■なぜ再過熱した?野党の“自民揺さぶり”も?

 これまで30年以上も議論されてきたが、なぜこのタイミングで話題になっているのか。

「議論が再燃してきたのが、昨年の経団連の提言だ。『海外でビジネスする女性たちにとって、夫婦同姓はやりにくい。通称使用だと問題があるから、夫婦別姓を選択的でいいから認めてくれ』と提言を出した。もともと経団連は保守的な考えだが、その経団連も実際のビジネスを考えたら、別姓を認めてほしいと言いだした。自民党にとって大きな支援団体だから無視できない。ただ一方で、自民党には岩盤保守層と呼ばれる、主に安倍元総理を支持していた強い支持層や、神道政治連盟などの宗教的団体など、保守的な団体がまだ反対していて、板挟みになっている状況だ」(青山氏)

 自民党内は慎重派と推進派が割れている。青山氏によると、「真っ二つという言い方をしているが、取材した感覚では推進派の方が多い。慎重派はそんなに多くない一方で、慎重派の方が、声が大きく、『絶対ダメだ』と言う人が多い」という。また、石破総理については「参議院選挙が近く、選挙で岩盤支持層がこの問題で離反してしまうと、たとえ1割2割でも損になるためつなぎとめたい」という考えがあると説明した。

 今後はどうなるのか。「いま予算案が審議されていて、これを先に通さないといけない。予算案が3月末で成立すると、6月22日(予定)の通常国会会期末までの間に、選択的夫婦別姓の法案が焦点になってくる。少数与党で、議員数の多い野党が、この法案を審議する法務委員長を取った。法案が採決に持ち込まれる可能性がある。野党が法案を出し採決されると、割れている自民党は、党内で『いいじゃないか』と思う人が賛成する。公明党も賛成すると可決する。その時に、保守派の自民党議員はどうするのか問われて、分裂する可能性も出てくる」と予想する。

 各政党のスタンスは、公明党や立憲民主党、国民民主党などが「推進」し、参政党と日本保守党は「反対」。自民党は党内で対立している。日本維新の会は「微妙」な立ち位置だ。「維新は中間案。戸籍は残して、戸籍には法律上の名前として夫婦同姓の名前が残るが、通称も法律で認めて、パスポートも免許証も『通称の法律名』に統一する。別姓だが、戸籍の名前も一応残る。正式な法律名が2つある案を出している」。

 国会の勢力を見ると、「衆議院は自民・公明が過半数を割り込んでいる。公明が賛成だとすれば、自民はこのままだと、法案が通ってしまう。立憲としては法案を出して、自民を割れれば揺さぶることができる。参議院は自民・公明で過半数を取れているが、公明が賛成に回れば成立するため、議論が熱くなっている」との見解を示す。

「前までは自民が反対すれば、法案が通らなかった。だが今は、自民が党議拘束をかけて、反対に回っても、野党が結束すれば通ってしまい、『自民党はどうしますか』といった状況だ。野党は法務委員長も取っていてチャンスで、自民党内もグラグラしていて揺さぶれる」(青山氏)

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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