選挙では自民、公明、観光、建設業界から支援を受けた小野達也前市長に対し、組織を持たない田久保氏は主にSNSで選挙戦を展開。田久保氏が訴えたのは「ハコモノ行政」の否定だった。

 伊東市民からは「市長が間違えたとかいろいろ言ってるが、もう正直言って私なんかどうでもいいと思っている。学歴とか。ハコモノ行政で建設業界との繋がりがけっこう強いんじゃないかなと思う。伊東は小さい町だからそういうつながりが強いと思う。そのこと(学歴詐称疑惑)だけであれだけ非難されて、辞職にまで追い込まれたというのも、残念な気もする」といった声が聞かれた。

 伊東市では事業予算42億円をかけた新しい図書館の建設が進められており、この新図書館の建設を巡る是非が問われたのが5月におこなわれた市長選の争点でもあった。前市長は以前の市長選で新しい図書館建設を公約として掲げて当選しており、業者の入札なども行い、10月に着工することになっていた。

 田久保氏は図書館の必要性は認めつつ「維持費が毎年2億7000万円もかかるのは高すぎる」と、分館なども視野に計画の見直しを訴えた。

 伊東市民は「彼女が別に『東洋大学云々』とか、そんなことで。結局これだけ不景気のときに…。ここに図書館とか文化サロンとか、ちょっとお茶を飲むところも作るという話なんだけど、いまはそんなことじゃなくて、伊東がゴーストタウン化していて。熱海の齊藤(栄)市長みたいにガンガンやっている人もいれば、(前市長は)6年間何もしなかったから、とにかくまだやることがあるんじゃないか」と、図書館の建設より街の再建が先ではないかと訴えた。

 伊東市は市民が認めるほどシャッター通りが加速。ほかの自治体同様に高齢化が進み、税収入が減るなか、新たな公共施設の維持は実質、市民の負担を増やすことになる。田久保氏の訴えは市民の共感を集め、図書館建設を推進する前市長を押さえ勝利。田久保氏が14,684票、小野氏が12,902票と、その差1,782票と僅差だった。

田久保氏は当選当初から孤立無援状態
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