ムチ打ちは18世紀、イギリスの植民地だったマレーシアで定められ、マレーシアから独立したシンガポールでも引き継がれた。シンガポールの人権団体などはムチ打ちを中世的な拷問とし、国際人権団体は拷問等禁止条約に反すると批判しているが、シンガポールはその条約に批准していない。

 なぜ今も採用され続けているのか。森氏によると、「建国の父であるリー・クアンユー初代首相が決めて、それが踏襲されている」という。「学校や家庭でもムチ打ちしていい。すごく根付いている」。

 森氏が現地の状況を説明する。「詐欺被害がものすごく深刻化していて、5年前の1万件程度から、5万件を超えた。件数も総額も日本の数倍だ。シンガポールは国に対する信頼が厚く、『守ってくれる』という意識が強い。詐欺に対して刑罰が緩いんじゃないかという議論があり、国民は『詐欺罪にもムチ打ちを検討する』ことに対してどちらかというと前向きだ。日本では議論が巻き起こると思うが、シンガポールでは基本的に与党も野党も賛成。国内では一部弁護士が反対しているが、『どう国際世論にシンガポールは問題ないと示すか』の議論の方が多い。再犯率そのものがシンガポールは低く、経済的要因もあるが、ムチ打ちも一要因だと捉えられている」。

 執行にあたっては「かなりガイドラインが細かく決められている」そうだ。「『原始的・野蛮ではないか』との批判に対して、ガイドラインを明確に決めることによって『これは厳格な刑執行で、原始的な罰ではない』と裏付ける。『ルールに従ったら失神した』となれば、執行官の心理的負担も軽くなる」。

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