50年で5000件→35件に激減した日本の「ストライキ」…全労連副議長「連合がすぐに闘いをやめてしまう組織だからだ」
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 和歌山県の私立和歌山南陵高校で、給与の未払いや生徒の就学支援金の返金遅れなどを理由に教職員が始めたストライキ。学校法人側が説明会を開くとしたことで授業は再開となったほか、関係者によれば理事長は退任の意向を示しているという。

【映像】「全労連」副議長に聞く「ストライキ」

 自分たちの要求を通すために団結、仕事を放棄するストライキは欧米では一般的で、日本においても憲法にも定められた労働者の権利でもある。

■労働組合にとって最も基本的な闘い方

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 19日の『ABEMA Prime』に出演した全国労働組合総連合(全労連)副議長で、機械金属産業などの労働組合「JMITU」委員長も務める三木陵一氏は「ストライキ=権利ということはテレビでは議論してもらえないので、こういう機会を作っていただいて本当にありがたい。一言で言えば、労働者が団結して就労を拒否することによって要求の切実さや怒りの強さをアピールする、労働組合にとって最も基本的な闘い方だ」と説明する。

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 「戦後、日本国憲法ができて労働者の基本的な権利として盛り込まれたが、世界ではピラミッドの建設時にもストライキが行われたという記録があるらしいし、日本においても1886年、山梨の雨宮製糸工場で女工さんと呼ばれていた女性労働者がお寺に立てこもったのが最初のストライキだといわれている。"労働者からの要求"と聞くと賃金など経済的なものばかりだと思われがちだが、“いい仕事をしたい”と切実な思いからのものでもある。

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 一方で、ひとりよがりでは成功しない。例えば鉄道を止めるのもそうだが、市民の皆さんの支援・支持を得ながらということが大切だ。今回のストライキについても、このタイミングが良かったのだろうか。テクニカルなことについて軽々に論じることはできないが、寮のガス供給が止まっていたという話もあるし、教員の皆さんとしては自分たちの要求だけでなく学校運営を良くしたいという必死の思いから立ち上がったのだろう。想像以上に勇気のいることだし、敬意を表したい」。

■「連合」は“闘わない労働組合”だ

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 一方、半日以上にわたって行われた国内のストライキは、1974年の時点で5000件以上もあったが、2020年には35件と、私たちが目にする機会は圧倒的に減っている。

 「1974年にピークを迎えた理由は、この年にオイルショックがあったからだ。今も物価がめちゃくちゃ上がっているが、60〜70年代当時は欧米に劣らず全国組織の労働組合があり、労働者はストライキによって大幅な賃上げを求めて活発に戦っていたということだ。私が高校生くらいの時には、国鉄や私鉄がしょっちゅうストライキで止まっていた記憶がある。

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 それが転機を迎えるのが1989年だ。この年、闘う労働組合である『総評』と、いわゆる“会社派”、“御用組合”の集まりである『同盟』がくっついて日本最大の労働団体である『連合』が生まれた。しかし、連合は全くストライキをしない。それどころか春闘の賃上げ交渉で会社から回答が出てくると、即座に“分かりました”と妥結し、闘いをやめてしまう。

 他方、排除されていった闘う労働組合の人たちが立ち上げたのが、私のいる『全労連』だ。少数派ではあるが、今年の春闘でJMITUは全国約200の労働組合のうち、100近い職場でストライキを起こした」。

■“不健全だけど穏やか”という日本の象徴だ

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「労働者を活かす環境が削られ、日本の会社は弱くなっていった。欧米化しきれず、“不健全だけど穏やか”という、日本のムラ社会、企業のあり方の象徴だと思う」と喝破する。

 「日本が近代化していく中で欧米から取り入れた考え方だと思うが、やっぱり日本が昔ながらのコミュニティである“ムラ”に戻ったということじゃないか。正論を吐く人に他の人が一致団結して何かを変えようとするよりも、それによって居心地が悪くなるくらいなら、みんな仲良く廃れていこうというのがムラの発想だ。

 例えば労働環境の悪化や不正によって企業が潰れてしまうかもしれないが、突撃すれば改善されるかもしれない。それでも問題を大きくして会社を分裂させるくらいなら、“仕方ないよね”で倒産したり、訴えられたりする道を選ぶことが多いのではないか。テレビ局だって、番組の制作過程でウソがあったりパワハラがあったりしても、みんなで“バレて残念だね”、となった方がマシだ、という文化があるのではないだろうか」。

■日本の労働者はもっと闘うべきだ

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 パックンは「僕は日本の国民性についてはあまり口を出さないようにしているが、穏やかな社会を保ってきたのはすごいと思う一方、やっぱり不健全だと思うところはある」とコメント。

 「経営者と争わず、仲良くして働く。しかしそのせいでデフレが長く続いていると思うし、格差社会にも拍車がかかっていると思う。アメリカでは今もストライキ文化があるし、週40時間の制限など、労働者の権利が作られていったのも労働組合の努力の成果だと思う。日本の労働者も、もっと闘うべきだと思う。ただ、アメリカでは労働組合が強すぎるとか、ストライキを起こしすぎるという問題も最近では指摘されている」。

 三木氏は「3、4年ほど前からアメリカの労働組合運動は元気になり始めている。ウエストバージニア州などでは、まさに教員によるストライキが大規模に発生し、それがホテル業界にも波及した。また、最近ではAmazonやスターバックスで労働組合が結成された。やはり運動というのは企業側からの弾圧によって弱まることもあるし、それが我慢ができなくなって強くなっていくというように、波があるものだ」とした。

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 また、テレビ朝日平石直之アナウンサーは「労働環境や待遇を良くしたりするためにといっても、終身雇用が保障された時代ではなくなったので、同じ船に乗って闘うよりも、乗り移って離れた方がいいという選択肢も出てきているのではないか」と指摘。

 三木氏は「そういう選択肢はあるかもしれないが、実際に乗り移れるのは10人いれば1人か2人で、残りの8人は沈みゆく船に置いてけぼりにされる状況にある。この20年間、連合がまったくストライキをやらなくなった中で、日本の賃金は先進国のなかでも非常に低く、お隣の韓国よりも低いくらいだ」と反論。「自分の要求、仲間の要求、みんなの要求を実現していこう思いで私たちは頑張っている。ぜひ応援してほしい」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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