通い始めて2年、国近さんに転機が訪れる。

「(仕事の)ご希望がありますか?どういうことならできそうとか希望はありますか?」(山根教授)
「そうですね、あんまり人と関わらなければいいなあ、なんてねぇ。ああ困ったなあ」(国近さん)
「人とあまりかかわらない仕事がいいということですよね」(山根教授)
「人の中にあまり入れないからやっぱり……」(国近さん)

 そして、57歳のときにパートタイムでハウスクリーニングの仕事を始めた。

「仕事初日、エアコンと玄関の掃除を任された。失敗せず終えることができた」( 同 2019年6月12日)

「日中は掃除片づけで忙しくしているので感じないけど、夜テレビを消して静かになると、不安な気持ちになってくる。体力落ちたし、仕事はうまくいってないし、本当は仕事したくないし、心の中は引きこもりのときのまま。順調に進む人生、送れないのかな」( 同 2020年2月23日)

 国近さんは働き始めてからも、ふらっとコミュニティに通っている。「僕は一人暮らしなもんでね、もう親戚も疎遠だし、知り合いもあんまりいないし、ですからここに来てつながってないとやっぱり何かあったときには困るなあと思ってここに来ている感じですかね」。

 先輩のアドバイスのもとトイレ掃除の仕事に励んでいた国近さん。この日のことも日記に記されていた。 

「疲れた、休憩も昼食時間もなく、あれやれこれやれで急かされて、こき使われてもう体が限界」( 同 2023年3月11日)

市営住宅で立ち退きを迫られ…
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