【写真・画像】オーガニックでがん予防? 栃木・小山市の講座に疑問の声 専門家「こだわりの食生活の方がリスクを上げる可能性」 科学的に考える“食の安全” 1枚目
【映像】小山市のオーガニック講座(実際のチラシ)
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「安全」「健康」というイメージがあり、拡大しているオーガニック食品市場。そんな中、栃木・小山市の「オーガニックでがんを予防できる」などとする一連の講座に疑問の声が上がっている。

【映像】小山市のオーガニック講座(実際のチラシ)

 果たして、そんな効果があるのか? 私たちが知っておくべき「食品のリスク」の考え方とは何か? 『ABEMAヒルズ』では食品衛生の専門家や国の機関に話を聞いた。

オーガニックとは何か?

オーガニックとは?
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 そもそもオーガニックとは何か?

 有機農業推進法によると、オーガニックとは「化学的に合成された肥料や農薬をできる限り使用しないことなどを条件として、環境への負荷をできる限り低減した農業」とされている。つまり、本来の目的は「環境への配慮」であり、生産された食品の安全性とは関係がない。

 農林水産省も「慣行の農産物等と比較して、優位に有機農産物等が安全であるという科学的知見はそろっていない。そういう主張もしていない」としている。

 だが、冒頭の栃木・小山市によるオーガニック講座のチラシには「農薬は“薬”ではなく、何らかの生物を殺す殺生物剤(バイオサイド)で、基本的に毒性がある」といった文言が並ぶ。実際に行われた講座では、農薬や除草剤等の化学物質が脳や体に影響を与え、「がんの急増」「発達障害の増加」に関連していると訴えられていた。そして、講座の最後には「有害化学物質から子どもを守るため」として、オーガニックの農産物を選び、給食で提供することが提案された。

 これに対し、SNS上では「これを『行政』が推してるってどうなってるんです…?」「既存の農家を否定するのか」などの指摘が相次いだ。

 こうした主張に対して、国の見解はどのようなものか。「がんの急増」について、国立がん研究センターは「患者は増えているが、人口の高齢化が主な要因」としており、高齢化の影響を除いた年齢調整罹患率はほぼ横ばいと説明。また、国の食品安全委員会は発達障害ついて「流通している農薬との関連を示すエビデンスはない」としているが、こうした見解は小山市から参加者に説明されなかった。

「個人的な考えを市が主催する公共の場で伝えることに憤り」

宇都宮大学の小笠原勝名誉教授
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 小山市の姿勢に対して、除草などを研究してきた宇都宮大学の小笠原勝名誉教授は講座に参加したうえで「“残念”を通り越して“憤り”を感じる。個人として農薬を嫌うのは自由だが、個人的な考えを市が主催する公共の場で伝えることに憤りを感じる。“公平”は難しいが、さまざまな角度から農薬の良さ悪さに関する情報を提供するのが行政だ。本当に今日は残念だ」と懸念を表明した。

誤解を招きかねない表現は公序良俗に反している

島朋幸議員
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 小山市はこれまでに14回オーガニック講座を開催。その内容について市議の島朋幸議員は「市は講師の主張であれば公序良俗に反しない限りはそのまま掲載すると言っていたが、誤解を招きかねない表現は公序良俗に反している。純粋に有機農業をやっている方にとっては慣行栽培の農家との溝が深まることは本来望んでいることではない。双方に不利益があることを再認識してほしい」と指摘した。これに小山市は「講師の見解であり市の見解ではない」としている。

農薬だけがリスクなのか? 食のリスクを考える基本

国立医薬品食品衛生研究所で安全情報部長を務めた畝山智香子氏
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 食の安全の専門家はどのように考えているのか。

 国立医薬品食品衛生研究所で安全情報部長を務めた畝山智香子氏は、前提として、どんな食品も“リスクゼロ”ではないことを指摘。微生物や自然毒、異物など様々なハザードがあるという。

農薬や添加物はリスクが「管理されている状態」

食品の危害要因
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 畝山氏は「食品にはもともとたくさんのハザードがあり、不適切に取り扱うことで食中毒になったりする。農薬や添加物は『化学的要因』に分類され、リスクが『管理されている状態』であるため、微生物など『管理されていないもの』に比べると圧倒的にリスクが低い。一方、微生物による食中毒は毎年のように起こり死亡者も出ている」と説明した。

 管理が難しいものの中には、食品が天然に含む物質もある。

カドミウムを吸収しない「あきたこまちR」

コメのカドミウム・ヒ素対策
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 コメは生育の過程で土壌中のカドミウムやヒ素を吸収してしまうが、これを完全になくすことは難しいため、国も対策に力を入れてきた。

 去年注目された新品種「あきたこまちR」(2025年から切り替え)も「カドミウムを吸収しない」という特徴を持つように改良されたものだ。

 食べて害があるというレベルではないが、可能な範囲で減らすべき物質とされており、リスクの観点でいえば「農薬や添加物など管理されたもののほうが小さい」という。

「こだわりの食生活はリスクを上げる可能性もある」

化学物質の量と体への影響
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 では、農薬など人工的に使われる物質のリスクはどのように管理されているのか。

 まず、動物実験などで毒性が出ない量を算出。そこからさらに100分の1の量を「許容1日摂取量(ADI)」と定め、実際の摂取量はそれを下回るように基準値を設定している。

 畝山氏は「かなり安全に余裕をもたせている。天然物で同様のレベルにするのは難しい」という。「天然物では実際に動物に有害影響が出るものを私たちは食品として食べており、安全性の目安が全く違う。それだけ、人工的に使われるものについては厳しくしている」と説明した。

 このように、農薬のほかにも食品にはそもそも様々なリスクがあり、未知の部分も多いという。

 畝山氏は、本当の意味で食の安全性を考えるのであればリスク分散の観点から様々なものを食べることを推奨し、「こだわりの食生活はリスクを上げる可能性もある」としている。

「いま流通している日本の食品については普通に食べている分には安全。同じものばかりを食べるのではなく、種類・調理方法なども偏ることなく、いろいろなものを美味しく楽しく食べるのが1番。ただし、『食べるだけで痩せる』など根拠のないものには注意が必要だ」

 では、「オーガニックでがん予防」など、根拠不明な情報については、どう対処していったらよいのか。

 畝山氏は、自治体でそうした情報が流されている現状について懸念を示しつつ、「食品安全委員会などの公的機関は信頼してほしい」と述べた。

 ノンフィクションライターの石戸諭氏は、「誤った情報に対しては、食品安全委員会が正しいエビデンスを示して具体的な名前を挙げて警告してもいい。SNSやYouTubeの誤情報は、“一部の極端な人たち”の間だけで広がっているものではなくなっている。常にネットの動向をチェックし、食品安全委員会などが『これが公式見解です』などと大々的にSNSや動画メディアでも発信する方向に舵を切ったほうがいい。そんな時代に突入している」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
 

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