【専門家の目|栗原勇蔵】キャプテン吉田なくしてベスト16進出はなかった

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、現地時間12月5日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表(同12位)と対戦し、1-1のまま120分間で決着が付かず、PK戦に突入してPKスコア1-3で敗れた。目標とする初のベスト8にあと一歩手が届かず敗退となったなか、元日本代表DF栗原勇蔵氏が今大会計4試合を踏まえて全26選手と森保監督を10点満点で採点。最終回はDF&GKの守備陣11人と指揮官の査定を紹介する。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

  ◇   ◇   ◇ 

<DF>
■長友佑都(FC東京) 5.5点
ドイツ戦(〇2-1):先発出場・後半12分までプレー
コスタリカ戦(●0-1):先発出場・ハーフタイムまでプレー
スペイン戦(2-1):先発出場・ハーフタイムまでプレー
クロアチア戦(●1-1/1PK3):先発出場・後半12分までプレー
今大会通算:4試合0得点0アシスト

「36歳で自身4回目のW杯。今年に入って厳しい声に晒され続けるなかで、あの舞台に4試合立ったのは凄いと思います。ムードメーカーの1人でもありましたよね。ただ、プレー時間はフル出場しているわけではなく、全試合で交代枠を使っている。大会の登録枠が23人から26人に増え、交代枠もこれまでの3枠から5枠に変更されているレギュレーションに後押しされたとも言えます。ベテランの長友をベンチに追いやるくらいの生きのある選手が出てこなかったので、そこは今後の日本の課題なのは間違いありません」

■吉田麻也(シャルケ) 6.5点
ドイツ戦(〇2-1):フル出場
コスタリカ戦(●0-1):フル出場
スペイン戦(2-1):フル出場
クロアチア戦(●1-1/1PK3):フル出場
今大会通算:4試合0得点0アシスト

「GKやDFは1つのミスが大きくクローズアップされるので、本当に難しいポジションです。コスタリカ戦では、たしかに失点に直結するプレーがあったかもしれません。ただ、冨安(健洋)、酒井(宏樹)、板倉(滉)と怪我や出場停止で抜けるなか、34歳のベテランがコンディションを維持して、ディフェンスリーダーとして、キャプテンとしてチームを引っ張っていた。その影響力は、やはり吉田抜きではあそこまで行けなかったはずだし、最後の最後まで戦っていたので、評価に値すると思います」

■酒井宏樹(浦和レッズ) 6.0点
ドイツ戦(〇2-1):先発出場・後半30分までプレー
コスタリカ戦(●0-1):出場なし
スペイン戦(2-1):出場なし
クロアチア戦(●1-1/1PK3):後半30分から途中出場
今大会通算:2試合0得点0アシスト

「左太ももの負傷もあって、本人は歯がゆい思いをしたと思います。フィジカルの強さは随所に発揮していましたけど、大きな破綻などはなかったとはいえ、全盛期から考えると少し物足りなさはあった気がします。攻撃面で要求したいところはありますが、右サイドの縦関係には前に伊東純也がいるので、ある程度任せていたのかなと。コンビネーションが確立されていれば、もっとバリエーションが増えてチームを助けられていたかもしれません」

バックアップ役で明暗 谷口は殊勲の6.5、伊藤は不完全燃焼の4.5

<DF>
■谷口彰悟(川崎フロンターレ) 6.5点
ドイツ戦(〇2-1):出場なし
コスタリカ戦(●0-1):出場なし
スペイン戦(2-1):フル出場
クロアチア戦(●1-1/1PK3):フル出場
今大会通算:2試合0得点0アシスト

「9月シリーズのエクアドル戦でPKを献上(GKシュミット・ダニエルがストップして無失点)して、少し自信がないようにプレーをしているように感じました。でも、3バック採用に伴って先発に抜擢されたスペイン戦では堂々としていましたよね。バックアップから、いきなり試合に出て結果を出すのはプレッシャーがあるものですけど、それを微塵も感じさせなかった。素晴らしいパフォーマンスでした。その谷口が、吉田や冨安、板倉に続く4番手。彼がいたからこそ、日本のディフェンスラインは安定していたと思います」

■山根視来(川崎フロンターレ) 5.0点
ドイツ戦(〇2-1):出場なし
コスタリカ戦(●0-1):先発出場・後半17分までプレー
スペイン戦(2-1):出場なし
クロアチア戦(●1-1/1PK3):出場なし
今大会通算:1試合0得点0アシスト

