カタール・ワールドカップのグループステージ最終戦でポルトガルを下し、劇的にラウンド16進出を決めた韓国代表。そこに至るまでの小さな布石を打っていたのは、ほかならぬパウロ・ベント監督だった。

 現地12月15日、ワールドカップを戦った韓国代表DFのキム・ジンスが韓国放送局『SBS』のラジオ番組に出演。グループステージ第2戦のガーナ戦を韓国は2-3で落としたが、大きな話題となったのが、試合終了後に起こったベント監督の一発退場劇だった。これについて、かつてアルビレックス新潟でもプレーした左SBは「すべてに理由があった」と話し、舞台裏を明かしたのだ。

 ガーナ戦、すでに時計の針はアディショナルタイムの5分を過ぎていた。1点を追う韓国はDFクォン・ギョンウォンが豪快なミドルシュートを放ち、その球がガーナ選手に当たってCKを得る。だが、英国出身のアンソニー・テイラー主審はその機会を与えず、無情にもタイムアップの笛が吹かれた。

 抗議すべく主審に激しく詰め寄ったのが、ソン・フンミン、イ・ガンイン、そしてキム・ヨングォンの3選手。そこに猛然とベンチから飛び出して割って入ったのが、ポルトガル人指揮官だった。執拗にテイラー主審に抗議を続けた結果、最後はレッドカードを提示され、第3戦のベンチ入りが禁止されてしまう。

 世界に波紋を広げたシーンだが、キム・ジンスは「監督の行動は選手たちを守るためだった。彼らがカードをもらわないように、自分が退場となったんだ」と述べ、「どうしてあんなに怒ったのか、スタジアムでは分からなかった。あんな光景を観るのは初めてだったからね。正直驚いたけど、よく考えてみれば、すべてに理由があったんだ」と続けた。

 韓国メディア『OSEN』は、「ガーナ戦でキム・ヨングォンはイエローカードをもらっていた。さらに一枚食らえば退場となり、大事なポルトガル戦に出場できない。ベント監督はそれを防いだのである」と説明。そのうえで、「テイラー主審はキム・ヨングォンを見つめながら、その手は胸のポケットにかかっていた。ベント監督は関心を自分に引き寄せ、身代わりに退場となったのだ。まさに“神の行為”と言うべきだろう」と称えた。

 出場停止を免れたキム・ヨングォンは、ベント監督がスタンドから見守るなか、ポルトガル戦に先発出場。CKから先制点を決めて、ドラマチックな逆転勝利に導く立役者のひとりとなった。
 
 キム・ジンスは「ベント監督はグラウンドの中と外をきっちり分ける人物で、本当に学ぶべき点が多かった」と振り返り、「チームが解散となる際に彼は、『これまで指導してきた選手たちの中で、君たちのことがもっとも誇らしい。一緒に仕事ができて幸せだった』と言ってくれた。その言葉を聞いて、みんな大泣きしたよ」と、別れ際のエピソードを紹介した。

 韓国代表の外国籍監督として最長となる、4年4か月の在任期間を終えたベント監督。韓国国内では次期代表監督の人選を巡って、早くも報道合戦がヒートアップしている。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

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