前半は1本もシュートを打つことができなかった

FIFAワールドカップ・カタール大会はPK戦の末、アルゼンチンの優勝となった。W杯を制するのは、1986年メキシコ大会以来のこととなる。

前評判ではフランス優勢とされていたが、前半は完全にアルゼンチンがゲームを支配した。ボールを保持してゲームの主導権を握り、切り替えの速さを生かして相手に時間を与えない。そういったこともあってフランスは前半1本もシュートを打てなかった。

今大会のフランスは攻撃力に定評のあるチームであり、決勝までに12ゴールを奪っていた。そんなフランスをアルゼンチンは前半、完封したのだ。

ただ後半半ばからフランスが息を吹き返し始める。米『ESPN』によると、フランスがこの日、最初のシュートを放ったのは71分だったという。

前半にディディエ・デシャン監督はウスマン・デンベレとオリヴィエ・ジルーを交代させている。悪手かと思われたが、後半からはランダル・コロ・ムアニとマルクス・テュラムが前線で躍動し始める。両者ともにサイズのあるFWで、テュラムに至っては190cmを超えている。さらにドリブルで良さを発揮するキングスレイ・コマンを投入。前線はキリアン・ムバッペ含めて4トップのようになる場面もあり、フランスが攻勢を強める。

すると、フランスがPKのチャンスを得る。キッカーのムバッペが落ち着いて決め、2-1と点差を縮める。フランスの勢いは止まらず、その1分後にはまたもやムバッペがゴールを奪い、2分間で同点に追い付いた。その後はフランスの押せ押せムードとなり、アルゼンチンゴールに襲い掛かる。

よりオープンな展開になれば、前線をリフレッシュしたフランスに分があった。前述したコロ・ムアニやテュラム、コマンのことだ。ムバッペは先発から出場しているが、延長戦に突入してもドリブルのキレが落ちない怪物ぶりを披露している。

PK戦の末、フランスは敗れたが、前半の絶望的な状態からよく立て直したといえる。後半もPK獲得までは前半とほぼ変わらない低調な内容であり、前半よりもひどい場面もあった。

驚異的な粘り強さで、最終的には3-3にまで追い付いたフランス。カリム・ベンゼマやクリストファー・エンクンク、エンゴロ・カンテと主力の負傷が悔やまれるところであり、2年後のEURO2024では優勝に期待したい。