「酒井の代役としてプレーしたコスタリカ戦で62分間のプレーにとどまり、その後チームも3バックにシステムを変えました。W杯直前のカナダ戦で決勝PKを献上して、不安を抱えたまま入った大会だったので、周囲の見る目も厳しくなるのは致し方ないところがあります。酒井に匹敵するようなパフォーマンスをしていれば、また違った結果になったかもしれない。山根の良さは出し切れずに終わってしまったのは残念です」

■板倉 滉(ボルシアMG) 6.0点
ドイツ戦(〇2-1):フル出場
コスタリカ戦(●0-1):フル出場
スペイン戦(2-1):フル出場
クロアチア戦(●1-1/1PK3):ベンチ外
今大会通算:3試合0得点0アシスト

「谷口のパフォーマンスが良く、冨安が間に合ったこともあって大きな痛手にはならなかったですけど、クロアチア戦の累積警告による出場停止はもったいなかった。9月に左膝内側靭帯を部分断裂して、W杯出場も危ぶまれたなかで、よくここまでやってくれたというのが一番の感想です。世界的にも、もっと評価されていい選手だと思います」

■冨安健洋(アーセナル) 6.0点
ドイツ戦(〇2-1):後半開始から途中出場
コスタリカ戦(●0-1):出場なし
スペイン戦(2-1):後半23分から途中出場
クロアチア戦(●1-1/1PK3):フル出場
今大会通算:3試合0得点0アシスト

「冨安への期待値は、守備陣では一番というくらい高いです。だからこそ、コンディションに不安を抱えることは、マイナス査定になってしまう。それでも、右ウイングバックでの起用に応えたスペイン戦は、さすがだなと思いました。冨安が絶好調だったら、もっと面白い大会になっていたと思うと、残念なところはありますが、最低限の仕事はこなしたと思います」

■伊藤洋輝(シュツットガルト) 4.5点
ドイツ戦(〇2-1):出場なし
コスタリカ戦(●0-1):後半開始から途中出場
スペイン戦(2-1):出場なし
クロアチア戦(●1-1/1PK3):出場なし
今大会通算:1試合0得点0アシスト

「コスタリカ戦の出来が良くなかったからこそ、スペイン戦で谷口を使うという決断に至ったと思います。3バックの一角、4バックの左サイドバック、センターバックと整理しきれない部分があったかもしれませんが、どうしても消極的なプレーが印象に残ってしまいました。大事な試合で不完全燃焼に終わり、評価もガクっと落ちてしまった気がします」

権田は守護神として全4試合で奮闘

<GK>
■権田修一(清水エスパルス) 6.5点
ドイツ戦(〇2-1):フル出場
コスタリカ戦(●0-1):フル出場
スペイン戦(2-1):フル出場
クロアチア戦(●1-1/1PK3):フル出場
今大会通算:4試合4失点

「ドイツ戦でいきなりPKを献上して、波乱のスタートでした。そこから立て直したメンタルの強さは見事だし、守護神としてチームを支えたのは見事だと思います。クロアチア戦も結果的には負けてしまいましたが、権田の経験と熱いプレーは必要なピースでした」

■川島永嗣(ストラスブール) 評価なし
ドイツ戦(〇2-1):出場なし
コスタリカ戦(●0-1):出場なし
スペイン戦(2-1):出場なし
クロアチア戦(●1-1/1PK3):出場なし
今大会通算:――

「GKに限らずですが、最年長ですべてを知り尽くしてる男がいるのは、チームにとって大きかったはずです。クロアチア戦後に浮かべた涙を見ても、最後まで戦っていましたし、我々が見ることができない部分でも、声を出して周囲を引っ張っていたと思います」

■シュミット・ダニエル(シント=トロイデン) 評価なし
ドイツ戦(〇2-1):出場なし
コスタリカ戦(●0-1):出場なし
スペイン戦(2-1):出場なし
クロアチア戦(●1-1/1PK3):出場なし
今大会通算:――

「権田とのレギュラー争いは、紙一重の差だったと思います。結果的に1試合も出場できなかったわけで、少なからずフラストレーションもあったはずですが、ライバルの権田のことを盛り上げていた1人でした。権田もそんなシュミットに救われたところがあったでしょう」

<監督>
■森保 一 6.0点

「日本人らしい監督の代表格。システムや選手起用に関してW杯前は散々言われましたが、いざ大会が始まると交代やシステム変更もスムーズだった。しかも、あのドイツとスペインに勝って、“死の組”と言われたグループを突破したわけですから、評価されていい仕事ぶりだったと思います」(FOOTBALL ZONE編集部)