カタール・ワールドカップではベスト4が出揃い、現地時間12月13日に行なわれた準決勝のアルゼンチン対クロアチアは、3-0でアルゼンチンが勝利し、決勝に駒を進めた。リオネル・メッシを擁する南米の雄と黄金のトロフィーをかけて戦うのは? 本稿では、もう1つの準決勝、フランス対モロッコを展望する。試合は日本時間14日の28時にキックオフ予定だ。
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快進撃を続けるモロッコと前回王者のフランス。ここまで来ると、どちらがファイナルに進出しても相応しいが、過密日程での体力面を考えると、フランスの優位は動かない。基本的に固定のスタメンで戦ってきているが、モロッコよりも2日早く初戦を迎えたことや、グループステージの3試合目でターンオーバーできたことは大きい。
そして「世紀の大一番」として注目された準々決勝のイングランド戦(2-1)も、苦しい戦いではあったが、90分で試合を終わらせることができた。モロッコもポルトガル戦(1-0)は前半にユーセフ・エン=ネシリの得点で奪ったリードを守り切ったが、ここまで圧倒的な推進力で試合終盤の攻撃を引っ張ってきたジョーカーのワリド・シェディラはイエロー2枚で退場。フランス戦に出られない。また後半の早い時間に足を痛めて、担架で退いたCBの主力ロマン・サイスの状態も気になる。
ただ、元々ダークホースの立場からクロアチア、ベルギー、カナダと同居するG組を勝ち上がり、スペイン、ポルトガルを破って準決勝まで来たチームが満身創痍であるのは当たり前。むしろチームの勢いと一体感で、肉体的なダメージも忘れて前回王者に挑んでくるはず。
また、大会を通してモロッコのサポーターが多いが、開催国のカタールやサウジアラビア、同じ北アフリカのチュニジアなどが敗退するなかで、モロッコに「アラブ代表」として応援が集まるようになってきている。そうした後押しも味方しそうだ。
モロッコは徹底した堅守速攻で、引き込んで奪ったところからのカウンターの鋭さは今大会でも随一だ。現在はモロッコ人のワリド・レグラギ監督がチームをよくまとめているが、アフリカ予選からデュエルや縦に速い攻撃を植え付けたヴァヒッド・ハリルホジッチ元監督の戦い方はそのまま引き継がれている。キーマンはそのハリル解任で代表復帰したハキム・ジイェフで、多くの攻撃は右サイドに構える左利きのエースが起点になる。
フランスは初戦の前半に左SBのリュカ・エルナンデズが負傷、弟のテオ・エルナンデズが奮闘してきたが、イングランド戦では対面のブカヨ・サカに苦戦を強いられた。モロッコの鋭いカウンターからジイェフの仕掛けをテオが止め切れるかは、試合の大きなポイントになる。対人のスピード対応を考えて、ディディエ・デシャン監督はボランチが本職のエドゥアルド・カマビンガを起用する可能性もある。
ただし、大会が進むなかで、左のソフィアンヌ・ブファルやインサイドハーフのアゼディン・ウナヒ、セリム・アマラーといった選手がどんどん自信を付けており、もはやジイェフ頼みのチームではなくなっている。アタッカー陣を中盤の底から支えるソフィアン・アムラバトのボール回収力や正確なファーストパスはフランスにとっても厄介だ。
フランスの攻撃のキーマンは言うまでもなく、左サイドを主戦場とし、ここまで5得点のキリアン・エムバペだ。モロッコの右SBは超攻撃的なアシュラフ・ハキミで、ここのマッチアップは最大の注目ポイントになる。
これまでモロッコは短い攻撃時間のなかでも、ハキミの攻め上がりがジイェフの仕掛けと相まって、相手ディフェンスの脅威になってきた。やはりエムバペが相手になると、これまでのようには攻め上がれないかもしれない。
しかし、見方を変えればエムバペは前に攻め残る傾向が強いだけに、どこかでリスクを負って前に出て行くことで、モロッコの得点チャンスが大きく上がるかもしれない。
フランスはオリビエ・ジルー、モロッコはエン=ネシリという大型FWを擁していることもあり、ゴール前の攻防も激しくなりそうだが、フランスは攻め切れるか、モロッコは隙を突けるかという分かりやすい構図なので、そのなかで生じるデュエルや裏の取り合いなど、いろんな要素に注目して楽しんでほしい。
文●河治良幸
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