カタール・ワールドカップ(W杯)を戦った日本代表の長友佑都と遠藤航が12月21日、新刊(長友・著「メンタルモンスターになる」、遠藤・著「DUEL 世界に勝つために『最適解』を探し続けろ」)の発売を記念し、トークイベントを実施した。

 長友は「ブラボー」と叫びながら登場。カタールW杯期間中に発し、今や自身の代名詞となりつつあるキラーフレーズを惜しげもなく披露した。

 日本に帰国し、サッカー熱を強く感じているようで、冒頭「行く前はかなり寂しい感じだった。空港にもそこまで(人が)いなくて。帰ってきたらすごいブラボーとたくさんの人に言われて。すごく嬉しい」と笑みを見せた。

 一方、遠藤は他のメンバーたちから遅れて帰国したという。「僕は家族で帰って、出迎えがなかったので寂しかった」と笑いを誘いつつ、「メディアにちょっと出たりして、やはりすごい日本は盛り上がったんだなあというのを結構実感できた」と誇らしげに語った。

 2人はその後、MCの質問に答えるなかで、息の合ったトークを披露した。以下は主な一問一答だ。
 
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――W杯では色々なモンスターが現われました。キリアン・エムバペ、ネイマールはすごかったですね。

長友
「エムバペとはフランスのマルセイユ時代に対戦していた。ネイマールもそう。ネイマールとは代表でも対戦した。まあスピードがびっくりするくらいあって、陸上の短距離の選手が、サッカーの技術が上手くなったみたいな感じ。本当に衝撃的なスピードを持っていてびっくりした」

――ワールドカップでモンスターと言われるくらいの選手になると、何が違うのでしょうか?

長友
「まず圧倒的な自信を持っているところ。かかってこいよという感じ。それくらい余裕があるところと、何といってもスピード。これは圧倒的な違いがある」
 
――アルゼンチン対フランスの決勝はすごい試合でした。

長友
「決勝戦は衝撃を受けた。これまでの人生の中で1番心を打たれたというか、衝撃を受けた試合だったかなと自分の中で思っている」

遠藤
「PK戦は見れなくて。ちょうど空港に向かっている途中で。ずっと見ていて延長終わった瞬間にちょうど空港に着いて、チェックインしなきゃいけなくて。PK戦、1番良いところを見れないという。空港にいる人たちがこうやって(スマホで)PK戦を見ているのをちょっと覗きながらチェックインするっていう、そんな感じだった」

――遠藤さんは、今大会で「この選手すごかったな」というような選手はいますか。

「(リオネル・)メッシはもちろんすごかったけど、対戦相手で言うと、クロアチアの(マテオ・)コバチッチ選手とか。彼のバランスの取れたプレースタイルはすごく好きになった。守備もしっかりできるし、球際も戦える。ボールを持った時の前への推進力だったりとか、そこら辺はすごい。今の中盤の選手には欠かせないものを持っている選手だなと」

――長友さんは、コバチッチ選手とインテル時代にチームメイトでしたね。

「コバチッチは当時18歳か19歳でインテルに来たけど、その時から圧倒的な能力があった。あっという間にステップアップして、今でもチェルシーというビッグクラブで活躍している。能力の片鱗はしっかり見せていた」
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――遠藤さんがデュエルを意識し始めたのはいつぐらいからですか?

「元々1対1では負けないというか、負けたくないと思ってプレーはしていたけど、やっぱり海外に行ってからより1対1の重要性だったりとか(を感じた)。僕はブンデスに行ってから、『よりボールを奪う選手になるにはどうしたらいいか』みたいなことを考えながらプレーをしていたので、そこら辺は海外に行ってから意識が高くなったと思う。

 もちろんシンプルに当たった強さも大事だと思うけど、僕みたいな選手が1対1で勝つにはある程度、駆け引きだったりとか、賢さというか、クレバーさみたいなところも大事だったりはするので。僕はその日本人らしさを活かしながら、もちろん強さのベースを上げられるようにみたいなことはやっていた」

――長友さんから見て、遠藤さんの1対1のデュエルはどうですか?

