「4B運動」とは?
【映像】トランプ政権“反発”の女性たちによるデモ
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 アメリカ各地で女性たちが、トランプ氏の大統領就任に反発する声を上げている。拍車をかけたのが、トランプ氏の「私はこの国の女性を守りたい。女性たちがそれを望むかどうかにかかわらず」との発言だった。これにより人工妊娠中絶に否定的な政策など、女性の権利を軽んじる姿勢に怒る女性が増えた。

【映像】トランプ政権“反発”の女性たちによるデモ

 なかでもSNSを中心に広がっているのが、韓国発祥の「4B運動」だ。「結婚しない(bihon)」「出産しない(bichulsan)」「恋愛しない(biyeonae)」「セックスしない(bisekseu)」を指すもので、トランプ氏へ投票した人たちに対して怒りを示し、これら4つを拒否する運動だ。しかしSNSなどでは「ハリスが負けた腹いせだ」「男性憎悪は分断を生む」など反発の声も見られる。4B運動は広がるのか、その先にあるものは何か、『ABEMA Prime』で考えた。

■アメリカでの4B運動とは

シェリーめぐみ氏
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 若者の価値観を中心に、NYなどで取材するジャーナリストのシェリーめぐみ氏は、アメリカの女性たちが“絶望”していると語る。トランプ政権の4年間への危機感として、「女性の権利が50年前に後退」「性犯罪・ハラスメントが増加」「『女性は男性が守るもの』という価値観の上昇」があるという。取材でも「半分以上がトランプを望んだことに失望」「男というもの自体が信じられない」という声が寄せられたという。

 シェリー氏は「かなり極端な運動」であるとする一方で、「大統領選でのトランプ勝利に、女性たちが落胆した結果だ」と説明する。「女性たちは#MeTooや中絶禁止などの運動をしてきたが、何も実現しなかった。4B運動を知り、『こういうやり方もあるのか』と関心が高まっている」。

 大統領選に落胆した女性たちは今、4B運動への連帯を呼びかけている。TikTok動画「共和党支持の恋人と別れた。4B運動に参加する」は約180万いいねを集めた。また、トランプ氏の性的虐待の過去を軽んじる恋人と別れ、4B運動参加の決意を語った動画を投稿した女性もいる。しかし女性には、殺害予告や容姿に対するメッセージが殺到したと、CNNなどが報じている。

 トランプ氏をめぐっては、その“マッチョ的な思想”が注目されている。10月30日には「私はこの国の女性を守りたい。女性たちがそれを望むかどうかにかかわらず」と発言した。シトランプ支持者には#MeToo運動(2017年~)などに反感を持ち、“男性性の復権”を目指す団体「マノスフィア(男性至上主義的なコミュニティ)」もいるという。

 次期政権については、閣僚候補の性犯罪疑惑も出ている。「性犯罪に関連している人物が、国のトップに立つことで、性犯罪の増加が懸念される。また『アメリカは男が強い国であるべき』とする価値観が当選につながった。アメリカの女性の多くが『男なんて信じられない』という気持ちになり、4B運動の高まりにつながっている」。

■妊娠中絶に関する動き

米国内 人工妊娠中絶に関する動き
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 アメリカ国内では、人工妊娠中絶について、大統領選に合わせて10州で住民投票が行われた。その結果は、保守州を含む7州で中絶権を認め、3州で認めないとなり、トランプ氏は「連邦法での一律規制に反対」と曖昧な姿勢を示している。

 TikTokerでYouTuberのYunaは、「トランプ氏は中絶禁止に反対で、性被害でやむを得ない妊娠は、特例として中絶すべきとの立場だ。中絶禁止法はトランプ氏でなく共和党の意思であり、トランプ氏自身が止められない状態になっている」と語る。

 これにシェリー氏は、「トランプ氏は2016年の大統領選で『中絶禁止』を公約にした」と返し、「キリスト教福音派など、保守層の票が欲しかった」と背景を説明する。「4年間の前政権で、保守の判事が増え、合法だった中絶の権利が狭められた。アメリカ女性の3人に1人は、事実上中絶ができない州に住んでいる」。

 中絶禁止といった政策は「保守のキリスト教信者の票を得やすいトピック」であり、「国を分断させて、票を取るために使われてきた。中絶は50年間合法だった。歴史の流れから見た方がいい」と考察する。

 アメリカ国民にとって、「50年間あった権利がなくなるのは、初めての経験だ」という。「女性参政権から人種差別の解消まで得てきた権利が、50年前に戻ってしまった。リベラル派が獲得した権利に対して、保守派の反応が強く、それが“女性の権利”の危機感につながっている」。

■「『男女の分断』にしているだけで、実際は“四つ巴”でモメている」

EXITの兼近大樹
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 シェリー氏は、「トランプ氏は次々と新しい人事案を出しているが、最終的に実現する可能性は高い。駆け引きの中で懸念はたまり、逆にそれをあおっている節もある。トランプ氏の勝利で、男性支持者が調子に乗って、『お前の体は俺のもの』とSNSで拡散している」として、対抗手段としての4B運動に理解を示す。

 一方で、ジェンダー問題などに詳しい研究者の山内萌氏は、トランプ氏の「女性を守る」発言について、「フェミニズムでは“家父長制的なイデオロギー”と言われる。男性が妻や娘を“上から目線”で守ろうとする価値観だ」と分析した上で「(4B運動において)『恋愛している』『結婚したい』といった女性が、どこまで想定されているかは疑問だ」とも語る。「女性の社会的地位を上げても、年収や生涯賃金が急増するかと言えば別問題だ。男女で立場が違う現状で、真の男女平等は難しい。いかに両者が分断せず、互いの状況を理解して話すことが理想であるが、難しい」

 EXIT兼近大樹は「わかりやすいから『男女の分断』にしているだけで、実際は男女ともに保守とリベラルがいて、“四つ巴”でモメている。また、男女どちらにも“強者”と“弱者”が入り組んでいる。現状では、あまり『男女の分断』と言わない方がいい」とまとめた。

(『ABEMA Prime』より)

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