サッカー日本代表は現地5日、カタールワールドカップの決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦する。
「ワクワクしています。歴史を変えるというのは、普通に生きていてできることではないので。今回もたくさんのOBの方や現役選手もカタールに来ていますが、そういう方々を僕は実際に対戦したりテレビで観ていてすごいなと思ってきた。
画面で観てきたスーパースターのような選手たちがなし得なかったことを、僕らがなし得る可能性がある、この場に立てることの喜びが本当に大きいです。負けたら終わり。言い方としたら間違いなくそうなんですけど、いまは僕らは歴史を変えられることへの気持ちを大事にしています」
前日の取材でそう語ったのは、GK権田修一だ。グループステージで好セーブを連発して度々チームを救ってきた守護神は「『負けたら終わり』というのは、個人的にあまり好きではない」とも述べる。
「僕らに誰も『負けたら…』と思ってやっている選手はいなくて、とにかく目の前の試合で勝つことに集中してやった結果がこのワールドカップにつながっている。『負けたら終わり』と考えるよりも、『勝ったら…』と考えた方がポジティブだし、意味は一緒じゃないですか」
権田は「今まで生きてきて、同じ意味でも言い回しを変えるだけで……というのはいろいろな場面で感じてきた」という。言葉の持つ力は強い。最初はネガティブに聞こえても、ちょっとした表現を入れ替えることで全く印象の違う言葉になることもある。
「負けたら終わり」は「勝ったら次がある」と同義だが、ニュアンスは真反対だ。そして、言葉の力が「信じる力」と合わさることで、大きなエネルギーを生み出す。
「何で(グループステージを)抜けられたかと言ったら、監督をはじめコーチングスタッフ、僕ら選手がみんな信じていたから。『言う』ということの裏に、信じる力があるのは絶対条件です。例えば軽い気持ちで『いや、大丈夫だよ』と言う。それって実際は大丈夫じゃない。
みんなが心から『グループステージを絶対に抜けるんだ』という気持ちを持って戦ったのが、突破できた理由だと思います。それを言霊にするために、気持ちは絶対に欠かせない要素なのかなと。精神論と言われるかもしれないですけど、でも結局はそこだなとは、今回すごく思っていますね」
森保一監督が率いる日本代表は、発足当初からワールドカップでのベスト8進出を目標にしてきた。これまで3度にわたってラウンド16で敗退してきたが、今こそ次のステップに進む時だ。初の2大会連続ベスト16進出を果たしたサムライブルーなら、日本サッカーの歴史に新たな1ページを刻むことができる。
権田は「(キックオフは)日本時間で6日の0時ですよね。(クロアチア代表に)勝つことで日本の歴史が変わった日になり、12月6日が『サッカーの日』という祝日に…なりませんね(笑)」と冗談めかして笑う。だが、半分くらいは本気で言っていそうな雰囲気があった。
「世界的に見たら『たかがベスト8』かもしれないですけど、今まで誰もなし得なかったことを達成するのは簡単ではない。森保監督も実際にドーハの悲劇に立ち会っていた選手だし、今まで悔しい思いをしてきたたくさんの方々が毎大会、毎大会、アップデートしていって今がある。そこは僕らだけの力じゃない。でも、やっぱり歴史が変わる瞬間、12月6日を祝日にというのが本当は理想で……総理大臣か天皇陛下かわからないですけど、皆さんが全力で言ってください(笑)」
前人未到の領域への挑戦だ。日本代表は前回大会準優勝のクロアチア代表を打ち破り、日本サッカー史上初のワールドカップベスト8進出を成し遂げられるだろうか。「新しい景色」を見るための運命の一戦は6日0時にキックオフの笛が吹かれる。
(取材・文:舩木渉)
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