劇的な展開が続き、最後はアルゼンチンがPK戦で勝利

 カタール・ワールドカップ(W杯)の準々決勝で、アルゼンチン代表が現地時間12月9日にオランダ代表と対戦し、PK戦の末に準決勝へと進出した。

 このカードは1978年のアルゼンチン初優勝の際の決勝戦や、1998年フランスW杯の準々決勝、2014年ブラジルW杯の準決勝を強豪対決として名勝負を繰り広げてきた顔合わせ。アルゼンチンのリオネル・スカローニ監督が44歳、オランダのルイス・ファン・ハール監督が70歳で、今大会の最年少監督と最年長監督の対戦という話題もあった。

 オランダがここまでの勝ち上がりで見せてきた5バックをベースに相手のスペースを消したところから押し上げていく戦術を続けるなか、アルゼンチンはこれまでの4バックではなく5バックでのマッチアップを選択。局面での激しいバトルが見られる試合になった。

 そのゲームを動かしたのは、システムの中でもフリーマンのように動くアルゼンチンのエースで主将、FWリオネル・メッシだった。前半35分、タッチライン側からのパスを受けると相手のタイミングを外しながら中央へターン。さらに前方へドリブルしながら緩急をつけて相手DFナサン・アケとの距離を作ると、中央へ走り込む味方をおとりにしてアウトサイドから斜めに切れ込むDFナウエル・モリーナへ絶妙なスルーパス。これを受けたモリーナも飛び出してくるGKアンドリース・ノッペルトをかわすように右足アウトサイドで難しい1対1を決め、アルゼンチンが1-0と先制した。

 後半に入るとオランダは選手交代を行ったものの、逆にアルゼンチンの効率いい試合運びが際立った。メッシのゴール角をかすめる直接フリーキックなどもあるなかで後半25分過ぎ、MFマルコス・アクーニャが左サイドから進出するとオランダはDFデンゼル・ダンフリースが痛恨のファウル。これがペナルティーエリア内での反則となりPKの判定に。これをメッシが冷静にゴール右へ決め、アルゼンチンが2-0とリードを広げた。

 2点ビハインドのオランダはエースFWメンフィス・デパイを下げてFWボウト・ベグホルストを投入するなど、高さのある選手をターゲットにしたクロス戦術にシフト。アルゼンチンの弱点を狙いにかかり、後半38分に右サイドからのシンプルなクロスをベグホルストが頭で叩いて1点を返した。残り時間もクロスを多用してゴールに迫ったオランダはアディショナルタイム10分の終了間際、ゴール前のフリーキックを直接狙わずにジャンプする壁のすぐ横にグラウンダーのパス。それをベグホルストが蹴り込んで、土壇場で2-2に追いついて延長戦に持ち込んだ。

 延長戦はゲーム展開が少し落ち着き、高さ重視の構成にしたオランダがボールをつなぐのに苦労する場面も増えた。アルゼンチンは延長後半に切り札のMFアンヘル・ディ・マリアを入れてから活性化したが、決勝点を奪うには至らず、試合はPK戦へともつれ込んだ。

 PK戦は先攻のオランダが1本目のDFフィルジル・ファン・ダイクと2本目のFWスティーブン・ベルグハイスがGKエミリアーノ・マルティネスにセーブされた。後攻のアルゼンチンは4人目のMFエンソ・フェルナンデスが枠外に外したものの、4人が決めてPK4-3で勝利した。アルゼンチンは準決勝で、ブラジル代表をPK戦の末に破ったクロアチア代表と対戦する。(FOOTBALL ZONE編集部)