■推進派・反対派も互いを尊重する上関町

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寒ボラまつり

 上関町の人々の生活を支えているのは「海」だ。原発反対派である高島さんと推進派である漁師の小浜鉄也さんが共にグループの代表をつとめる「上関ネイチャープロジェクト」は、上関の寒ボラをPRするイベント「寒ボラまつり」の開催など、上関の海の豊かさを広めるためのさまざまな取り組みを行なっている。

「宝の海を遺したい。そこは共通するねと。じゃあ推進・反対は置いといて、まずは豊かな海・自然を残すという目的が一緒なら、一緒にできるよねと作ったのがネイチャープロジェクト。原発の推進・反対は問わない」(高島さん)

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上関原発建設計画

 中国電力が進める上関原発建設計画は、全国唯一の「新設」の原発計画だ。過疎高齢化に歯止めをかけようと町が誘致した。1982年に計画が浮上してから、町では推進派と反対派が激しく対立。原発への意見が違うと近所付き合いを避けるほどの分断が生じてきた。

 2009年に上関に移住してきた高島さんは、自然保護の立場から原発反対を訴えてきた。「奇跡の海を抹殺、破壊しようとする中国電力の暴挙に断固として抗議の意思を表明します」。

 原発の建設で漁に影響を受ける漁師も推進と反対に割れた。小浜さんは「推進」の立場で、漁業補償金を受け取った。「漁業補償金がもらえる。あぶく銭だが、ないよりはいい。ただ、依存はしてない。『(原発が)できたから漁師やめなさい』というんだったら猛反対するけど」。

 しかし、2011年の福島第一原発の事故以降、工事が中断。国はその後も「原発の新増設」について明確な方針を示しておらず上関原発計画の行方は不透明なままだ。原発計画が止まってからは以前のような激しい対立は影を潜めた。

国内外から研究者が訪れる上関の海
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