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【映像】「貧しかったため、大学進学には“世帯分離”が必要だった…」過酷すぎる日々
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 「基本的に貧しかった。中学に入った頃は大学に行くことを一切考えたことがなく、大学という存在すら知らなかったのでは」

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 子どもの頃の家庭環境を振り返るのは、現在数学の研究者として海外で暮らす島田了輔さん。友達に誘われた塾で受けた体験授業がきっかけで、勉強に興味を持つようになったという。

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 「中学生の時、基本的にはずっと生活保護世帯だったが、その中で勉強に目覚め、学問をやりたいと思った。しかし、生活保護世帯だと大学進学を目指すときに『世帯分離』する必要があると高1で知った」(島田さん、以下同)

 当時、生活保護世帯から大学に進学するためには、生活保護の対象から外れ、授業料や居住費、生活費を自分で賄う必要があった。夢を実現するため、制度や授業料に関する情報を自力で調べた島田さん。「数学者になるための教育環境が整っている」「授業料免除がある国公立大学」「安い寮がある」などの条件が揃っていたのが東京大学だった。

 無事に合格を勝ち取った島田さんだったが、入学後には入学金と授業料の支払いが待ち受けていた。

 「私が東大に入った時、3000人以上の入学生の中で授業料・入学金を免除されるのは数人だけと言われていた。だが、入学金はとてもではないが払えない金額であり、免除を受けられなければ非常に困る状況。すごく怖かった」

 大学院進学を視野に入れていたため、多額の返済が必要な貸与型奨学金は選択肢から排除。無事合格はしたものの、勉強しながら授業料免除が通らなかった時のためのお金をアルバイトで貯めるという生活を過ごした。 

 「準備できたのは1年分が限界で、もし授業料免除が通らない年が続いたら留年・休学、あるいは退学という事態になった」

 サークル活動など、周りの学生が希望に満ちた大学生活を送る中、大きな不安を抱えながら過ごした島田さん。難関大学に合格する能力があっても、家庭環境によってそのハードルが大幅に上がるという現実と向き合った学生生活だった。

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 現在、島田さんが通った東京大学では授業料の値上げが検討されているが…

 「一般論としては授業料の値上げの可能性を完全に排除すべきではないと考えている。国公立大学の財政が厳しいことは事実であり、やむを得ない面もあるだろう」

 教育水準を保つための値上げは許容できると話す島田さん。しかし、現状の授業料免除制度の見直しが先決だと話す。

 「毎度申請して、通るか分からない不安を抱えていた。今の東大の値上げはおそらく問題のある既存の授業料免除のシステムを引き継ぎ、“欠陥を残したままの値上げ”となるため、全く賛成できない」

 高収入世帯が多い一方で、授業料もままならない貧困層もいる中、最適な制度は何か? 島田さんは経済的に厳しい人々の実情を踏まえた上で議論を進めてほしいと話す。

 「次の世代の方々に向けて言いたいのは、『君たちのせいではない』ということだ。例えば、ゲーム機を買ってもらえないことも本人のせいではないが、それによって自尊心が下がることがある。いろんな人に頼らなければ夢を実現できない状況にあるため『人に迷惑をかけてしまう…』などと諦めてしまう人もいると思うが、なんとか前を向いて頑張ってほしい」

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 東京大学では、国立大学の標準額である53万5800円の授業料を来年度の入学生から64万2960円にする案などが検討されている。 

 自身も東京大学で授業料免除の申請をしたことがあるという政治学者の佐藤信氏は「授業料の値上げは、島田さんが話されたような当事者の声を踏まえた議論ができるかどうかが大きなポイントだ」とした上で自身の申請を振り返った。

 「申請時は家族の収入など提出する書類も多く、まるで『自分にお金がないことを明らかにするための申請』のようですごく辛かった。だが、当時の授業料免除の申請の部屋は学生で溢れ返っており、『こんなにたくさんの人が申請しているのなら、自分は変じゃない』と考えた記憶がある。データ(2021年度)で見ても、東大の学生の7%が全額の免除を受けており、半額の免除も含めるとさらに多い。他の大学でも同じようにサポートを受けている学生は多い。学費の免除は特異でも後ろめたいことでもない。悩んでいる学生の背中を押したい」

 さらに佐藤氏は近年、国の修学支援の制度が「進化」していることを紹介した。

 「まず、2020年から、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯に授業料減免や給付型奨学金といった制度が用意されている。次に2025年4月からは、扶養される子どもが3人以上の世帯に対して、所得制限なしで入学金・授業料が免除される制度が導入予定だ。また、都の豊富な財源を背景に授業料の実質無償化を進める東京都立大学のような大学もある。学生にはいろんな選択肢があり、『チャンスはあるんだ』と強く伝えたい。同時に、高校生や中学生がこのように変化する情報にアクセスすることは難しいので、中学や高校を通じた積極的な情報提供に努めて欲しい」

(『ABEMAヒルズ』より)

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