「働き方」の価値観が変わり続けている昨今。必要最低限の業務だけをこなす「静かな退職」といった新しい働き方も、若手の間で広がりを見せている。一方で、新しくはないものの、増えている「働き方」もある。それは、複数の部署や部門などの「兼務」である。
組織論が専門の同志社大学太田肇名誉教授は「人手不足と業務の効率化、特に、人材の有効活用ということも、真剣に考えるようになってきているので、昔からあったが今の方が増えている」と話す。
仕事量も相対的に多くなりそうだが、働き手はどう感じているのだろうか。
金融関係の企業で、投資部門と分析部門の兼務を経験した40代男性は「仕事の幅が広がるのと、万が一失敗したとして戻るところがあるので、仕事をやりやすいのではないかと思った。兼務はある程度自分の仕事が回っている人にしかさせないと思うので、そういう意味だとある程度評価してもらった上での話なのだなと思って嬉しかった」と語る。
一方で、「兼務疲れ」につながってしまった人もいる。
IT関連企業を退職した30代女性は「上司から言われて、特に希望していたわけではなかった。今の自分の仕事で結構いっぱいいっぱいだったので、兼務っていうと仕事量が増えるというイメージで、あまり良い気分ではなかった。(実際に兼務してみて)結構回らなくなってしまったので相談したし、上司もそれに気づいて結果的には兼務解除になった。仕事の幅が広がるのはいいが、どのくらい注力するかというバランスが難しい。私はまだ若手だったので、上司の指示が細かくあった方が良かったと思う」と振り返る。
管理職「兼務」経験者のAさんが語る“リアル”
