リオネル・メッシの最後のワールドカップ。悲願の優勝まで、ついにあと2勝まで迫ってきた。ベスト8での試合では、イエローカードが18枚も乱発しPK戦までもつれたオランダ代表との試合でもメッシは、1ゴール1アシストの活躍を見せた。

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そんなオランダ代表との死闘に勝ち、ピッチ上でアルゼンチン代表イレブンが喜びのシーンを爆発させるシーンと、試合終了後のミックスゾーンでメッシとオランダの選手との争いの仲裁に入るシーンに一人の元アルゼンチン代表の選手が映し出された。

その人は、セルヒオ・アグエロだ。

メッシの親友でもあるアグエロは、アンダー世代から共に代表で戦う親友だった。

前回大会のロシアワールドカップでアルゼンチンは、ベスト16でフランス代表に敗れるが、最後のゴールはメッシのパスからヘディングシュートを決めたのがアグエロだ。

二人は、年代別の代表から一緒にプレーし北京オリンピックでは金メダルを獲得している。アグエロが決めた代表通算41ゴールのうち実にメッシのアシストは11に昇る。

カタールワールドカップもメッシのパスをゴールするアグエロのプレーが期待されたがアグエロは、もうサッカー選手ではない。

共に果たすつもりだった悲願のワールドカップ優勝。親友の想いを胸にメッシは、5回目のワールドカップに挑んでいる。

しかし、メッシとアグエロは、当初それほど仲良くなかった。U-20でアルゼンチン代表が2人が同じルームメイトになることをアグエロはめちゃくちゃ喜んでいたが、メッシは不満げの表情をしていたらしい。

当時の監督フランシスコ・フェラ―ロ監督は、そんなメッシに「私のことを信じなさい。2日間試してそれでも嫌だったら変更すればいい」と納得させた。

その後、メッシとアグエロが離れることはなかった。メッシがアグエロ以外の選手との同部屋をNGにした報道もされるほど。

それは、こんなエピソードからも伺える。2019年のコパアメリカではメッシが自身のInstagramで「僕のルームメイトは相棒だ」とコメントし、一緒にアグエロの寝顔の写真を公開した。

親友の絆はプレー面でも大きな影響を与えて、メッシのパスからアグエロがゴールを決めるパターンがアルゼンチン代表での得点パターンとなっていた。そんなコンビがクラブチームでの共闘を希望し、2021年メッシとプレーするためにアグエロは、バルセロナに電撃移籍をする。

しかし、リーガの規定による契約問題によりメッシはパリ・サンジェルマンに移籍することになりクラブチームで、2人の2トップを組むことは叶わなかった。

悲しみに打ちひしがれたアグエロだが、ここから人生最大の不運が訪れる。アグエロは、バルセロナでの試合中に肺辺りの不快感を訴えて途中交代すると試合後に不整脈と診断される。当初は、3カ月での復帰予想といわれたが医師からの助言もあり現役引退を余儀なくされた。アグエロは、33歳で道半ばでの決断を下した。

アグエロの現役引退の発表を受け、メッシは自身のInstagramで苦楽を共にした親友への思いを綴り、セカンドキャリアへの成功を祈った。

「素晴らしい瞬間もそうでない瞬間もあった。しかし、そのどれもが、僕たちをどんどん親密なものにし、親友となった。そして、ピッチの外でもそれは続いていく。君をとても愛している。ピッチで一緒にいたこと。そして、代表チームで一緒にいたこと、僕は多くのことを恋しく思うだろう」

メッシとアグエロの二人は、我々の想像をはるかに超えた硬い絆で結ばれている。この2人が代表で見せたコンビネーションは。アルゼンチンだけではなく世界中の人々の心に強く刻まれているだろう。

そんなアグエロだが、引退後に行っている生配信にメッシや代表のチームメイトが登場した。

メッシ「 君とジオ(ロチェルソ)が恋しい。君たち2人はいつもここにいるよ」

チームメイトは、同じ目標に向かって日々努力をし、負けた時には共に涙を流す。そういった喜びや辛さ、悔しさを共有するからこそ国籍や文化を超えて素晴らしい関係性を築くことができる。

メッシ自身、最後のワールドカップでは、フォアザ・チームの姿勢が目立つ。勝負所の決定力など、個人の強さというより誰かの想いを背負った男の強さと言うべきか。それは、きっとアルゼンチンの国民であり、親友アグエロであり、もしかしたらディエゴ・マラドーナの想いを背負っているのかもしれない。

(ABEMA/FIFA ワールドカップ カタール 2022)