■「“前払い退職金制度”を導入しないといけない」

八代尚宏氏
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 現行の制度では、同じ会社に30年勤務した場合、最初の20年間は年40万円(計800万円)、その後の10年間は年70万円(計700万円)が控除され、控除額は1500万円となり、課税対象は250万円になる。しかし、長期勤務の優遇がなくなり、30年間すべてが年40万円の控除になると、控除額は1200万円で、課税対象は400万円になる。

 経済学者の八代尚宏氏は「これを“増税”と呼ぶのは言い過ぎだ」と考える。「退職金控除は、額の大きさと同時に、控除後さらに2分の1のみが分離課税される、非常に優遇されている制度だ。本来であれば見直しと同時に、『前払い退職金制度』を導入しないといけないが、現状では増税になるため、そうならないようにする。これまで優遇されていた退職金の減税幅を分散する観点が重要だ」。

 そもそも「退職金という制度自体が、極めて問題がある」といい、「企業が残っているかわからない40年後にお金をもらう、リスクの大きい制度だ。労働者は本来、ひと月ごとに給料をもらうが、退職金は給料ではない。過去のような成長を描ける企業はほとんどなく、企業が恩恵を得るばかりで、それに政府が肩入れしているのは問題だ」と語る。

 退職金課税の見直しで、雇用は流動化するのか。「当然そうなる。大企業で働く50代が先が見えているからと、早期退職で中小企業に転職しようとしても、妻から『退職金が半分になる』と反対される。なぜ本人が働きたいところで働けないのか」。

 その上で、政府の施策を「残酷だ。失業を減らすため、労働者を1つの企業に置き続けた。労働者が企業の人質となり、退職金を全額もらうために、単身赴任で家族がバラバラになるなど、我慢が必要になる」と批判し、「もっと分散して、若いときから退職金の一部をもらうことが大事だ」と提言した。

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