「やっぱりデュエルとなると球際の部分をみんな意識すると思うけど、僕がピッチで見ていて『航すごいな』と感じるのは、もちろん当たるところもすごいけど、やっぱり読みとポジショニング。これが圧倒的にすごい。ポジショニングが良ければ、デュエルに勝つ確率も上がるので。0.1秒とかの差で遅れが出るとやられる世界。その0.1秒をモノにできるという部分は航の強さ」
 
――めちゃくちゃ褒められています。

「嬉しいです(笑)。ありがとうございます」

――ドイツ戦では、遠藤さんがブンデスリーガでずっと対戦しているセルジュ・ニャブリ選手と対戦しました。

遠藤
「ニャブリは消えていた。それはもう本当に佑都君が上手く彼の良さを消していたというところで。彼の良さってドリブルで前に運ぶ推進力だったりとか、カットインもできるし、結構前を向かせたら何でもできるというイメージ。その選手に対して、しっかり寄せるところもそうだし、味方と上手く連係しながら彼の良さを消していたというところは……。僕は右側にいたので左側は佑都さんに任せてプレーしていた」

――遠藤さんの話を聞いて、長友さんはどうですか?

「ブラボー(笑)。でもニャブリ選手は僕も本当に1000回くらい彼のプレーを見て臨んだ。ドリブルも上手いし、右も左もシュートが上手いし。ドイツ戦の前半はニャブリ選手にボールが渡って、1対1ができると思ってもすぐ横に(トーマス・)ミュラーがいたりとか、(ジャマル・)ムシアラが来たりとか。なかなか1対1を作らせてもらえなかった。そこはやっぱりドイツ代表のすごさと、僕が望んでくれることをやらしてくれないニャブリのすごさ」
 
――日本人が1対1で持っておくべきメンタリティはありますか?

遠藤
「プレー中は『自分は日本人じゃない』と思ったほうがいい。日本人はフィジカル的に海外の選手に比べて分が悪いとか、勝てないとか、なんとなくそういうイメージが一般論としてある。それって本当にそうなのか、みたいなところから個人的には始まって。意外と100でぶつかってみてもボールを奪えるということに気付き始めると、それが良き成功体験になって、その積み重ねでさらにボールを奪える選手になるみたいな感じはある。

 日本人の良さであるクレバーさやポジショニングの良さは忘れずにプレーしなきゃいけないと思う。だけど、ボールを刈り取るとか奪いに行くみたいなのに関しては、あんまりこう自分が日本人だと思わずに、とにかく外国人の感覚で突っ込んでいくみたいな、そういう気持ちの持ちようは大事かな」
 
――憑依で言えば、長友さんもよくそうした話はしますよね。

「190センチくらいの選手がやっぱり多くて。ただ、ピッチに入ると自分のほうが大きく見える。見下ろしているくらいの感じで、超人ハルクになったんじゃないかというくらいに。だけど、後で自分の映像を見ると『ちっちぇ』と思って(笑)。そこでショックを受ける毎日。でもそれくらい強い気持ちで臨むので、だから大きくなった感覚になるんじゃないかと」

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 イベントの最後の最後には、ブンデスリーガで2年連続デュエル勝利数1位に輝いている、“デュエルモンスター”が会場をドッと沸かせる場面があった。

 MCがファンの方々に「SNSとかで感想を載せて頂ければ。『#デュエモン』とかどうですか?」と拡散を呼び掛けると、遠藤はすかさず「カードゲームみたいになっちゃう」とツッコミ。そして「全然そのいじりはOKなんですけど。『#遊戯王』でも大丈夫です」と全力で乗っかったのだ。

 60分のトークショーは大爆笑で幕を閉じた。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)