そんな中で行われた第1回普通選挙。候補者は選挙ポスターで何を訴えていたのか。まずは、政友会・鳩山一郎候補。後の「55年体制」成立後、初の総理となり、鳩山由紀夫元総理の祖父にあたる人物だ。そんな鳩山候補のポスターは、「力ある政治家。鳩山一郎君」と書かれ、今につながるアイデアがあったという。

「面白いのは、まず漢字で『鳩山一郎』とあり、それ以外に平仮名で『はとやま一郎』とあり、それから片仮名も『ハトヤマ一郎』と書いてある。これは一気に普通選挙で有権者が広がったので、字をあんまり書けない人とか読めない人とかもいる。あえてこういうように名前の書き方を3種類ぐらい書いて書きやすくするというのは、鳩山一郎だけじゃなくて、割と多くの候補者が試みていること。今でもそうでしょう。難しい名前の候補者は、漢字にしないで平仮名にあえてする人がいる。あれと同じ」(玉井教授)

 続いて、民政党・三木武吉候補。先ほどの鳩山一郎のライバルであり、後に鳩山内閣誕生に奔走。当時「国会のヤジ将軍」の異名をとった政治家だ。「投票日が2月20日なので、豆まきをデザインに使っている」(玉井教授)

 節分にちなみ、「不景気」や「生活難」を退治するのが、三木武吉であることを表現したポスターだったという。他にも普通選挙を推進した政党であることを荷車を引くことで、表現したものもある。ちなみに三木武吉は、今では考えられないような逸話を残しているそうだ。

「戦後選挙運動の中で、対抗する候補者から、実は三木武吉にはお妾さんが4名いる。けしからんと言って攻撃された。そうしたら、三木武吉が『間違いだ』『4人じゃなくて5人だ』と。さらに、5人のお妾さんをいかに喧嘩させずに仲良くさせるかというのも、政治家の力なんだって言ってみんな爆笑して終わった。今ではちょっと考えにくいが、当時はそういう返しでみんなが笑って許されるという時代」(玉井教授)

岡本太郎の父によるデザインのポスターも
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