PKの名手ケインの失敗で厳しくなったイングランドはラッシュフォード、グリーリッシュと続けてアタッカーをピッチに送り出し、ここから攻勢を強めていく。
そして、8分が加えられた後半アディショナルタイムのラストプレーではマグワイアの身体を張ったプレーによってペナルティアーク付近の好位置でFKを獲得。ここでキッカーはウェールズ戦で直接FKを決めているラッシュフォードとなったが、狙いすましたシュートはわずかにクロスバーを越えた。
そして、試合はこのままタイムアップを迎え、難敵イングランドを退けたフランスが苦しみながらも大会連覇に向けた大きな関門を突破した。
なお、ベスト4進出のフランスは14日に行われる準決勝で躍進のモロッコ代表と対戦する。
イングランド代表 1-2 フランス代表
【イングランド】
ケイン(後9[PK])
【フランス】
チュアメニ(前17)
ジルー(後33)