各所から“ツッコミ”が殺到し、自見地方創生担当大臣は政府案を見直すよう指示、撤回することも視野に再検討に入った。
【映像】「移住婚女性に60万円案」浜田敬子氏が懸念した“国のお墨付き”とは
政府が制度の拡充を検討していたのは、東京23区在住、または23区内で働く人が地方に移住する際に支給される「移住支援金」だ。
元々、移住先で起業や就業する人を対象に、男女かかわらず単身者には最大60万円が支給されているが、結婚を機に地方へ移住する女性も対象にすることが新たに検討されていたのだ。
検討されていた案では、移住先で就業予定がなくても支給され、金額は1人最大60万円を軸として増額の可能性もある。また、地方移住を考える女性が自治体の婚活イベントに参加するための交通費も支援。このように「移住婚」を促すことで、東京への一極集中を是正する狙いがあったのだ。
しかし、ジャーナリストで地方の女性問題などを取材してきた浜田敬子氏は、この政策が現状とかけ離れていると指摘している。
「若い女性が地方から流出するのは、働きたい職場・就きたい仕事がないから。理由は、男女の賃金格差が大きく、女性は補助的な仕事をさせられたり、非正規雇用になってしまうことが背景にあるからだ。まず必要なのは、職場改革や就きたいような仕事の創出であり、『都市部で働く若い女性に就業しなくても結婚だけで支援金を出す』のは原因と真逆だ」
根強く残る性別役割分業など地域に残る古い空気感を変えなければ、女性の流出は止められないと浜田氏は話す。さらにこんな懸念も…
「国のお墨付きでこんなことやっていいんだよとなった場合、これまでもやりたかった自治体もあったかもしれない。今回の条件は移住ではなく結婚であり、結婚の先に何があるかというと、子どもを産んでくれということ。これまでは、自治体の中で議論の際に『女性にそういう役割を求めるのはおかしい』という声は必ず出たはず。国がもしこれをやってしまったら、自治体だってやっていいという認識になる。実際、手をあげようかという声も上がったと聞いている」
また、女性が働きやすい環境を整えるために地道に改革を行っている企業の努力を阻害する恐れもあると浜田氏は指摘する。
「特に二代目、三代目の若い経営者の中小企業は多くの改革をしている。小さなことかもしれないが女性のお茶くみを廃止したり、若い男性経営者が育休を取ったり、女性が働きやすいようにトイレや更衣室といった労働環境を整えたり、さらには能力のある女性を管理職につけるよう努力している。そういった企業の努力さえもこの政策はムダにする」
政府内からも「女性活躍を進めるこれまでの議論と逆行する」と異論が出ていた今回の政策案。浜田氏は、少子化の根本的な要因を解決するべきだと強調する。
「例えば男女の賃金格差を解消した企業への助成や公共事業への入札をしやすくする、男女ともに移住を促進するための起業支援などに税金を使うのはいいと思う。今回の案は反発を呼んでしまった。男女の性別役割分業が固定化、家族にやさしくない職場環境、出産退職した女性の再就職が困難、この3つの要因を地域でも解決するしかない」
事実上撤回された“移住婚女性に60万円政策案”には内部からも指摘があがっていた。
総理補佐官 矢田稚子氏は「必要なのは、結婚移住策ではなく、無意識の偏見があるムラ社会を変える施策、スキルを発揮し働く場を整備する施策。結婚による移住策は見直すべき」と訴え、さらに政府の女性の職業生活における活躍推進プロジェクトチームでも有識者らは「大都市圏と比べ地方での賃金格差が大きいことが流出に影響している」と指摘しており、政府に実態把握に向けデータ把握を急ぐように提言していた。
この点について、VISITS Technologies株式会社 CEOの松本勝氏は「一口に賃金格差と言っても、その要因は様々だ。女性が昇進ができないことによって賃金が低いのか、同じ仕事をしているのに賃金が低いのか、それとも両方なのか。どこが問題なのかを明確にしていくことが重要だ。地方企業に課題があっても若い女性が自身で変えることは難しいため、『それならば格差がない都心に行こう』と考えるのは自然なこと。地方からの“女性流出”の問題はハラスメント問題と似ており、言っている方は悪気がなく、常識だと思っている。そんな人たちに『世の中全体、今の流れから見たらおかしい』と気づいてもらうことが重要だ」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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