エンゼルス大谷翔平投手が9月3日(日本時間4日)のアストロズ戦に、今季23度目の先発登板を果たし、勝敗はつかず12勝目はならなかったものの、今季最多となる111球を投げ、8回6安打1失点5奪三振と好投した。打者としても30本塁打を放ち、1918年のベーブ・ルース以来となる「2ケタ勝利・2ケタ本塁打」を達成、さらに前人未到の「規定打席・規定投球回」という大記録も近づいている中、シーズン終盤で投手としての新たな武器として存在感を出してきたのがツーシームだ。3日の試合ではストレート(フォーシーム)よりも速い、この日最速の100.6マイル(161.9キロ)を計測。右打者のインコースにやや沈みつつも、球速はストレートと同等以上という、とてつもない“魔球”だ。日米のプロ野球で投手として活躍した川上憲伸氏も「そろそろ投げると思っていました」と予想していたツーシーム。今季の「投手・大谷」の好調ぶりと、新球の威力、手応えなどについて聞いた。
2018年の秋に右肘の靭帯再建手術、通称トミージョン手術を受けた大谷。毎年少しずつ状態を整えつつ、かつその他の部分はトレーニングによるパワーアップを繰り返した。昨年も9勝を挙げたが、今季は開幕投手を務めると、先発ローテーションから1回も外れることなくエースとして投げ続け、ここまで11勝7敗。防御率2.58、181奪三振は圧巻と言うしかない。技術もさることながら、プロ野球選手としてコンディションが整ってきたことを、川上氏は真っ先に指摘した。
川上氏 (昨季との違いの)一番は、投げることに関しては、体が思い通りに動かせるようになってきています。今まではトミージョン手術の影響もありました。アメリカでは、ほとんどのピッチャーが手術をしているイメージなんです。その中でも2年後、3年後に体がベストになってくる。去年は若干「肘の具合はどうなんだ」「どこまで馴染んでいるのか」と、探りながらの投球だったと思います。変化球も、スライダーやスプリットよりも、カット系を多めにしたというイメージでした。
去年のシーズン最後の方にスプリットを投げるようになりました。スプリットは結構肘の負担が来るんです。スプリットをある程度投げていいよと、自分自身の体にOKをもらって投げたと思います。それで大谷選手は元通りに戻った、いい感じで投げているのかなと思っていたんです。今年のシーズンに入ってもスプリットをいい感じで投げていたので、ストレートとスプリットのコンビネーションがいいねと思っていたんです。トミージョン手術をする時、メジャーリーグの各球団はトレーニングで体を一回り大きくしてパワーアップ、スピードアップさせます。その中で日本にいた時よりも、手術前よりもスピードが上がってくるというようなものが今年のイメージでした。ところが途中ぐらいから、すごくスライダーを投げるようになりました。これもまた変えたなという感じでした。
シーズン中盤からはスライダーの割合を増やし「160キロを投げる変化球投手」へと変貌した大谷。時にはフォームそのものを変えてまでスライダーの変化量を大きくするようなシーンも見られた。そんな中、残りの登板機会も10回を切ったあたりから投げ始めたのがツーシームだ。現地では「シンカー」または「ツーシーム・シンカー」と表現されており、大まかには「動くストレート」の1種類に分類されるものになる。大谷自身、今季初めてツーシームを投げた試合の後にはメディアから質問を受け、球速だけで見ればツーシームの方が出るとコメントしていたが事実、3日の試合の最速はツーシームを投げた時に記録された。
川上氏 そろそろツーシームを投げると思っていました。大谷投手は段階を経て変化球を投げてきているので、次に投げる球はツーシームあたりではと思っていました。ツーシームを投げることで一通りの球種(ストレート、カーブ、スライダー、カットボール、フォーク、シュート・ツーシーム)を投げれる投手になります。全ての球種が通用する投手は少なく器用な選手の証拠ではないかと思います。ちなみに強力なスライダーを投げるフォームで、ツーシームを投げることは不可能に近いので、投げ方も肘を下げ気味の投げ方が少なくなると予想します。大谷投手は投球に関して模索中な感じがしますがそれで結果を出しているのがすごいですね。
効果としては球数が少なくなる可能性があります。グラウンドボールピッチャー(Groundball pitcher)つまりゴロアウトを増やすことで球数が少なくすることができる。ツーシームは腕の振りがストレートに近いのと、大谷選手は今までシュート系の球は投げていなかったので、左右に変化を増やすことで右打者に踏み込めなくなりスライダーがささらに力を発揮するのでないかと思います。
確かに大谷の変化球はこれまで右打者から見れば、自分から遠ざかっていく球がほとんどだった。それが近づいてくるツーシームが増えるとなれば、事前に目をつけておかなければいけないゾーンが大きくなる。川上氏が言うように、右打者が外角球を予想して踏み込んできたところに、食い込むようなツーシームを振ってバットがぐしゃり、ボテボテのゴロになるといったケースも増えるだろう。
ストレートの球速、スライダーの切れ味、スプリットの落差などで三振が多く“取れてしまう”からこそ球数も多くなっていたが、打たせて取りたい場面で、ツーシームが使いこなせるようになれば、無駄な三振を取る必要もない。8回で111球、三振5つで1失点。ツーシームはスライダー(59球)の次に多い18球を投げた。規定投球回の到達まで、あと28回。「打たせて取る」ことを、新球ツーシームでできれば、残り4~5試合と言われる登板機会でも、十分に28回を投げることができるはずだ。
(ABEMA『SPORTSチャンネル』)
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