サッカーのポジションの1つであるボランチを解説します。過去の有名選手や、日本代表の選手紹介、さらにはボランチに向いている選手の特徴を紹介します。
目次
- ボランチとは?
- ボランチで有名な選手・歴代編
- ボランチで有名な選手・現代編
- ボランチで有名な選手・日本代表編
- 現在の日本代表のボランチ
- ボランチに向いている性格は
- まとめ
ボランチとは?
「ボランチ」とはポルトガル語で「ハンドル」や「舵取り」を意味する言葉で、サッカーではその言葉通りにチームをコントロールするポジションを指します。
中盤の低い位置にポジションを取り、ビルドアップやゲームメイクをこなすのが主な役割で、正確なキックと視野の広さが求められます。
一方、ディフェンスラインの手前で相手の攻撃を食い止めるのもボランチの仕事となります。広範囲をカバーする走力と、相手の動きを封じてボールを奪い取る対人プレーの強さも必要となります。
ボランチは2人配置されることが多く、一方が攻撃を組み立てる司令塔タイプで、もう一方はボール奪取能力の高い守備的なタイプを組ませるのが一般的です。
ボランチとアンカーの違いは?
ボランチと同じような役割として、「アンカー」と呼ばれるポジションがあります。アンカーは英語で「錨」の意。船をとどめておくために海底に沈めて使用する錨のように、攻撃と守備をつないで、チームにバランスをもたらすポジションとなります。
役割的にはボランチとほぼ同じですが、時に高い位置にまで攻め上がるボランチとは異なり、アンカーは中盤の底にどっしりと構え、ビルドアップをこなしながらカバーリングやカウンター阻止の役目を担います。またコーチングで味方を動かすことも重要な仕事のひとつになります。
アンカーは1人で務めることが多く、主に4-3-3のシステムで、中盤の後方にいる選手をアンカーと呼ぶことが多いです。
ボランチで有名な選手・歴代編
アンドレア・ピルロ選手(イタリア代表)
司令塔型のボランチとして有名だったのは、元イタリア代表のアンドレア・ピルロ選手です。ミランやユベントスで活躍したテクニカルなボランチで、正確なミドルパスで攻撃を司りました。直接FKも武器とし、多くのゴールを生み出しています。
ワールドカップには2006年大会に出場し、優勝に大きく貢献。2010年大会でもメンバー入りを果たしましたが、怪我の影響でわずか1試合の出場に終わっています。
スティーヴン・ジェラード選手(イングランド代表)
元イングランド代表のスティーヴン・ジェラード選手も世界的な名声を得たボランチのひとり。パワフルかつ正確なロングフィードを武器とし、一発のパスでチャンスを生み出す能力を備えていました。また自ら豪快に持ち上がり、強烈なシュートを叩き込むなど得点力も高く、闘争心溢れるプレーで守備にも力を発揮しました。圧倒的なキャプテンシーも兼ね備え、長年所属したリバプールの象徴的な存在でした。
イングランド代表としても活躍し、ワールドカップは2006年大会から3大会連続で出場。うち2大会ではキャプテンを務めました。
クロード・マケレレ選手(フランス代表)
守備的なボランチでは、元フランス代表のクロード・マケレレ選手の名前が挙げられます。小柄ながら豊富な運動量と卓越したボール奪取力を武器に、レアル・マドリードやチェルシーといったビッグクラブで活躍しました。特にレアル・マドリード時代には、攻撃的な選手が多くいるなかで、マケレレ選手の献身的なプレーが高く評価されました。
フランス代表としてもプレーし、ワールドカップには2002年大会と2006年大会に出場。国際Aマッチ通算71試合に出場しながら、ゴールがひとつもなかったことが、マケレレ選手のプレースタイルを表しています。
ボランチで有名な選手・現代編
セルヒオ・ブスケッツ選手(スペイン代表)
今大会のワールドカップで存在感を放つのは、スペイン代表のセルヒオ・ブスケッツ選手です。バルセロナに所属する長身MFは、中盤の底で攻守のつなぎ役を担う世界最高峰のアンカーとして活躍しています。
卓越したポジショニングで最終ラインからボールを引き出し、シンプルなパスワークでリズムを生み出します。また対人プレーにも強くセカンドボールへの対応も優れており、守備でも大きく貢献。同じバルセロナに所属し、スペイン代表でも中盤を形成する20歳のペドリ選手、18歳のガビ選手が思い切ったプレーを見せられるのも、後方にブスケッツ選手の存在があることが大きいと言えます。
ヨシュア・キミッヒ選手(ドイツ代表)
ドイツ代表のヨシュア・キミッヒ選手は攻守のバランスに優れたボランチです。センターバックやサイドバックもこなすユーティリティな選手で、読みの鋭さや力強い対応でボールを奪い取るだけではなく、高い技術と視野の広さも持ち合わせ、正確なパスワークで攻撃を操ります。また戦術理解度も高く、1本のパスや正確なポジショニングでチームを良い方向に導いていきます。
カゼミーロ選手(ブラジル代表)
守備的なボランチでは、ブラジル代表のカゼミーロ選手に注目です。強靭なフィジカルを備えた大型ボランチは、レアル・マドリーで頭角を現し、今季よりマンチェスター・ユナイテッドでプレーしています。
パワフルな対応で相手からボールを奪い取り、素早く切り替えて攻撃の起点にもなります。豪快な攻め上がりからゴールを奪う能力も持ち合わせており、攻守両面で高い貢献度を示しています。
ボランチで有名な選手・日本代表編
稲本潤一選手
日本代表でも数々の名ボランチが活躍しました。2002年の日韓ワールドカップで、一躍国民的なヒーローとなったのが稲本潤一(いなもと じゅんいち)選手です。
