八冠独占の藤井聡太竜王・名人 14歳デビューから突き続けた初手「飛車先の歩」居飛車採用率100%で全冠制覇
【映像】藤井聡太竜王・名人、「飛車先の歩」を突く場面

 将棋藤井聡太竜王・名人(王位、叡王、棋王、王将、棋聖、21)が10月11日、王座戦五番勝負で永瀬拓矢王座(31)を下し、シリーズ3勝1敗でタイトル奪取に成功、ついに前人未到の八冠独占を果たした。史上最年少14歳2カ月のプロデビューから、圧倒的な強さで将棋界の階段を駆け上がり、羽生善治九段(53)が当時7つだったタイトルを独占して以来、全てのタイトルを手中に収め、紛れもなく頂点に立った。日々研鑽を重ね、対策をしてくる強豪棋士たちの追随を許さない天才だが、中学2年生でプロデビューしてから先手、後手を問わず「飛車先の歩」を突き続けた。

【映像】藤井聡太竜王・名人、「飛車先の歩」を突く場面

 将棋は2人が各20枚の駒を使って戦う。対局開始時、動かせるのは角と2枚の桂馬を除く17枚。プロ、アマを問わず多くの場合は飛車の前方にいる歩を進めるか、角の斜め上の歩を進めて道を開けるか、という手が選択される。角道を開ける場合は居飛車、振り飛車のどちらもあるが、「飛車先の歩」を突いた時点で、ほぼ居飛車で指し進めることが確定する。藤井竜王・名人は公式戦、イベントなどでの非公式戦を問わず、そのほとんどを「飛車先の歩」を突くことから始め、公式戦にいたっては100%、居飛車で指している。

 プロの将棋界も、居飛車党の方が圧倒的に多い。ただ初手「飛車先の歩」一択という棋士はほぼいない。本人を除く全棋士から、その一手一手を注目される立場ながら、初手で必ず歩を突いてくることがわかっているというのも珍しい。対策する側からしても、最初の二択を考慮しなくて済むからだ。それでも藤井竜王・名人は、ブレずに歩を突く。その後の展開は角換わり、相掛かりをはじめ、様々な戦型に展開していくものの、ここだけはとにかく変わらない。

 「全冠制覇」という点で比較される羽生九段は、究極のオールラウンダー。永世七冠、通算最多勝などの記録を持つ偉大な棋士だが、居飛車、振り飛車、どんな戦型で指してもスペシャリストをしのぐような指し回しで、いわば「全知全能の神」といった強さだった。一方で藤井竜王・名人は、一貫して居飛車。どんな一局でも相手に合わせて受け止めるのが羽生九段であれば、「自分は今日もこう指す」と宣言するように飛車先の歩を突くのが藤井竜王・名人。形は違えど目先の勝利を目指して奇をてらうようなことはなく、王者の風格が漂う戦い方だ。

 通算勝率は8割を維持、タイトル戦では1度も挑戦・防衛を失敗することなく、真っ直ぐに八冠独占にたどり着いた。今後は藤井竜王・名人がいつタイトルを失うかが、大きなニュースになるタイミングだが、それと同等に「藤井竜王・名人が飛車を振った」となれば、これもまた天才棋士の重要な転換期を迎えたことを知らせるビッグニュースになる。
ABEMA/将棋チャンネルより)

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