FIFAワールドカップ・カタール2022の準々決勝が12月11日(日本時間)に行われ、フランス代表がイングランド代表に2-1で勝利した。
前半17分、フランス代表のMFオーレリアン・チュアメニがペナルティアークの後方から右足でシュートを放ち、先制ゴールをゲット。後半7分にチュアメニが相手FWブカヨ・サカを自陣ペナルティエリア内で倒してしまい、ハリー・ケインにPKのチャンスを物にされたが、同33分にオリビエ・ジルーがアントワーヌ・グリーズマンの左サイドからのクロスにヘディングで合わせ、勝ち越しゴールを挙げた。同39分のケインによるこの試合2度目のPKは失敗に終わり、フランス代表が事なきを得ている。
フランス代表がイングランド代表のパスワークをいかに封じ、勝利を手繰り寄せたのか。ここではこの点を中心に解説する。
巧みだったアタッカー陣の立ち位置
最終ラインからパスを繋ごうとする基本布陣[4-1-2-3]のイングランド代表に対し、フランス代表がセンターサークル敵陣寄りの区域からプレスをかける展開がキックオフより続く。
イングランド代表のセンターバックがボールを保持するやいなや、キリアン・ムバッペ、ジルー、グリーズマンの3人が中央のレーンとハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の、左右の内側のレーン)に立ちはだかる。アドリアン・ラビオとチュアメニの2ボランチは、最終ライン付近へ降りてパスを捌こうとするジョーダン・ヘンダーソンやジュード・ベリンガムを時折追跡したものの、基本的にセンターサークル近辺で迎撃態勢を整えていた。
快足FWムバッペがカイル・ウォーカーに睨みをきかせ、ジルーもイングランド代表の右サイドへのパスコースを塞ぎながら相手センターバックや中盤の底デクラン・ライスにプレスをかけたため、同代表のパスワークは左サイドに限定されていく。フランス代表の右サイドハーフ、ウスマン・デンベレがルーク・ショーを、右サイドバックのジュール・クンデがフィル・フォーデンを捕捉したため、特に前半はイングランド代表のパスワークが手詰まりになっていた。
前半15分にもムバッペ、ジルー、グリーズマンが中央のレーンやハーフスペースに立ちはだかり、これによりウォーカーが縦パスを繰り出せず。ヘンダーソンが右サイドでウォーカーからのパスを受け、ハーフスペースに立っていたサカにボールを渡そうとすると、これをラビオがインターセプト。そのままラビオが敵陣ペナルティエリアまでボールを運んだことで、速攻に繋がった。フランス代表の中央封鎖守備が機能していた場面と言えるだろう。
自陣後方でゆっくりパスを回しながら相手選手を誘い出し、この瞬間にワンタッチパスや中・長距離のパスを繰り出して速攻を成立させるのが得意なイングランド代表だが、フランス代表があまりハイプレスを仕掛けなかったため、目論見通りの展開とはならず。闇雲なプレッシングを避け、中央のレーンやハーフスペースの封鎖、及び相手のパスワークをサイドに追いやることを徹底したレ・ブルーの作戦勝ちだった。
W杯連覇に向けてフランス代表が今後突き詰めるべきは、敵陣でのボールロスト時に素早く前述の守備隊形を整えることだろう。
イングランド代表が1度目のPKを獲得する直前、フランス代表は敵陣でボールを失っているが、ここではジルーの帰陣やムバッペによる左のハーフスペースの封鎖が遅れている。これによりイングランド代表のセンターバック、ジョン・ストーンズによるボール運搬を許し、最終的に右サイドのサカにボールが渡ってしまった。相手のビルドアップを停滞させるための守備は確立されているだけに、攻守の切り替えの遅れを無くせば、トロフィーに手が届くはずだ。