■観光船以外にもしわ寄せが

【写真・画像】「責任を取ってほしい」知床・観光船沈没事故から2年半、家族は「遺族」へ… 見直された検査による“経営圧迫”で事業者は悲鳴 8枚目
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おきしま通船に乗る子どもたち

 滋賀県近江八幡市の「おきしま通船」の船では、子どもたちが本土から島の小学校に通い、生活必需品も運んでいる。琵琶湖に浮かぶ沖島は、対岸との交通手段は船しかない。島の基幹産業は漁業で、人口は 233 人。琵琶湖で唯一、人が住んでいる島だ。

 全校児童17人の沖島小学校では、14人が島の外から船で通っている。沖島小学校・川端哲巳校長は「教師も全て島外から通っていますので、通船なしでは沖島小学校は成り立たない」と述べた。

 船は、片道10分ほどの距離を、毎日12往復しており、島民の乗船料は片道200円だ。おきしま通船について島民たちは「足です」「無くなったら大変。病院に行くにしても足がないと」と語った。

 おきしま通船も検査の負担が増したことで、経営が苦しくなっているという。しかし冨田甚一船長は「年金で暮らしている方がほとんど。そこへ持ってきて値上げはちょっと。対岸に行くのは、この船しかないですからね」と複雑な胸中を語った。

 船を運航するのは島民3人で、平均年齢は60歳を超えている。後継となる若手を育てたいところだが、検査の費用負担が重くのしかかる。海の上でも濡れることなく乗り込むことができる「救命いかだ」は、国が設置の義務化に向けて動いている。救命いかだの費用は「300 万円ぐらい」で、購入費の一部は補助されるが、設置に必要な費用はすべて事業者の負担だ。

「救命のフロート(浮器)は、この上に積んでいる。もともとはそれで良かった。知床の事故が起きて、全国的に全部つけなきゃだめとなった。もうかなり痛手ですね…。この辺は特に湾になっていて囲まれている。まず大きな波はよっぽどの時しかない。水深も浅いし、水温も知床のように低くない。国の方々に見に来ていただいて、これが本当に必要なのかを調べていただきたい」(冨田船長)

 新規採用に回す資金の余裕もなく、おきしま通船は2025年から冬の減便を検討しているという。

 そして、今後も運航するであろう知床の小型観光船。全国から訪れる乗客は、事故があった海の上で絶景に息を飲む。あの事故から2年半、「安全」の姿はいまも揺れ動いている。

(北海道テレビ放送制作 テレメンタリー『沈没の波紋』より)

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