まもなく広島で開催されるG7サミット。日本は参加国の中で唯一、同性婚や性的少数者への差別禁止をめぐる法律がない。
世界から遅れをとり、国内外から法整備を求める声もあがる中で、東京都など全国で250を超える自治体がすでにパートナーシップを導入。子どもを持つという選択をする性的少数者の当事者も増えつつある。
しかし、そこで問題となっているのが親権だ。3日の『ABEMA Prime』では、子育て中のLGBTQ+カップルを交えて議論した。
■「同性カップルという不安が違う形になってきた」
同棲5年目、バイセクシュアルのトモコさんと、Xジェンダーのカナさん。第三者の男性の協力を得てカナさんが妊娠、2月に出産し、子育てをしている。カナさんが職場復帰し、トモコさんが主に子育てをしているそうだが、ある不安があるという。
「トモコさんには子育てに専念してもらうために仕事を辞めてもらったので、その分、収入が減ってしまう。法律上、配偶者控除が使えなかったり、私の扶養には入れないので国民年金の保険料を払うのにお金がかかるというのはある」(カナさん)
「同性カップルという不安は元々あったが、その不安が違う形になってきた。もちろん子どもは無計画だったわけではなく、経済面だったり本当にこれが子どものためになるのかなど、2人で苦渋の決断をしながら授かることになった。まず親になったことへの不安はあるのだが、個人ではどうにもできない部分を制度面で解決できれば、多様な家族を持つことができるのではないか」(トモコさん)
大きな点が「親権」だ。トモコさんとカナさんはパートナーではあるが、法律上の親族ではない。協力者の男性も子どもについては認知をしていないという。
「同じ税金を払っていても受けられない控除があったり、自分がもし死んでしまった場合に、パートナーにしっかり親権がいくのかという不安はとても感じる」(カナさん)
「私たちは両方の親にカミングアウトしていて、家族同士も友好な状態なので、育てられるだろうという安心感はあるが、逆にこういう境遇でなかったことを考えるとものすごく怖い。たまたまハッピーなケースというだけで、別の当事者が子どもを持とうと思う時に立ちはだかるものは多いと思う」(トモコさん)
2人が居住する墨田区では、4月から「パートナーシップ制度」が導入され、5月3日から証明書の交付が始まったが、これに期待する部分はあるのか。
「子どもを出産するにあたって去年、産婦人科のクリニックを探していた。あるところでは同性同士の出産ということで丁重にお断りされたが、制度があることによって民間病院などの理解は進むのではないか。法的な効力はないけれど、後押しというかたちでマイノリティの方々が生きやすくなると思う」(トモコさん)
■「日本はケーススタディを集めて前進している最中で、もどかしい状況」
2日に発表された共同通信の世論調査で、「同性婚を認めるべきか?」という質問に対し、「認めるほうがよい」と答えた人が71%、「認めないほうがよい」が26%、無回答が3%と、多くの人が前向きに捉えていることが明らかになった。一方、G7各国を見てみると、同性婚と性的少数者(LGBTQ)の差別禁止法、夫婦別姓の制度が日本だけ整っていない。
プロデューサーで慶応義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「全方位をカバーできる法律・条例がすぐできる社会が理想だと思うが、日本は前例があって初めて“そういうケースもあるのか”と対応していく社会だ。ケーススタディがいっぱいあれば前進していくという意味で言うと、僕らはまさにその最中だと思う。ただ、当事者の中には、自分たちのことをケーススタディにしてほしくない、放っておいてほしい、という人もいる。でも、声をあげないと知ってもらえないし変わらないという、非常にもどかしい状況だという気がしている」と投げかける。
これにオープンリーゲイで港区議の斎木陽平氏は「まだゲイをオープンにできず苦しんでいた時に、オープンにして活動されている方やプライドパレードを見てすごく勇気づけられた。だから、今度は自分がそういう立場になっていきたい、まさにケーススタディになっていけることを生きがいと捉えて活動している。ただ、LGBTQの友人たちの中には、同性婚を必要としていない、子どもも持とうと思っていないという人たちは一定数いるわけだ。その人たちから『騒がないでほしい』と言われるのは、こちらとしてはそういうわけではないのに…という難しさはある」と回答。
斎木氏自身は将来、子どもがほしいと考えているそうで、「とはいえ、異性婚の人たちが得られる経済的なサポートが、同性カップルになった瞬間に受けられないというのは不合理だと思う。学校や病院などどうしても対応してくれないケースがあるが、例えば学校なら保護者参観はどうするのがいいかなど、細かいことを相談できるようにコミュニティが調整されていくとありがたい」と述べた。
若新氏は「当事者の方が、“あなたたちは人とは違う生き方をしている”みたいな社会の空気に遠慮しないといけないのはおかしいと思っている。皆さん積極的に選んだわけではなくて、消極的に選ばされているからだ。その結果を堂々と受け入れて生きていけるような社会になり、法も整備されるというムードに変わっていくべきだと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)
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