どのように贋作を描いていたのか。ベルトラッキ氏は「絵の前に10分間立てば実在していない新しい絵を描くことができる。絵を見ていると画家の筆跡・手の動きが見えて、どういう風に手を動かしたのか想像できる」と語る。

 描いてからの手法については、「まず絵を劣化させる。その後に小さな穴を入れたり、色のはがれた部分を作ったりする。その後、修復すると、絵は元々古いものだったとなる」と説明。それ以外にも、その画家の作品を見るために遠方の美術館に行ったり、ゆかりの地を訪れて雰囲気をインプットしたり、研究や努力も惜しまないという。

 なぜ、他の画家の贋作を世に出したのか。ベルトラッキ氏は「ずっと同じような絵を描き続けたくなかった。自分の作品だと同じ作風が求められ、一生同じことを繰り返すのが嫌だった」と答える。

 また、贋作を描くことで「何十年もの間、誰にもバレないことがたまらなかった。どこでも当時の本物の作品と認められ、オークションでも常に高値がついて、素晴らしい絵だったと自信がついた。クラシックモダンの重要作品が贋作だとバレてしまったが、この絵の価値は変わることはない。芸術作品とは何か、どのようなことなのか。もっと芸術について考えることが重要だと思う」との見方を示した。

 本物かどうかを見破るのは難しいことだが、玉川氏は、最新テクノロジーを使った美術犯罪に対する取り組みについて「例えばスイスのチューリッヒにあるベンチャー企業では、AIによる絵画の真贋評価システムの開発。画家の方が描いた本物の画像データをAIに大量に読み込ませて学習させる。そうすると、その方の独自の筆使い、色合い、構図を解析する。贋作、模倣作品も一緒に学習させるとさらに効果的だという。ベルトラッキ氏の贋作もAIは見抜いたそうだ」と紹介した。

■記者が感じた“芸術の価値”
乙武氏「地獄の苦しみだった」 タブー視されてきた"障害者の性"
この記事の写真をみる(3枚)