「ビールがなくても問題ない」「飲める場所はあるし…」などの声が上がる

 いよいよベスト4が出揃ったカタール・ワールドカップ(W杯)。今回、中東で初めて開催されたW杯では、スタジアムでのアルコール類の販売が禁止された。直前までは、大会の公式スポンサーであるバドワイザーのビールが販売されることとなっていたが、開幕2日前になって突如として決定が覆った。

「サッカー」、「ビール」という2つの言葉から連想される国といえば、ドイツ、そしてイングランドだろう。プレミアリーグでは試合前からファンがパブに集って酒をあおり、そのままスタジアムに行き、試合後に再び飲むという光景も珍しくない。しかし、そうした彼らの日常的な様子を今回のW杯では見られなかった。

 実際のところ、イングランドのファンはどう感じているのか。フランスとの準々決勝を前にイングランド人10人に話を聞いたところ、意外なことに「ビールがなくて困る!」と訴える人は、2人しかいなかった。飲酒が禁止されているイスラム教国であるカタールでの開催ということもあり、すでに覚悟していた人が多かったのかもしれない。

 日本で開催されたラグビーW杯の決勝で知り合ったリーズファンのサトシさんに「元気にしているよ!」というメッセージを伝えることを条件に、取材に応じてくれたブライアンさんは、大会公式飲料のコカ・コーラを手にしていた。「普段はビールを飲んでいるのか?」と聞くと「僕はサッカーを楽しむためにビールは必要ないよ。イングランド人がビールを常に必要としているというのは誤解だ。もっとも、飲めるなら22時からの試合であれば、13時から8時間は飲む。でも、ビールがなくても問題ない。終わってからは明け方3時まで飲むだろうけどね」と言って、ガハハと笑った。

 トッテナムのファンだというグレッグさんも、「ビールがないけれども、飲める場所はあるし、試合後はそこに行くから問題ないよ」と、完全な禁酒ではないことから、大きな問題ではないとした。

 ビールがなくても困らないと語っていた彼らのほとんどが、1966年大会以来となるイングランドの2度目のW杯優勝を信じていた。しかし、フランス代表との激闘は、エースのFWハリー・ケインが2本目のPKを外したこともあり、1-2で敗れることに。スタジアムでビールを飲めなかった彼らは、試合後、明け方まで苦いビールを流し込んだことだろう。(FOOTBALL ZONE特派・河合 拓 / Taku Kawai)