アルゼンチンの優勝で幕を閉じた2022FIFAワールドカップカタール(カタールW杯)。異例の冬季開催であり、初の中東開催と、なにかと注目を集めた。アフリカ勢として初のベスト4入りを果たしたのが、今大会随一のダークホース、モロッコだ。

グループリーグでは、ベルギー、クロアチアという前回ロシアW杯の上位勢に囲まれながらも、堅守を武器に見事1位通過をしたモロッコ。続く決勝トーナメントでは、スペイン、ポルトガルとこちらも強国を撃破してベスト4まで駆け上がった。残念ながら準決勝でフランスに敗れ、3位決定戦でもクロアチアに敗れたことでメダル獲得とはならなかったが、その躍進ぶりは疑う余地がない。

モロッコと言えば、W杯本大会直前となる今年の8月に、前日本代表監督としても知られるヴァヒド・ハリルホジッチ監督を解任。新体制に移行して間もない中での本戦となっていた。そんな難しいチーム状態の中にあっても、ハリルホジッチ監督体制下では代表から遠ざかっていたハキム・ツィエク(チェルシー)ら欧州で高い評価を得ている選手たちが躍動。モロッコの大躍進に大きく貢献した。

活躍したのは必ずしもビッグクラブに所属している選手だけではない。ここでは、W杯での活躍により評価の急上昇もありうるモロッコの選手たちを5人紹介していく。


躍進のモロッコ代表、W杯ベスト4の功労者5選
モロッコ代表 ソフィアン・アムラバト 写真:Getty Images

ソフィアン・アムラバト(フィオレンティーナ)

チームの心臓として攻守に躍動したMFソフィアン・アムラバト。豊富な運動量とボール奪取の能力に優れ、延長まで戦った試合でも終盤まで高いインテンシティを保ち続け、チームの勝利に大きく貢献した。スペイン戦でABEMAの解説に入っていた中山雅史氏も、アムラバトに対して「お気に入り」と発言するなど運動量を高く評価している。

そして何よりアムラバトのボールホルダーやセカンドボールへの寄せの速さと厳しさは、相手選手からすればかなり嫌な存在だったに違いない。実際に準決勝では、フランスのエースFWキリアン・ムバッペ(パリ・サンジェルマン)に対しても負けないほどのスピードで追いつき、攻撃の芽を摘むシーンも見せてくれた。26歳と絶頂期を迎えているアムラバトに、W杯後はどんな移籍のニュースが出るのか、今から楽しみな選手の1人だ。


躍進のモロッコ代表、W杯ベスト4の功労者5選
モロッコ代表 FWユセフ・エン=ネシリ 写真:Getty Images

ユセフ・エン=ネシリ(セビージャ)

カタールW杯を通して2得点を挙げ、モロッコの躍進に貢献したFWユセフ・エン=ネシリ。印象深いのはやはりポルトガル戦で見せた打点の高いヘディングでのゴールだ。相手DFのはるか上から叩く豪快なゴールであったことはもちろん、このゴールがアフリカ勢初のベスト4につながったことから、歴史的な一発だったと言える。ゴールの他にも、長身を生かしたボールキープで前線の起点となるなど強力な両サイドを生かす軸としても活躍。まだ25歳と発展途上なだけに、次回2026年W杯も考えればさらに手を付けられない存在になることも大いにありうる。

躍進のモロッコ代表、W杯ベスト4の功労者5選
モロッコ代表 MFアゼディン・ウナヒ 写真:Getty Images

アゼディン・ウナヒ(アンジェ)

まだ22歳ながらも、MFアゼディン・ウナヒは今カタールW杯でポテンシャルの高さを示した選手の1人だ。相手DFの飛び込みづらい細やかなボールタッチのドリブルで敵陣深くに侵入し、チャンスを作り出せる能力はまさに脅威。ゴール、アシストといった数字に残る結果は残せなかったが、ウナヒの存在は間違いなくモロッコの攻撃を活性化させた一因と言える。また、運動量もウナヒの魅力の1つ。試合終盤になっても、攻撃はもちろんプレスも決してサボらない。その存在感は、移籍マーケットで争奪戦が予想できるほど大きなものと言えるだろう。まだ若い新星の去就には今後も注目していきたい。


躍進のモロッコ代表、W杯ベスト4の功労者5選
モロッコ代表 GKヤシン・ブヌ 写真:Getty Images

ヤシン・ブヌ(セビージャ)

数多くのPKストップを含むスーパーセーブが見られたカタールW杯。その中でも抜群の安定感でモロッコの堅守を支えたGKヤシン・ブヌは、大会随一のGKと言えるのではないだろうか。グループリーグでは強力なアタッカー陣を擁する3ヵ国(クロアチア、ベルギー、カナダ)を相手にしながら、失点はわずかに1。加えて決勝トーナメント1回戦ではスペインの猛攻を0に抑え、PK戦でも2本を止めて見せた。昨2021/22シーズンは所属するセビージャで、シーズンにおいて1試合あたりの平均失点が最も少ないGKに与えられるサモラ賞を受賞している。実績もさることながら、今大会の大舞台で見せた安定感があれば、ビッグクラブから声がかかってもなんら不思議はない。


躍進のモロッコ代表、W杯ベスト4の功労者5選
モロッコ代表 MFソフィアン・ブファル 写真:Getty Images

ソフィアン・ブファル(アンジェ)

モロッコの攻撃と言えば、右サイドのFWハキム・ツィエクとDFアシュラフ・ハキミの名が挙がる。しかし、カタールW杯では主に左サイドを主戦場としたFWソフィアン・ブファルも負けず劣らずの活躍を見せていた。ソフトかつ細かいボールタッチで敵陣を駆けあがり、連携やカットインで崩す。強国相手でも臆することなく突破を図り、実際にチャンスシーンにつなげていたことからも、能力の高さとその効果のほどが窺い知れる。29歳とベテランと呼ばれる年齢になりつつあるが、今大会の活躍を見ればまだまだ衰えの兆しが見えないのは明らか。次のW杯では国を背負う選手の1人として、さらなる活躍と飛躍に期待したい。