「兼務疲れ」を防ぐポイントとは?
太田名誉教授は「管理職、特に今、中間管理職を減らそうとしている会社が多い。効率化・スリム化のために管理職の数を少なくして兼務させる。例えば、部長が課長の仕事を兼務する、あるいは課長と係長などのケースがよくある」と指摘する。
この背景にあるのが、部下の管理、トラブル対応、仕事の判断など、「罰ゲーム」とも言われるほどの管理職への業務の集中である。
「日本の場合、権限移譲がされていないことで、細かい決定も管理職がしないといけない。何でも管理職に仕事が回ってくるという傾向があるから、その面で管理職が欧米のように“プロ”と位置付けられていないことにも問題があると思う」(同志社大学 太田肇名誉教授、以下同)
人手不足や、多様な働き方の広がりによって加速する仕事の兼務化。1つの仕事に専念するだけにはいかなくなった時代に、不満を生まないポジティブな兼務はどうすれば実現するのだろうか。
太田名誉教授は「基本的に本人の意思または上からの命令だが、この違いは大きい。この人は何でもできるから、たまたまそこに欠員が出たから、あの人にさせておけと本人の意思を尊重せずに兼務させると、本人のやる気も低下するしストレスも強くなる」と話す。
また、それぞれの仕事によって相乗効果が生まれる状況を作り出すことが前向きな兼務につながるという。
「仕事に関連性があると、自分の能力を広げることになるのでプラスになる。例えば、開発の人がマーケティングの仕事も兼務する。そうなるとマーケティングの仕事を兼務することによって、開発にフィードバックして『こういうものを作ればいいんだな』ということがわかっていく。これはプラスになる」
効率化を図るためのその場しのぎの兼務は、能力のある人に仕事が集中し、不公平感を生んでしまう要因に。“兼務疲れ”を防ぐために抑えておくべきポイントは何か。
「一番大事なのは過重労働にならないように、特に労働時間管理をしっかりする。本人が、負担が大きいと訴えた場合にはそれをなくす。あるいはサポート体制をつくる。そして、『これはやらなくてもいいのではないか』と、思い切ってそぎ落としていく。兼務して負担が増えるだけで、見返りがないということであれば不満が出る。それなりに評価を高くするとか、あるいは報酬を増やすとか。このあたりをもっと考えることによって、不満も減ってくると思う」
(『ABEMAヒルズ』より)
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