ガンバ大阪のアカデミーで育った稲本選手は、17歳でプロデビューを果たし、20歳で日本代表入り。21歳の時には海外移籍を実現しました。
強靭なフィジカルを生かした守備と豪快な持ち上がりが武器で、日韓ワールドカップでは初戦のベルギー戦、2戦目のロシア戦でゴールを奪う活躍を見せ、決勝トーナメント進出の立役者となりました。
2006年大会、2010年大会にもメンバー入りを果たすなど、長く日本代表として活躍。現在も現役を続け、関東サッカーリーグ1部の南葛SCでプレーしています。
遠藤保仁選手
遠藤保仁(えんどう やすひと)選手も日本サッカー史にその名を刻むボランチです。卓越したパスワークと正確なプレースキックを武器に、ガンバ大阪などで活躍。42歳となった現在もジュビロ磐田でプレーしています。
22歳だった2002年に日本代表デビューを果たし、2006年のワールドカップにメンバー入りしたものの、出番はありませんでした。しかし2010年大会ではレギュラーとして全4試合に出場。デンマーク戦では直接FKを叩き込み、決勝トーナメント進出に大きく貢献しました。
続く2014年大会にも出場した遠藤選手は、長年に渡って日本代表に不可欠なボランチとして活躍。日本代表通算出場数は152で、これは歴代トップの数字となっています。
長谷部誠選手
遠藤選手と同じく、長年日本の中盤に君臨したのが長谷部誠(はせべ まこと)選手です。元々は攻撃的な選手でしたが、2007年にドイツのクラブに移籍して、守備力が向上。頭脳的なプレーでピンチの芽を摘み取り、果敢な持ち上がりやスルーパスでチャンスを生み出す攻守のバランスに優れたボランチです。
プレーもさることながら、長谷部選手の最大の売りは、圧倒的なリーダーシップです。日本代表では2010年のワールドカップ開幕直前にキャプテンに就任すると、2014年、2018年と3大会連続でキャプテンを務めました。現在所属するドイツのフランクフルトでもキャプテンを務めた経験もあり、日本人、外国人問わず多くの監督たちが、チームを一つにまとめ上げる長谷部選手の能力に信頼を寄せていました。
現在の日本代表のボランチ
遠藤航選手
ワールドカップ2022の日本代表でボランチとしてプレーしていたのが、遠藤航(えんどう わたる)選手です。
湘南ベルマーレ、浦和レッズで活躍し、2018年に海外移籍。現在はドイツのシュツットガルトに在籍しています。
遠藤選手の持ち味は1対1の強さです。素早い寄せと力強いボール奪取を武器に、日本の守備を支えています。ブンデスリーガでは2年連続で“デュエル王”に輝くなど、その対人能力は世界レベルにあります。前回大会ではメンバー入りしながら出番がなかった遠藤選手ですが、その悔しさをばねにカタールの地では力強いプレーを見せてくれました。
守田英正選手
その遠藤選手とコンビを組むのが守田英正(もりた ひでまさ)選手です。流通経済大から2018年に川崎フロンターレに加入すると、1年目からレギュラーを獲得し同年のリーグ優勝に貢献。2020年にはベストイレブンに輝く活躍を見せ、海外移籍を実現。現在はポルトガルの強豪・スポルティングで主力としてプレーしています。
ルーキーだった2018年から日本代表にも名を連ね、ワールドカップのアジア最終予選から主力に定着。フィジカルを生かした守備力に加え、卓越したポジショニングや正確なパスワークも兼ね備えており、日本代表に不可欠な存在へと成長を遂げています。
田中碧選手
守田選手と同じ、川崎フロンターレ出身の田中碧(たなか あお)選手も日本代表の中盤に欠かせない存在です。
川崎のアカデミーで育ち、2018年にプロデビュー。着実に成長を遂げ主力に上り詰めると、2019年には日本代表入り。2021年には東京五輪に出場し、同年に行われたワールドカップアジア最終予選では、オーストラリア戦でゴールを奪い、苦しんでいた日本を救う活躍を見せました。
田中選手の持ち味は技術や守備力の高さはもちろん、ピッチ全体を見られる視野の広さにあります。どこにスペースがあるのか、どこが危険なエリアなのかを察知し、的確な判断を下すことができます。その能力を生かし、ワールドカップ2022のスペイン戦では隙を逃さす見事に決勝ゴールを奪取しました。
ボランチに向いている性格は
チーム全体をコントロールするポジションである以上、求められるのはリーダーシップです。しっかりとした考えを持ち、的確な指示を送るなど、冷静な判断力と強い責任感が求められるポジションと言えます。
またサイドバックと同様に、黒子的な役割も求められるため、味方のミスをカバーしたり、ピンチを防ぐために長い距離を走ったりする献身性も重要となります。
一方で攻撃の場面では、時にゴール前に駆け上がったり、リスクを負った縦パスを出したりする積極性も必要です。冷静でありながら、大胆な部分も求められるポジションと言えるでしょう。
まとめ
攻守両面で重要な役割を担うボランチは、まさにチームの浮沈のカギを握るポジションです。ボランチのパフォーマンス次第で、結果が左右されるといっても過言ではありません。実際にこのポジションには、古今東西問わず、チームの顔と呼べるような選手が数多く存在しています。
サッカーの醍醐味はゴールですが、ゴールを生み出すためにどのようなパスを出しているのか。あるいはゴールを与えないためにどういう対応をしているかなど、ボランチの選手の動きに注目すると、サッカー観戦はより楽しくなるはずです。