板倉滉は最後の瞬間を、スタンドで迎えた。カタール・ワールドカップのラウンド16、クロアチア戦では出場停止となり、仲間に声援を送る立場になった。それでも、いつも笑顔の陽性なキャラクターとシビアな守備で、グループステージ首位突破の立役者だった。

上写真＝板倉滉はドイツを破る浅野拓磨の逆転ゴールをアシスト！（写真◎Getty Images）

■板倉滉カタール・ワールドカップ出場記録
・11月23日 グループE第1戦／○2-1ドイツ＝フル出場、1アシスト
・11月27日 グループE第2戦／●0-1コスタリカ＝フル出場
・12月1日 グループE第3戦／○2-1スペイン＝フル出場
・12月5日 ラウンド16／▲1-1（PK1-3）クロアチア＝出場停止

どんどん強くしていかないと

「いますぐにでも、もう1回戦いたい」

　板倉滉は初めてのワールドカップに、アル・ジャノブ・スタジアムのスタンドで別れを告げた。ラウンド16のクロアチア戦は警告の累積で出場停止。ピッチよりも高い場所から仲間に声援を送り、PK戦による敗退を見届けるしかなかった。

「最後にピッチに立っていなくて、終わった瞬間をスタンドから見ていたときも悔しかったですけど、4年後に絶対やってやるという気持ちに切り替わりました」

　9月中旬に左ヒザ内側側副靱帯の部分断裂という重傷を負ったものの、大会に間に合わせた…だけではなかった。グループステージ3試合すべてにフル出場。守備の要として、首位突破の礎になった。4バックと5バックを使いこなし、タフに守った。代償としてコスタリカ戦、スペイン戦でそれぞれ警告を受けたが、歴史的勝利を2度も達成したのはそのハードな守備があってこそ。

「まずはドイツ、スペインに対して試合に勝てたこと。もちろん内容では、自分たちがやりたいこととは違いましたし、非常に苦しい試合展開の中で90分やっていましたけど、ああいう状況でも勝ち切れるというところは日本の良さでもあると思う」

　ドイツ戦、コスタリカ戦では4バックでスタートし、後半に5バックに移行した。スペイン戦、クロアチア戦では最初から5バックで守った。ワールドカップ最終予選とは異なる戦いを採り入れながら2勝したことで、堂々と次のステップに進める。

「だからと言ってここから4年間、あれをするかと言ったらそれも違う。ここから4年間、次のことにトライするし、どういうふうにこれから日本がやっていかないといけないかは考えてやらないといけない。ただ今回、割り切って戦った上でこの結果が出せているところは日本の強さ。そこは自信を持っていい」

　極端に針を振る威勢の良さとは少し違う。達成したことをベースにして生かしながら、次の高みに進むという、極めて現実的で合理的で冷静な視座を持っている。それは、ドイツのクラブでの日常を送るからこその冷徹さとも言える。

　それを、もう少し別な言葉でも表現している。

「今回みたいに割り切ることで結果は出せているので、それは良かったと思う。もちろん、このサッカーをずっとしたいわけではなく、自分たちが優位に試合を進めていきたい思いは間違いなくあります。ただ、苦しい時間はこれからの試合で必ずあって、そのときにここでできたぞという自信があれば、そこから変えられるオプションもあると思うので、すごく大事になってくるかなと思います」

　守備の時間が長い戦いで結果が出ないから別の戦いを選ぶのではなく、結果を残したから次へ、という順序はとても正しいように見える。その道すがらに、守り抜くのか、攻め抜くのか、の安易な二元論に陥る危険性も口にしている。

「日本のサッカーとして、もちろんボールを保持しながらやっていきたいというのはありますけど、そこはちゃんと相手を見ながらやる必要があるのかなと。逆にそこに囚われすぎてやるのも違うと思うし、今回みたいに割り切って結果を出せるときはあると思うので、そこはうまくやっていかないといけないと思います」

　次の4年は、それを証明するためにあるだろう。

「この大会を経験した選手が引っ張っていかなければいけないし、自分もそういう思いです。本当にチームの中心となって引っ張って、必ず次のワールドカップではこの壁を破りにくるぞという思いです」

　そのためにまず、自らのレベルを高める作業に没頭する。　

「ほかの国の選手のほうが大きな舞台を経験しているし、本当にちょっとのところですけど、日本よりそういうところで余裕があるかもしれない」

　スペイン戦では11分に左からのクロスに対して中央で巧みにマークを外されて背後を取られ、アルバロ・モラタにヘッドで先制ゴールを許している。

「個人で守れる強さを身につけないといけないと感じているし、そこは日々レベルアップしていくしかないというか、ゴールはありません。どんどん強くしていかないといけないなというのは感じています」

　ゴールなきゴールに向かって、板倉はもっと強くなる。

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