アルゼンチンが36年ぶりの優勝を飾って幕を閉じたカタール・ワールドカップ。開幕前から現地入りして決勝まで取材を続けたサッカーダイジェスト特派が、独自に大会ベストイレブンを選出する。
 
 今大会はドーハ圏内で集中開催されたとはいえ、グループリーグ中は日本代表の取材を優先していたため、中継映像には映らないシーンも確認できるスタジアム取材ができたのは計16試合。自分の目で直接見たゲームからセレクトしたこと、そしてもちろんタイプ的な好みが入ることを先にお断りしておく。
 
 まずGKは、準決勝を終えた段階では正直、日本戦やブラジル戦で見事なGKストップを見せたドミニク・リバコビッチ(クロアチア)が最も印象に残っていた。ただ、決勝ではオンプレー中とPK戦でエミリアーノ・マルティネス(アルゼンチン)がスーパーセーブを連発。このインパクトが鮮烈で、最終的には優勝国の守護神を選んだ。
 
 最終ラインは4バックで、SBは右がアシュラフ・ハキミ(モロッコ)、左がテオ・エルナンデズ(フランス)で鉄板。いずれも持ち前の攻撃力を発揮しながら、決して得意とは言えない守備対応も安定しており、トータルバランスが傑出していた。
 
 CBはまずヨシュコ・グバルディオル(クロアチア)が真っ先に思い浮かぶ。対人もカバーリングも一級品で、ビルドアップや持ち上がりも素晴らしかった。もう1人はチアゴ・シウバ(ブラジル)やダヨ・ウパメカノ(フランス)も悩んだが、最終的にはラファエル・ヴァランヌ(フランス)に決めた。相棒のウマメカノやイブライマ・コナテの方が派手で目立っただろうが、彼らが積極的に相手FWに当たりにいけたのは、ヴァランヌが細かいスライドで後方のスペースをしっかり埋めていたからだ。
 
 3枚の中盤はまず、ルカ・モドリッチ(クロアチア)が当確だ。テクニック、戦術眼、そして献身性と全てを併せ持ち、その働きぶりにはまさに感嘆。37歳ながら今も世界最高峰のMFであることを改めて証明した。同じくロドリゴ・デ・パウル(アルゼンチン)も攻守でインテンシティーを発揮しながら随所でテクニックを見せ、決勝のパフォーマンスも抜きん出ていた。
 
 アンカーはオーレリアン・チュアメニ(フランス)も迷ったが、最終的にはソフィラン・アムラバト(モロッコ)をチョイス。ヴェローナ時代から定評があったパスワークとハードな守備に加え、タイミングを心得た持ち上がりがとにかく効いていた。ボールをもらう前にフェイクを入れながらスッとフリーになる動きも印象深い。
 
 前線は、リオネル・メッシ(アルゼンチン)とキリアン・エムバペ(フランス)はどんな選者でもセレクトするはず。前者はFIFA選出の大会MVP、後者は8ゴールで得点王に輝いており、いずれも期待通り今大会の盛り上がりを引っ張った。決勝における2人のスーパーな活躍は永遠に語り草となるだろう。
 
 もう1人はいずれも4ゴールのオリビエ・ジルー(フランス)とフリアン・アルバレス(アルゼンチン)も思い浮かんだが、アントワーヌ・グリーズマン(フランス)を外すわけにはいかない。イングランド戦のアシストに代表される攻撃面のクオリティーはもちろん、エムバペの分までジルーと並んで担った守備タスクを十二分にこなした。記者席から見ていてもその運動量と献身性には感動すら覚えた。
 
 賛否両論はあるだろうが、現地カタールでW杯取材を続けた中で個人的に最も印象に残ったプレーヤーは、間違いなくこの11人だ。
 
取材・文●白鳥大知(サッカーダイジェスト特派)

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