現在のCTV市場が直面している課題

近年、CTVを含むインストリーム動画広告市場は、CTV視聴の増加や地上波離れなどを背景に急速に成長を遂げている。2025年2月にサイバーエージェント/デジタルインファクトから発表された「2024年国内動画広告の市場調査」では、2025年のインストリーム動画広告規模は4,099億円と推計されているが、過去の同調査 (2016年発表) では2015年が319億円規模と、この10年間で13倍近く成長している。

その一方で、成長しているこの動画広告市場はいくつかの課題に直面しており、その1つとして、動画視聴中の広告に対する視聴者の広告回避傾向・嫌悪感の強まりが挙げられる。同じテレビデバイスであっても、地上波テレビCMでは放送法や業界規制によって高い広告体験品質が保たれているが、CTVを含むインストリーム動画広告ではそのような統一された品質が存在しないからだ。

「ABEMA」を含む放送局由来の動画サービスやプロコンテンツを提供する多くの動画サービスでは、地上波テレビCMと同水準のルールを設けて高い広告体験品質を提供する一方で、ユーザー投稿型動画サービスの広告体験は、「広告が表示されるタイミングが悪い」「怪しい広告が多い」「広告が表示される頻度が多い」といった声が他サービスよりも多く、視聴者が動画広告を回避したくなってしまう広告体験が存在*する。(*Nielsen Video Contents&AdsReport 2024より引用)

また今年は、日本民間放送連盟による2024年11月からの1ヶ月の調査を通じて、YouTubeやSNSなどの違法コンテンツ上に多くのブランド広告主のCMが表示され、YouTubeだけでも17億円もの広告費が違法コンテンツに流出していたという事態も発覚した。このような顕在化している社会的リスク・ブランドリスクに対して、短期的にはブランドセーフティー・Ad Suitabilityを確保するためのソリューション活用などが重要な施策の1つとして挙げられるが、中長期的には視聴者視点に立った「広告回避傾向・嫌悪感」を解消していく動きが必要になるはずだ。

そのためには、安全安心な広告在庫を提供するプロコンテンツメディアを中心に、CTVなどの視聴体験に寄り添った「視聴者に受け入れられやすい」広告フォーマットを開発していくことで、視聴者が広告を煩わしく感じることなく、自然に受け入れられる広告体験を通じて、結果的により多くの消費者に広告主のブランドメッセージを効果的に伝えることができる取り組みを進めていくことが重要だと考えている。

CTV広告に求められる役割と「ABEMA」の取り組み・新広告フォーマットへの挑戦

先に挙げた動画広告市場の課題を踏まえ、持続性のある市場成長を実現するためにも、視聴者に寄り添った広告体験の開発が重要になっていくと考えている。単純に「スキップできる」「回避しやすい」というだけでは、広告は煩わしいものであり、広告主のブランドメッセージが届きづらいことに変わりはない。目指すべき広告体験は「広告もコンテンツの1つ」として視聴者が自然に、かつ前向きに受け入れることができるフォーマットでありクリエイティブではないだろうか。

それらの背景を踏まえ、「ABEMA」では、CTV視聴の増加や、スポーツ中継などのライブコンテンツの視聴機会の増加など、多様化する視聴環境に合わせた「良質な広告体験」の開発によって、広告主に新しい広告価値の提供と視聴者に優良コンテンツの継続的な”無料視聴”機会の提供を目指している。 

そこで、「ABEMA」は2024年にGumGumと共同で新しい広告体験「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」の実証実験にチャレンジした。「ABEMA」が実施した「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」は、従来のウェブメディアにおけるコンテクスチュアル広告の技術や広告手法を番組などの映像を対象に応用するもので、番組内の特定のシーンや場所に関連する広告を該当する映像の枠内に表示する新しい広告手法として、近年注目を集めている。

この手法により、広告主は訴求したい商品・メッセージと関連性の高いシーン内でブランドストーリーを伝えることができ、視聴者は視聴を中断されることなく、番組の文脈と共に自然に広告を受け取る事ができるため、「良質な広告体験」として広告効果も期待できる。

実証実験では、大手総合旅行サイトが参加し、「ABEMA」の恋愛リアリティーショーの「旅」を想起させるシーンに当該旅行サイトの広告を統合することで、広告視聴者群では非視聴者群と比べてブランド助成想起は51%向上、興味関心意向は27%向上など、非常に高いブランドリフト効果を確認できた*。(*参考記事:「ABEMA」、国内初実施の“番組の文脈に合ったシーンに広告を配信する”新手法 「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」実証実験でのブランド認知と興味関心向上の効果を発表)またアテンション解析をした結果でも、広告が挿入されたスペースに視聴者の視線が集中していることが明らかになった。

これらは、「コンテクスチュアルオーバーレイ広告」が、映像の文脈に自然に溶け込みながら視聴者の注目を効率的に集める特性を持つことで得られた高い広告効果を示すもので、視聴体験を損なわない「良質な広告体験」としての可能性を感じさせる結果となった。

市場全体に向けた提言・今後の展望

CTV広告を含むインストリーム動画広告市場は今後も成長が期待される一方で、「ブランドメッセージを安全に伝えることができる場所」を長期的にどう確保し続けるかは重要な課題だ。この課題を解決し、持続的な動画広告市場の発展を実現するためには、業界全体での協力が不可欠である。

そのためには、まずはプロコンテンツメディアが視聴者の視聴環境や視聴態度を十分に熟知し、広告主のブランドメッセージをより安全に、より効果的に伝えることができる広告体験を開発していくことが重要だ。また、広告主に対して広告表示場所など詳細なレポートを提供することで透明性を高めていく必要性もある。

次に、広告主については自社のブランドメッセージがどのような広告体験の中で伝えられているかを把握し、品質の高い広告体験を提供するメディアを選定し、ブランドセーフティが確保されているメディアで信頼性の高い広告環境を確保していくことが重要と考える。

広告会社は、より強いリーダーシップを持って両者の連携を強化し、広告主のブランドメッセージを最大限に活かすための戦略に沿って、最適なメディアとフォーマット・クリエイティブを選定することが重要になっていくのではないだろうか。

これらの取り組みを通じて、メディア、広告主、広告会社が一体となり、視聴体験と広告効果を両立させる健全なCTV広告市場の持続的な成長を目指すことが重要だと考えている。

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◆綾瀬 龍一
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 / シニアプロダクトマネージャー
2009年サイバーエージェントに新卒入社。
メディア事業「アメーバブログ」のプログラマティック領域のマネタイズ責任者やディスプレイ広告/動画広告のプロダクトマネージャーを担当。2019年からは「ABEMA」に出向し、動画広告のプロダクトマネージャーを務める。現在は「ABEMA」における広告メニューの企画・開発やアドテクを活用したソリューション開発、及びCTV含めた視聴体験に沿った新しい広告体験の開発に従事。

「ABEMA」はテレビのイノベーションを目指し"新しい未来のテレビ"として展開する動画配信事業。

ニュースや恋愛番組、アニメ、スポーツなど多彩なジャンルの約25チャンネルを24時間365日放送。CM配信から企画まで、プロモーションの目的に応じて多様な広告メニューを展開しています。

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