将棋の第81期名人戦七番勝負第5局が5月31日・6月1日の両日、長野県高山村の「緑霞山宿 藤井荘」で指され、渡辺明名人(39)が藤井聡太竜王(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、20)に94手で敗れた。この結果シリーズ成績を1勝4敗とし、3期保持した名人位を失冠。2004年に初タイトルとなった竜王位獲得以来、19ぶりの無冠となった。
若き六冠保持者の藤井竜王を挑戦者に迎えた今期のシリーズでは、全5局で力戦を選択。作戦巧者の渡辺名人らしく前例のない将棋へと誘導したが、白星は第3局でのわずか1勝。本局では渡辺名人の矢倉と藤井竜王の雁木が激突したが、終盤で長考の末に強く踏み込む決断をした渡辺名人にわずかにミスが出て、流れは一気に挑戦者側へ。藤井竜王は最後まで緩むことなく冷静な差し回しを見せて押し切ると、渡辺名人ははっきりと「負けました」と口にして投了を告げた。
終局後、渡辺名人は敗因について「(藤井竜王の角出が)局面としても一番複雑だったかなと思うので、そこで長考した結果間違えてしまったのかなと思う」。シリーズを通しては、「4、5局目で負けた将棋の内容が特に悪かった。そこは残念」と振り返って肩を落とした。さらに、藤井王将との対戦については「息が長い将棋になることが多かったが、局面が難しくなってきたときに差が出てしまった」とし、保持していたすべてのタイトルを失ったことについては「この3年くらいのタイトル戦の戦いからすると、こういう結果になるのも当然。力が足りなかった」と静かに語った。
渡辺名人は、2004年に自身初タイトルとなる竜王位を獲得。初戴冠から無冠時代が無く将棋界のトップを走り続けてきたが、19年ぶりにすべてのタイトルを失う結果となった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)