今回、輪廻転生の継続をあえて明言した裏には、別の要因もあるようだ。平野教授は「1989年に亡くなったパンチェン・ラマ10世という活仏がいる。彼はダライ・ラマ14世とは違い、1959年のチベット動乱後も中国側に残り続けた」。
パンチェン・ラマとは、ダライ・ラマに次ぐ、チベット仏教のナンバー2に位置する存在だ。10世はダライ・ラマ14世がインドに亡命した後も、チベットと中国のパイプ役として、チベット自治区に残ったそうだ。しかし中国共産党による仏教破壊を目の当たりにして、公然と中国政府を批判し、それが元で投獄されたという。
そこで中国政府は、次のパンチェン・ラマ11世は、中国の思い通りになる人物がいいと考えて、くじ引きで擁立すると決めた。「かつてチベットと北京の間につながりがあった頃に考えられた、くじ引きを継承した。『自分たち中国共産党政府が、仏教指導者を選ぶ』というのが、極めてタチの悪い宗教の政治利用ということは、誰の目にも明らかだと思う」(平野教授)。
チベット仏教の伝統を無視した方針に、ダライ・ラマ14世は反発し、1995年に正式な方法にのっとって、パンチェン・ラマ11世を選出した。しかし「中国はすぐにパンチェン・ラマ11世を幽閉し、以来30年以上、どこにいるのか全くわからない状態が続いている」のが現状だ。
中国“ダライ・ラマ15世”擁立も?
