【専門家の目|栗原勇蔵】GKは全員30代の今大会から20代中心の顔ぶれへ

 森保一監督率いる日本代表は、カタール・ワールドカップ(W杯)でドイツ代表とスペイン代表を破る大金星を挙げ、アジア勢では初となる2大会連続でベスト16に駒を進めた。決勝トーナメント1回戦でも最終的に3位に輝くクロアチア代表相手に、PK戦までもつれ込む健闘ぶりを見せた一方、目標に掲げていたベスト8にはまたしても手が届かなかった。次なる戦いの場は2026年のカナダ、メキシコ、アメリカの3か国共催大会。元日本代表DF栗原勇蔵氏に4年後の日本代表メンバーを占ってもらった。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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【GK】
 カタールW杯ではGKが川島永嗣(ストラスブール/39歳)、権田修一(清水エスパルス/33歳)、シュミット・ダニエル(シント=トロイデン/30歳)と全員が30歳オーバーの顔ぶれでした。メンタル面のリーダーだった川島が代表引退を示唆、レギュラーだった権田も4年後は現役かも分からない年齢です。シュミット・ダニエルは残るかもしれませんが、大きく入れ替わるポジションの1つだと思います。

 期待したい選手の1人が、今年7月のE-1選手権でA代表デビューを飾った鈴木彩艶(浦和レッズ/20歳)です。今季はベテラン西川周作(36歳)の牙城を崩せませんでしたが、身体能力を含めたポテンシャルを考えれば、4年後には海外挑戦をしていてもおかしくない。スケールの大きさ的にも、日本が世界と渡り合ううえで対応してきてほしい逸材です。

 そのほかでは、A代表招集歴がある谷晃生(湘南ベルマーレ/22歳)、大迫敬介(サンフレッチェ広島/23歳)の東京五輪世代、あるいは今季Jリーグのベストイレブンに輝いた高丘陽平(横浜F・マリノス/26歳)も、サッカー界的に足元も備えたGKの必要性がさらに高まっていれば、自然と名前が挙がるかもしれません。

中盤に中井卓大が食い込んでくると面白い存在に

【DF】
 最終ラインも冨安健洋(アーセナル/24歳)を除くと、酒井宏樹(浦和レッズ/32歳)、吉田麻也(シャルケ/34歳)、長友佑都(FC東京/36歳)とレギュラーが高齢化していました。センターバック(CB)は、冨安と板倉滉(ボルシアMG/25歳)が軸になっていくのは間違いないでしょう。

 冨安と板倉が欠場した際の穴を埋めた谷口彰悟(川崎→未定/31歳)、サイドバックにも対応できる伊藤洋輝(シュツットガルト/23歳)もいますが、新戦力が出てきてほしいところです。身長187センチの高さとフィジカルの強さを備えながらも、スピード、アジリティーを兼ね備えたチェイス・アンリ(シュツットガルトⅡ/18歳)がどこまで伸びるか。ぜひA代表に上り詰めてほしい期待の選手です。

 サイドバック(SB)は正直、人材不足の印象です。左サイドは、今大会直前にアキレス腱の負傷で辞退を余儀なくされた中山雄太(ハダースフィールド・タウン/25歳)は“リベンジ”の思いが強いと思います。右サイドは、酒井のバックアップだった山根視来(川崎フロンターレ/28歳)が結果を残せなかったことも考えると、なかなか第1オプションで考えるのは難しいのかなと。オランダでプレーしている菅原由勢(AZ/22歳)は両サイドをこなせるユーティリティー性の面でも、重宝されていくかもしれません。橋岡大樹(シント=トロイデン/23歳)はフィジカルの強さだけでなく、ドリブルやクロス、メンタル面で酒井を超えるようなプレーを見せてほしいところです。

【MF】
 ボランチは遠藤航(シュツットガルト/29歳)、守田英正(スポルティング/27歳)が4年後もまだ動ける年齢ではありますけど、カタールW杯でも活躍した田中碧(デュッセルドルフ/24歳)を軸とした形になりそうな気がします。そこに、中井卓大(レアル・マドリード・カスティージャ/19歳)や松木玖生(FC東京/19歳)といった若手のホープが食い込んできたら面白いですよね。藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス/20歳)が遠藤航のようになっていてもおかしくない。ベスト8以上を目指すうえでは、夢や希望を抱かせてくれるような逸材が出てこないと難しいと思います。

 攻撃陣では、伊東純也(スタッド・ランス/29歳)がスピード系というプレースタイルを踏まえると、バリバリのレギュラーではなく、スーパーサブとかのほうが使い勝手がいいかもしれない。ベースは堂安律(フライブルク/24歳)、久保建英(レアル・ソシエダ/21歳)、三笘薫(ブライトン/25歳)、そこに4年後は中堅からベテランになる鎌田大地(フランクフルト/26歳)が入ってくる感じでしょうか。ただ、FWを含めて攻撃的な選手は“水もの”なので、例えば今季は怪我に苦しんだ荒木遼太郎(鹿島アントラーズ/20歳)のような若手が入って、ガラっと顔ぶれが変わっていても不思議はないと思います。

4年後は万能型ストライカーの上田綺世が軸か

【FW】
 カタールW杯では、森保ジャパンを牽引してきた大迫勇也(ヴィッセル神戸/32歳)が外れ、スピードに特化した浅野拓磨(ボーフム/28歳)と前田大然(セルティック/25歳)、万能型の上田綺世(セルクル・ブルージュ/24歳)と町野修斗(湘南ベルマーレ/23歳)という顔ぶれでした。

 上田は先発出場したコスタリカ戦で結果を残せず、前半45分のみのプレーでしたが、身体の強さやシュートセンスは特筆すべきもの。彼が中心となってポジション争いが繰り広げられほしいところです。もし、今大会のドイツ戦やスペイン戦のような戦いをするなら、前田タイプは4年後もチャンスは巡ってくると思います。中島大嘉(北海道コンサドーレ札幌/20歳)は体格に恵まれていて、Jリーグでも才能の片鱗を見せていますけど、国内でアンストッパブルかと言えばまだ粗削りでそのレベルに至っていない。海外では彼のようなタイプはゴロゴロいるので、規格外をさらに突き抜けてくれると期待したいです。(FOOTBALL ZONE編集部)